7. 異世界ほのぼの日記3 226~230
-226 まさかの龍(ひと)-
空いた口が塞がらな転生者達を横目に「一柱の神」と称される古龍(いや女性)は懐からスマホを取り出して何処かへと連絡を始めた、やはりクォーツにとって父親が作り替えた世界は色々と便利な物になったのだと推測される。
クォーツ「もしもし?今大丈夫か?何だよ、いつもの「あの時間からは随分離れている」って?緊急事態なんだからお前だって協力してくれても良いじゃないかよ、偶にはそっちの方から顔を見せてやってくれても良だろうが。」
ゆっくりとため息をつきながら電話を切ってスマホを懐に入れなおす女神を見逃さなかった好美が一言、ただそう言った事は聞かない事が良いと思うんだが?
好美「あの・・・、何処にお電話をしていたんですか?」
確かに気にならないと言えば嘘になるが、正直言って女神にその様な事を聞いて良いのかは分からない。
クォーツ「ちょっと待ちなよ、もうすぐ来ると思うから分かると思うんだけど・・・。」
古龍は頬を掻きながら好美の質問へとそれなりに答える様にしていたらしい、しかし何となく裏がありそうな言い方に思えるのは俺だけなのか?
クォーツ「あんたは気にしすぎなんだよ、だから話が全然進まないんだろ?」
でもよ、二重に気になっちまうだろうがよ。さっきあんたが言っていた「近くに住んでいた妹」と「偶にはそっちの方から顔を見せろ」っていう言葉の意味がさ。
クォーツ「何だ・・・、全部聞こえていたのかよ。だったら仕方ねぇな、もうすぐ本人が来ると思うからちょっと待ってろ。」
暫くすると修理されたばかりである城門の向こうから全体に炎を纏った龍が現れた、その姿はどう考えても2人にとって知り合いにしか思えなかったので好美とクォーツは焦りの表情を見せなかった。好美に至っては見慣れた姿だからだろうと推測できたがクォーツに至っては何となく理解に苦しんだ気がした。
そんな中、古龍の呼びかけに応じた(?)上級火龍が女性の姿へと『人化』してその場に降り立った。どうやらクォーツと違って状況を知らなかったが故に服を着替えている余裕は無かった様だ(と言ってもここにいる龍達は『人化』していなかったら基本的に全裸なのだが)、どこからどう見ても部屋着と思われる半袖短パン姿。
女性「急に呼び出さないで下さいよ、折角の休日をゆったりと過ごしていたのに。」
クォーツ「まぁまぁそんなに怒るなって、唐揚げでも奢ってやるから勘弁してくれよ。」
そう言ってクォーツが宥めた相手を(興味本位で)よく見て無る、好美はその「女性」の姿を見てすぐ傍に倒れてしまった。
女性「大丈夫?と言うかこんな所でオーナーと会うなんて思って無かったんだけど。」
好美「これはこっちの台詞よ、あんた(サラマンダー)も休日は人と同じ生活をしているのね。」
クォーツ「まぁ良い、誰か今持っている事件の写真を渡すんだ!!」
おいおい、その前に誰がこの場に来たのかを好美以外の面々に教えてくれんかね?ただ「オーナー」?「サラマンダー」?何となく身に覚えがあるな・・・。
好美「あの・・・、妹さんはいつ来られるんですかね?」
クォーツ「仕方ねぇか、そろそろ俺達の事を言ってもおかしくない様だぜ。」
「一柱の神」の言葉をしっかり受け入れたので一息ついた女性は魔法で即席の衣服へと着替えていた、ただ休日という事実が本人から全くもって抜けていなかったらしく・・・。
クォーツ「お前な、相も変わらずジャージなんだな。服買えって700年前からずっと言っているだろう?」
好美「あれ?ちょっと待ってよ、あんた501歳って言ってたじゃない!!」
おい、3人だけで話を進めるという放置プレイを楽しんでじゃねぇ!!何となく察しはついたが誰が来たかを言わんかい!!
クォーツ「お前な、若く見られたいからって昔言ってたけど2000歳も鯖読むな!!仕方ねぇ、俺から言うわ。ここにいるエリューはただのサラマンダーじゃなくて本当は火災古龍(エンシェント・サラマンダー)であって、俺の腹違いの妹なんだよ。社会勉強の為に人間の前では他人のフリをしろって言ったのが仇になったな・・・。」
-227 本来の「次女」-
一刻の猶予も許されない事態となっているはずなのに全くもって捜査を進めようとしない転生者達、確かに数々の新キャラクター達の登場や新事実の発覚などで脱線が多かったがそろそろ本気で話を進めて行きたいんだが大丈夫なのだろうか。良いんだよな、え?
