7. 異世界ほのぼの日記3 191~195


-191 誰だってやらかす-


 ずっと『念話』で恋人達と話す渚の隣にいたからか、酒類卸の店主はただただ無言で表情のみを豊かに変えていたばかりの目の前の屋台の店主が一体何をしていたのかが分からなかった様だ。あれ?おかしいな・・・、さっきドゥーンって自分の事をリッチだって言ってなかったか?


渚「あんたね、この世界に住んでいるリッチだからって誰しもが必ず『念話』を使えると思ったら大間違いだよ。」


 すいません・・・、大変失礼致しました。ただずっとお店の方をほったらかしにするのは宜しくないと思うのですが・・・。


渚「安心しなよ、店長さんならあそこでお茶飲んでいるよ。」


 あら本当ですね、いつの間に移動してたんだよ・・・。まぁ、暇そうにしてたから仕方が無いか。さて、話に戻りますかね。

 暑かったからか、それとも渚がずっと放置プレイをしていたからか、店の事務所の前で冷えた緑茶を飲み干したドゥーンは額から滲み出ていた汗を拭いながら渚達の元へと戻ってきた。


ドゥーン「あのお客様、そろそろ宜しいでしょうか。」

渚「ああ・・・、あんたは家族の友人なんだからあたしの友人でもあるんだ。「渚」って呼んでくれて構わないよ。それより悪かったね、さっきここにある食材を買い占めようとしていた好美ちゃん達と『念話』をしていたんだ。」

ドゥーン「そうだったんですか、もしかしたらビジネスでの話なので『進入阻害』をされていたのかもしれませんね。」


 どうやら情報の漏洩を防ぐ為に最近神(ビクター)が『作成』したと言われている『念話』の特殊応用技である『進入阻害』を使っていた様だ、しかし守が途中から入って来ていたけどどういう事なんだ?


渚「よく考えてごらんよ、今あの子はどういう状態なんだい?」


そうでしたね・・・、かなりお出来になっていましたね・・・。忘れておりました、しかし酔っているからって能力の質が低下する事があるんですかい?


渚「そりゃそうさ、吞み過ぎたらまともに歩けなくなる奴もいるだろ?あれと一緒さね。」


 あらま、ご丁寧な説明有難うございます。それにしても参ったな・・・、作者の俺より登場人物の方が能力に詳しくなってる上にいつの間にか応用技まで出来てやがる。これじゃ執筆が追いつかねぇよ・・・、取り敢えず再び話を進めようかね。

 ドゥーンは電卓を片手に改めて会計を進めようとした、ただ好美が買い占めようとした商品をそのまま回すだけだから既に合計金額は分かっているはずだがどうして計算し直しているのだろうか。


渚「理由は1つしかないよ、大量の食材を買い占めるんだから出来るだけ勉強してもらわないとね。」


 どうやら可能な限り値切ろうとしていた様だ、好美を中心とした転生者達はやはりドケチな者達が多いらしい。ドケチを敬うべきか、そして王城から予算を渡されているのにこの値切るという行為が必要なのか俺には分からなかった。まさかと思うがネコバ・・・。


渚「馬鹿言ってんじゃ無いよ、王城だって経費がギリギリの可能性だってあるんだから出来るだけ低予算にしてやりたいじゃないか。」


 本人にとっては優しさからの行為だった様なので俺は反省すべきだった、ただ店主が大変そうにしているのは否めないがこれは取引なんだから仕方が無い。しかし電卓での計算を終えた店主の発言に誰もが驚きを隠せなかった。


ドゥーン「えっとですね・・・、友人のご家族の方ですので特別価格と致しまして全体の4割引きである36万6000円とさせて頂きます(※日本では法令により本来酒を割引にできませんがここは異世界ですのでお許しください)。」


 ほぼほぼ原価ギリでは無いのかと思わず心配してしまう価格に頭が上がらなかった渚は頬を軽く掻きながら国王に手渡された予算の入った封筒から札を取り出して支払いを終えた、食材の運搬は勿論『転送』を使って行った様だが・・・?


シューゴ(念話)「渚さん、これ何なんですか!!いきなり「ダンラルタ王城御中 赤江 渚様」って書かれた大量の食材が出現したんですけど!!」

渚(念話)「あらま、そっち行っちゃったのかい?悪いね、すぐ戻すから。」


-192 あらまぁ-


 突然目の前に出現した大量の食材を見て慌てて『念話』を飛ばした1号車の店主は折角の食材を流石に腐らせる訳にはいかないと丁度空になりかけていた屋台の冷蔵庫の中に入れておこうとしていたがその様な心配は全くもって必要無かった、先程渚が言っていた通り全ての食材は次の瞬間に消失してしまったのだ。


シューゴ(念話)「渚さん、何があったんですか?店舗を営業している訳でも無いのにあんなに大量の食材を購入されるだなんて、しかも「ダンラルタ王城御中」って書いてありましたけど。」


 「暴徒の鱗御中」だったら話は分からなくも無いのだが「ダンラルタ王城御中」だったので話が変わって来る、心配性のシューゴは渚がとんでもない事態に巻き込まれたのではないのかとヒヤヒヤしていた。


渚(念話)「大した事無いよ、ただただお使いを頼まれただけさ。気にしないでおくれ。」


 シューゴに心配をかけさすまいと咄嗟についた嘘だったがどうかバレないでくれと祈るばかりであった、別に渚が悪かった訳では無かったのだがやはり責任者であり師匠である者としての責務をただひたむきに果たそうとしていただけだったのだ。しかし今回は珍しくシューゴが退かなかったので渚は返事に困っていた。


シューゴ(念話)「あの・・・、どう見ても「大した事無い」量では無かったのですが本当に心配ないんでしょうね?」


 どうやら渚が発注ミスを犯してしまったのではないかと思っていた様だ、もしもそうだとしたら「暴徒の鱗」全体の利益に影響が及んでしまう可能性がある。


渚(念話)「何だい、私が今までミスを犯した事があったかい?私の事信用できないってのかい?」

シューゴ(念話)「そういう訳では無いんですけど、ちゃんと理由を説明して頂かないと納得できませんよ。」

渚(念話)「さっき言っただろう、「お使いを頼まれただけだ」って。私の目が嘘をついている様に見えるかい?」


 『念話』を使用しての会話なので表情など見える訳が無いはずなのだが、きっと今の渚は冷静さと判断力が欠けている様だ。別にやましい事が有る訳でも無いのに何を焦る必要があるのだろうか。


シューゴ(念話)「どうやって目を見ろと言うんですか、今渚さんはバルファイで俺はネフェテルサなので無理に決まっているじゃないですか。」

渚(念話)「仕方ないね・・・。」


 会計を済ませて御釣りと領収書を手に渚達の元に戻ってきたドゥーンに「すぐ戻るから」と了承を得た渚はシューゴのいる場所を『探知』して『瞬間移動』した、ただ到着した場所が悪かった様で・・・。


シューゴ「うわ!!来るなら来るって言って下さいよ!!」

渚「何言ってんだい!!それよりほら、よく見てみな!!」


 比較的低い位置にあったシューゴの顔に自分の目を近づけた渚、女性の顔が近いからかシューゴは少し顔を赤らめていた。


シューゴ「いや・・・、それはこっちの台詞ですよ・・・。」

渚「へ?」


 一瞬ポカンとした渚は辺りを見廻した、そして自分がまたやらかした事に気付いた様だ。そう、シューゴは偶然立ち寄った「ビル下店」で従業員用のトイレを借りていたのだ。


シューゴ「分かったでしょ?ほら、早く出て頂けますか?」


 流石に狭いトイレの個室に2人で入っていると出る物も出なくなってしまう、ましてや目の前にいるのが渚なのでよっぽどだ。


渚「悪かったね、じゃあ。」


 シューゴの心中を察した渚は急いで元の場所へと『瞬間移動』した、ただ『探知』で場所を確認してから『瞬間移動』したはずなのにどうしてシューゴがトイレにいた事が分からなかったのだろうか。


渚「仕方ないだろう、誰だって焦る事はあるさね。」


-193 おい!!-


 顔を赤くしながら元の場所へと『瞬間移動』した渚が少しニヤついていた気がしていたが俺は何となくその理由を想像したくは無かった、しかしそこには不自然さがあったのでドゥーンは少し不穏に思いながら質問してみた。


ドゥーン「渚さん・・・、帰って来られて早々で聞きづらいんですが何かあったんですか?」


 ただただ俯瞰で見ていた俺は酒類卸の店長を見て本当に勇気のある奴だなと思うばかりであった、そんな中でドゥーンに質問された渚はより一層顔を赤くしていた。


渚「馬鹿だね、女の私に何て事を聞くんだい。」


 いや、ただ状況が分かっていないだけなのだが・・・。


渚「でもね、少し良い物を見た様な気分だったんだ。今ちょっと思い出したんだけど・・・、〇〇〇〇(自主規制)たね。」


 あまり「○○○○」の中を想像しないで頂きたいと思いつつ話を進めて行くとしたいのだが空気の読めない者が約1名・・・。


ドゥーン「あの・・・、全くもって状況が分からないのですがちゃんと説明して頂けませんか?」


 おい、聞くんじゃない!!空気読みやがれ!!