結愛「お前な、神々の御前で何喧嘩腰になってんだよ。それに気になる事がまだあるだろうが。」
いや、そうこうしている内に義弘の行方がより一層分からなくなってしまうが大丈夫なのかよ。
好美「これからちゃんとしていくから良いじゃ無いのよ、それに私達は警察の人間じゃないんだから別に良いでしょ。」
リンガルス「すみません、一応私警察の人間なんですけど・・・。」
またまた存在を忘れられていた可能性が浮上していたリンガルス警部を横目に結愛は少し引っ掛かっていた事を聞いてみる事に、出来れば事件に関係している事を聞いて欲しいと願いたいのだが。
結愛「クォーツ神様、少しよろしいでしょうか?」
流石に神様にはいつもの口調で話しかけはしない様だ、そこは立派な社長(いや大人)と言った所か。
クォーツ「良いぜ、俺で良かったら何でも聞けよ。」
こんな事言いたくないけど神様って軽ぅ・・・。
結愛「先程「腹違いの妹」と仰っていましたがどう言う事なのでしょうか。」
社長の問いかけに少し答えづらそうに頭を掻く「一柱の神」。
クォーツ「うーん・・・、悩むほどの事じゃないんだが他の神々や下界の民達への示しがつかないから言わない様にしていたんだけど実は俺達の親父のギャンブル癖は今に始まった事じゃ無かったんだがまだマシになった方なんだよ。」
確かに気づけば競艇場やらパチンコ屋に行っている様に思える「全知全能の神」、和やかでゆったりとした生活を送っているのは良いが本当に神がそんなんで良いのかと思ってしまう。
好美「確かにこの前もパチンコで負けたって言ってましたよね、と言うか今更なんですけど天界にパチンコ屋ってあるんですね。」
クォーツ「実はな、親父がこの世界を転生者に合わせて色々と作り替えた時に天界にギャンブル場を造りまくったらしいんだよ。前からちょこちょこと地球(いや日本)を散策して気に入った物をこっちの世界にもと思って天界と下界の両方に施設を自分勝手に作ったって聞いたぜ、ただそれが意外と両方の世界の住民達にウケたみたいだから俺も反対できなくなっちまってな。小遣い程度にやってるだけみたいだからって出来るだけ止めはしない様にしているんだが昔はそれ以上に浮気癖も酷くてよ、俺が産まれた200年後に愛人との間に出来たのがコイツ。事実上は本来コイツが次女で、「「一柱の神」の1柱」って訳。」
好美「あの・・・、「事実上」と言うのは?」
クォーツ「コイツが産まれた数年後に母親のサラマンダーがコイツを連れて逃げる様に引っ越しちまったからセリーとトゥーチはこの事実を知らないんだよ、俺もいずれは話さないといけないんじゃないかと親父に聞いてみたんだが頑なに拒否されてな。まだ4姉妹だという事を奴らが知らないんだ、だから「事実上」って訳。」
すると長女の放った一言に食らいついたエリュー、ただ先程とは打って変った様子なのだが・・・?
エリュー「姉御、まだあいつらは俺の事を知らないのかよ。くそ親父も話す気が無いんじゃないのか?それと俺のお袋は「サラマンダー」じゃねぇ、「アーク・サラマンダー」だ。いい加減覚えろや。」
おいおい、急に口調が悪くなりやがったな。と言うか気になったんだが4姉妹の内の3柱が結愛と同じ口調って良いのかよ。
結愛「おい、ちょっと待てよ。それじゃ俺の口調が悪いみたいじゃねぇか!!これは義弘に対する反感の気持ちの表れなんだから良いだろうが!!」
クォーツ「あのな、世の中の事柄には何でも理由があるはずなんだからそれを聞かずに否定するのは良くねぇぞ。」
エリュー「俺だってな、姉御を呼ぶ度にあの口調をするの嫌なんだぞ!!」
-228 夜勤時にやってた「儀式」の下らない理由-
またもや放っておけない一言が飛び出したが何となく事件の解決が遠のきそうなので今は触れるべきではないと個人的に思ってしまったけどきっとこいつらは聞くんだろうなと密かにため息をつく俺、もう良いから適当にやってくれや。
好美「嫌々でやってた・・・、んですか?エリュー・・・、神様。」
エリュー「止めてくれよ、他人行儀にされるのは堅苦しくて嫌いなんだよ。お願いだから今まで通りエリューって呼んでくれよ。」
堅苦しいのが苦手と言う性格まで結愛に似てやがる、これは何かの暗示なのだろうか。
好美「じゃあエリュー、いつもの「あれ」って嫌々でやってたの?」
エリュー「そりゃあそうさ、ただただ腹ペコになった実の姉を呼び出すのに何であんなに大袈裟な事をしなきゃいけないんだよ。そもそも好美もおかしいと思わないのか?お供え物が「一晩置いたカレー」だぞ、もう馬鹿馬鹿しくて仕方が無ぇわ。」
エリューが飽きれていたのは「儀式」の事だと俺も含めてそこにいた全員が分かっていたのだが、別の解釈をしてしまっていたのが約1名。おっと・・・、約1柱。
クォーツ「お前な、光さんが作った「一晩置いたカレー」を馬鹿にしてんじゃねぇ!!俺はあれ以上に美味い物を食った事がねぇ、約3000年生きてきたが一度もだ!!」
かの有名な「一柱の神」の口から出た一言に唖然とする一同、正直今まで何を食ってきたのかを聞きたかったが今はやめておいた方が賢明か。
エリュー「じゃあ今まで何を食って来たんだよ、答えによっては「一柱の神」という言葉に傷が付いちまうぞ!!」
あ、妹さんが聞いてくれたわ。何か・・・、あざっす。
クォーツ「仕方がねぇだろ、母ちゃんの料理がくそ不味かったんだからよ!!一番マシな料理(?)がマヨネーズをかけた茹でアスパラガスだぞ、思い出すだけで恥ずかしくなっちまうわ!!」
そう言えば以前、トゥーチがハヤシライスに惚れていた様なそうでなかった様な・・・。まさかその様な原因があったなんて、人間界では偶に聞く話だが天界でもあり得るんだな。
クォーツ「てめぇ食った事があんのかよ、食った事があるってのかよ!!」
エリュー「あるよ、王城での夜勤の時に何回も食わせて貰ったよ!!確かに美味いよ、それは認めるさ!!ただ1週間に一度の楽しみに協力させられる俺の身にもなってくれ!!」
近年は神々が地上に降り立つ場面が増えて来てはいたがやはりハイラ達の様にまだその様な光景に慣れていない者もいなくはない。
エリュー「でも光さんや好美達の前では何度も降りているんだろ?「儀式」無しで普通に降りちゃ駄目なのかよ!!」
妹に正論を言われた長女は少し後ずさりしたがこのまま引き下がるのも釈然としないので何とか反論してみる事に。
クォーツ「確かにそうだけどよ・・・、ただ・・・、俺達は神なんだぞ!!カッコよく降りて来ても良いじゃねぇかよ!!」
エリュー「そんな下らない理由かよ!!もっと神らしい事を言えや!!」
クォーツ「その場の雰囲気を大切にしたいって時もあるだろ、やはり神として神らしく・・・、神々しく降りて来ちゃいけないのかよ!!」
エリュー「馬鹿か、いちいち「呼び出し」をしなくちゃいけねぇ俺の身にもなれ!!」
あらあら、もう「儀式」とも言わなくなっちゃったよ。「呆れ」の力ってそこまで強大な物なのか?