渚「だからね、私が『瞬間移動』したらうちの1号車の店主が・・・。」


 あんたも改めて詳しく説明しようとせんでええ!!もう・・・、油断も隙も無いな・・・。取り敢えず食材が元に戻ったんだから早くランバルの所に送らないといけないだろうがよ、でもあれ・・・?そう言えば「ダンラルタ王城御中」になっていなかったか?


渚「そりゃそうさね、デカルトさんに頼まれた通り「ダンラルタ王城」で領収証を書いて貰ったからね。そうなって当然じゃ無いか。」


 ただ俺は1つ不安に思っていた事があった、あのドケチな鬼嫁である王妃のプーラがデカルトの行動を簡単に許すとは思えない。王城の経費からすれば少額での投資になるのかも知れないが、一般人としての目線から考えると莫大な金額であったので領収証を見た時の王妃の表情を想像すると怖くなって来た。本当に大丈夫なのだろうか。


ドゥーン「一先ず食材が腐らない内に送ってしまった方が良いでしょう、今度は私がお送り致しましょうか?」

渚「大丈夫大丈夫、次こそ私がちゃんと送るさね。「暴徒の鱗」の信用を落とす訳にもいかないからね。」

ドゥーン「そうですか、では恐れ入りますがお願い出来ますでしょうか。」


 改めて店主にお願いされた渚は落ち着く為に深呼吸した後に『転送』を行った、どうやら今回はちゃんとランバルの所へと送れた様だが・・・?


デカルト(念話)「渚さん、本当にリスト通りに買ったんですか?!想像していたよりも大量になっている様な気がするのですが・・・。」


 実は割引を受けた事で調子に乗った渚はバルフ酒類卸で自分の屋台で使う用の食材をも購入していた、それが一緒に国王達がいる「鉱山下の大蜥蜴」へと『転送』されてしまったらしい。まさかと思うがこの食材も王城の金で買った訳じゃ無いよな?


渚「あんたは馬鹿かい、前にも言ったけど私がネコババする訳が無いじゃ無いか。ほら、ここに屋台の経費が入った封筒があるだろう?」


 渚は自慢気になりながら封筒を胸の前で振っていた、ただ国王の事を蔑ろにするのは良くないと思うのだが・・・?


デカルト(念話)「あの・・・、聞こえてますかね?もしかして寝ちゃってます?」

渚(念話)「ああ・・・、悪かったね。ちょっとこっちで色々あってさ、間違えてうちで使う食材も送っちゃったみたいなんだよ。今から取りに行くから許しておくれ。」

デカルト(念話)「焦りましたよ、ただでさえ高額なので妻に何を言われるかと思ってヒヤヒヤしていたんですから。」

渚(念話)「あんたね、こんな事聞いて良いのか分からないけどそんな調子でよく国王が務まるね。」


 腰の低さも度を越えてしまうのは良くないと思うのは俺だけだろうか、はぁ・・・。


-194 知らせる-


 何やかんやあったので「無事に」と言えば嘘になるが、渚が何とかして「鉱山下の大蜥蜴」に納品する食材を『転送』し終えて無事にダンラルタ王国に戻って来たという知らせを聞いたので恋人達は旅行を続行させる事にした。ただ今までの流れからして無事に好美達の卒業旅行が終わりを告げるとは思えないがこの世の中何があるか分からないので一先ず2人の動向をゆっくりと見守る事にした、ただ先程恋人達の事を叱責していた渚がこのまま黙っているとは思えない事が難点だったが・・・。


渚「まぁ何とか店を開店出来る所まで持って行けたね、明日お花でも飾ったら流行るんじゃないのかい?」


 確かに店の前にド派手と言われるまでの花を飾っていると目立つので来客数が増える事は間違いないと予測される、しかしここはダンラルタ王国なので決して忘れてはいけない事が1つあった。


デカルト「渚さん、景観を損ねるので流石にド派手な花を飾る訳には行きませんよ。ただ店主さんの料理の実力は皆が分かっている事なんです、これだけでも十分だとは思いませんか?」


 確かにランバルの料理の腕は以前働いていた旅館にいるベルディやネイア達のお墨付きなのかもしれない、ただその場にいた全員が必ず考慮に入れないといけない事象があった。


渚「待ちなよ。この国に、いやこの世界に住んでいる全員がランバルさんの料理の味を知っている訳ではないだろう。」


 ここ数年でボーリング場を併設していたが故に「竜騎士の館」の人気は右肩上がりになっていたが3国の住民達が必ずしも宿泊した証拠がある訳ではない、この3国にて店舗や屋台を営業している「暴徒の鱗」でさえ未だにその味を知らない住民だっているので尚更だ。ここはやはり責任を果たす為に何かしらの良策を練る必要があった。