クォーツ「だってよ・・・、折角綺麗な月が出ていたんだから神々しく登場したいじゃん・・・。」
エリュー「そう言うけど雨の日だってちゃんと呼び出せってうるさかったじゃねぇかよ、大き目の1部屋を使うのに将軍長を説得するの苦労したんだから感謝しろよな。それに・・・。」
クォーツ「「それに」・・・、って何だよ。気になるから早く言えって。」
大きくため息をつく妹、やっと姉妹の喧嘩が終わりを告げるのだろうか。
エリュー「あのカレーならより具沢山になったものが光さんの御主人のお店で普通に食えるぞ、変装でもして行って来いや。」
クォーツ「あのな・・・、俺はそこまで有名じゃねぇ!!」
-229 何の仕事をしているかは関係ないんだよ-
俺がいい加減本当に話を進めさせてくれと願わんばかりと思う中、まさか強制収容所の所長室で繰り広げられるとは思わなかった神同士の姉妹喧嘩がやっと終わりを告げようとしていた。正直この物語を書いていてこれほどほっとした瞬間が来たのは初めてと言っても過言では無い。
2柱の神々はあれから結構長い間言い争いをしていたみたいだが、疲れが出て来た様でそれから数分程沈黙が続いた後で一歩引いた次女が申し訳なさそうに声をかけた。
エリュー「あ・・・、あのさ・・・。今度一緒にナルリスさんの店にカレーを食べに行かねぇか、久々に姉御と過ごしたくなってよ。」
クォーツ「そうだな・・・、久々の再会だってのに喧嘩なんてしてちゃいけないよな。えっと・・・、光さんの顔が見たくなって来たからお前が良かったらなんだがその店に連れてってくれよ。」
何だよ、実の妹との会話なのに照れくさそうにせずにすんなよ。
クォーツ「アホか、長い間まともに話して無かったんだぞ。照れるに決まってんだろうが。」
そうなんですか、俺自身に妹がいないから分かんねぇけどそんなもんなんだろうな。ただ作者としては一先ず話を進めたいから早く握手でも何でもしてくれねぇかな。
エリュー「さっきあんたも言ってた通り照れくさいんだよ、ちょっと待てって。」
分かった、じゃああんたらが納得いくまで話し合えや。
それから数十分に渡り姉妹は思い出話を交えながら納得いくまで話し合った。正直に言えば俺もそうだったのだがその場にいた全員が呆れてしまうくらいに、ただ神同士での事なので流石に口出しできないと空気を読んだらしく・・・。
好美「ハイラさん、申し訳ないんですけどお茶頂いても良いですか?」
好美よく言ってくれたよ、多分その場にいた全員がその場から離れたいと思っていたはずだぜ。でも世の中って物はそこまで甘くないんだな。
ハイラ「あの・・・、実は私もそうしたいんですけどもう茶葉が無いんですよ。先程皆さんに振舞った分が最後だったんです、何かごめんなさい。」
所長さん、あんたには何の罪も無いから謝らなくても良いよ。それにまだ珈琲豆だってあるだろう?
ハイラ「いや・・・、それだと結愛さんが飲めないですから・・・、って誰なんですか!!」
そっか、所長さんは俺の存在を知らなかったんだな。どう言えば良いんだろう・・・、取り敢えずこの世界を創った者です、これからちょこちょこ話しかけると思いますので宜しくお願いします。
結愛「気にしないで下さいね、別にコイツの言葉全部に返事しなくても良いので。」
おい結愛、今なんつった。お前の存在自体を消すぞ、コラ。
結愛「いや・・・、聞き間違いだって。何も言ってねぇよ。」
その場で下手な口笛を吹いて知らんぷりを決める結愛、でも社長の言葉を全員が聞き逃しては無かった。
リンガルス「社長・・・、恐れ入りますがちゃんと謝った方が良いと思いますけど。」
光明「そうだぞ、お前がいなくなったら貝塚財閥はどうなるんだよ。」
結愛「リンガルス警部は良いとして光明、お前は会社の事しか頭にねぇのか!!俺達夫婦の事に関してはどうでも良いのかよ・・・!!」
この社長夫妻が喧嘩をするのはもはや日常茶飯事だが、先程の光明の言葉は結愛の心に深く刺さった様で妻は思わず泣き出してしまった。男勝りである大企業の社長と言っても1人の女性なのだ、ハッキリ言ってまずいと思うのだが。
光明「わ、分かったよ・・・。これが解決したら2人で食事にでも行こう。」
結愛「やだ、旅行に行きたい。光明と2人きりで過ごしたい。」
光明「それは・・・、流石に・・・。」
おい、光明?
光明「分かったよ、今度ダンラルタ王国のリゾート施設にでも行くか・・・。はぁ・・・。」
-230 次女が呼ばれた意味-
「ナルリスの店で久々に姉妹での食事を行う」という事で姉妹喧嘩をようやく終えた古龍達は事件解決の為に動き出そうとしていたが、やはりこの場においてストレートに事が進む訳が無いと言う事を神達が知らない訳が無かった。
好美「あの・・・、ご姉妹でのお話が済んだのは良いんですけどセリー神様やトゥーチ神様は仲間外れになっているままなんですか?ただの住民である私が意見して良いのか分かりませんけど流石にそろそろ4姉妹が揃っても良いのではないかと思うのですが。」
確かに好美の意見は間違ってはいない、クォーツ以外の2柱の心中にエリューと共に遊んだ記憶があったとしてもそれは「近所に住む仲の良い友達」としての物。姉妹が無邪気に遊んでいた頃から2000年以上経つのだからそろそろ全員が実の姉妹である事を話しても良いのではないかと思うのは当然の事だ、と言うより我々人間としての感覚からすれば物凄く遅すぎる様にも思える。と言うかいつの間にクォーツもTシャツ姿になったんだよ。
クォーツ「うーん・・・、確かにそうなんだけどよ。2000年以上も黙っていたんだぜ、それにまだ親父が反対しているかも知れんから俺が勝手に言っていいとも思えないんだよ。」
桁違いの年数を3姉妹として生きて来た古龍達にとって今更「実は4姉妹だった」と言っても信じて貰える筈がない、ただこのまま真実を放っておいて良いのだろうかという疑問が無いと言うと嘘になる。おい、と言うか服装に対するイジリは無視か?
エリュー「クォーツの姉御は良いとしてセリーやトゥーチにとって俺はただの「近所の姉ちゃん」だぞ、この期に及んで事実を言ったとしても絶対に避けられるに決まってるって。」
それもそうだ、俺自身が経験した事は無いのだがこれは人間界(下界)においても十分あり得る話でこの様子だと天界も下界もさほど変わらない物なのだと見受けられる。
結愛「でもこのまま黙っているのも心苦しく無いんですか?辛くないんですか?」
兄のシスコンに悩まされている社長も全くもって兄妹の間の仲を大切にしていない訳では無い、もしどうでも良いと思うのなら就職先や居住地を探す事など決してしない。
エリュー「その通りなんだけどな、俺は姉妹間の問題を解決するためにここに来た訳では無いんだぞ。」
確かに休日返上でわざわざ人里離れた強制収容所に来たと言うのに全くもって関係のない事柄に時間を費やしたくはない、正直このままの状態がずっと続くのなら家に帰って眠ってしまいたい。
クォーツ「じゃあこういうのはどうだ?この事件が解決した時に姉としてあいつらと会うのは、下手すればこの世界を揺るがしかねないかも知れない事件を解決したとなるとセリー達もお前の事を尊敬してくれるだろ?」
エリュー「それは良いけど、何処か大袈裟過ぎやしないか?」
クォーツ「何言ってんだよ、今回脱獄した貝塚義弘は上級賢者(アーク・ワイズマン)だぞ。舐めてかかるとこっちの身が危ないのはお前も分かるだろう!!」
エリュー「・・・分かったよ。」
少し嫌々ではあったが改めて捜査に協力する事を約束したエリューの言葉を聞いてやっと安心したクォーツはやっと捜査に着手し始めた、ただ先程とは違ってハイラ等に事件当時の写真ではなく以前設置していた監視カメラ自体を持って来る様にと指示を出した。
ハイラ「クォーツ神様、写真は必要無いんですか?」
クォーツ「ああ、やはり怪しいのは映し出された映像もそうだがカメラ自体だからな。それを調べるのが一番良いだろう、それにカメラを調べないとコイツを呼び出した意味が無くなるからな。」
周囲の者達は最後の一言の意味が全く分からないままだったのだが一先ず神様に言われた通りに現物を持って来る事にした、やはり一番怪しいのは魔力による細工が施されたとされる監視カメラだった様だ。ハイラは箱に入ったままの状態で例の監視カメラを手袋をはめた手で神に渡した、指紋等余計な物が付着するのを防ぐ為だったが今更遅く無いかと思ってしまうのは俺だけだろうか。
ハイラ「あの・・・、お待たせしました。」
クォーツ「悪いな、ありがとう。ほらエリュー、これを見てみてくれないか?」
所長に手渡された監視カメラを姉と共に見た妹は先程から禍々しさが全く変わる事無い魔力と共に身に覚えのある何かを感じ取った様だ、これは姉妹だから分かる事の様だ。
エリュー「なるほどな・・・、これで姉御が俺を呼び出したのも納得いったわ。」
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