 そんな中、ランバルが頭を抱える全員の下に本来はお冷を入れる為のグラスを使ってお茶を振舞っていた。


ランバル「皆さん、私の為にありがとうございます。しかしこんな人気の無い所で店を開く事が間違いだったのかも知れません、潔く自分の店を持つ事を諦めて旅館での仕事に戻る事にします。」


 洋食屋の店主は簡単に言ったが好美達が宿泊した時点で既に旅館の1階にランバルの店があった痕跡は全くもって残っていなかった、ハッキリ言ってもう後が無いのは明白だ。


渚「待ちなよ、1番大切な事はランバルさんの実力を皆に認めさせる事じゃ無いのかい?」

デカルト「じゃあ・・・、どうすれば良いと言うんですか。」


 方法が無いと言えば嘘になる、しかし俯瞰で様子を見ているだけの俺に意見をする権利があるのだろうか。


渚「何だい、偶にはケチケチせずに言いなさいよ。」


 分かったよ・・・、目立つ所で試食を出せば良いんじゃ無いのか?きっと感染症が危惧される今の日本と違ってこっちの世界は問題ないと思うんだが。


渚「「目立つ所で試食」ね、良い考えだけどね・・・。」

デカルト「私もそう思いますが、住民の皆さんが来て下さる「目立つ所」って何処だと言うんです?」


 1箇所あるだろう、国王として責任を取れってんだよ。


デカルト「ま・・・、まさか・・・。」


 そう、その「まさか」だよ。国王が俺なんかの意見を簡単に受け入れてくれるとは思わないが提案してみる価値はあるだろう。

 デカルト国王、あんたもこの件の責任者の1人のはずだ。王城で試食を出すんだよ!!


デカルト「そう言われましても、王城は山の上ですからちゃんと宣伝しないと誰も来ませんよ。何か考えでもあると言うんですか?」


 おいおい、そこにいるのはただの屋台の店主じゃないんだぞ。「あれ」を使うんだよ。


渚「何さ、全員して私の方を見て・・・、まさか「あれ」を使うつもりかい?私は嫌だよ?」


 何だよ、分かってんなら早く『アイテムボックス』から「あれ」を出しやがれ!!


-195 環境と共に変わった事-


 周囲からの圧に押されて深くため息をついた渚は致し方なく『アイテムボックス』から「あれ」、そう、本人が「赤鬼」と呼ばれる所以となった愛車・エボⅢを引っ張り出した。でもよく考えてみればどうしてダルラン家の地下駐車場で大切に保管されているはずのエボⅢがまた『アイテムボックス』に入っているのかが不思議で仕方が無かった、この際だから聞くけどどういう事なんだ?


渚「ああ・・・、実はね・・・。」


 何だよ、言いづらい理由でもあんのかよ?まさか光達の家から追い出されたのか?


渚「そんな訳無いじゃ無いか、あたしゃあの子の母親だよ?」


 例えそうだとしても家主はナルリスであるし渚自身の素行を考えると十分あり得る話である、しかし本人からちゃんと理由を聞いておかないとずっと疑ったままになってしまう。


渚「失礼だね、一時的に場所を空けておいて欲しいって言われただけなんだよ。ほら、そろそろ3国を跨いでのカフェラッテ・レースの時期だろう?」


 ああ・・・、そう言えばそうか・・・。確か以前は光が3連単を当てて大儲けしてた様な気がするけどそれがどうしたってんだよ?


渚「それがね、光が働いているパン屋の連中がチームを組んで出場しようってうるさく言い出したもんだからスーさんに協力を仰いであの子の車をレース用に改造するのに地下駐車場を利用しているって訳さ。元から私が拘っていじった車なのに酷い話だと思わないかい、すっかり蚊帳の外だから寂しくて仕方が無いよ。」


 誰もが「そっちかよ」と言いたい場面であったが世の中で言う「覆水盆に返らず」、一先ず話を戻す事にしようか。


渚「それで?私の愛車をどうするつもりなんだい?」


 「どうする」って・・・、車は走らせてなんぼだぞ。当然、走って貰うんだよ。ただしボディに宣伝用のステッカーを貼ってだけどな、分かったら早くやれ。


渚「何でだい、「暴徒の鱗」のステッカーだって貼っていないのに嫌なこったね。」


 その時だ、眩しく輝く日光に照らされて赤色が映えていたスポーツカーの持ち主以上に抵抗する様子の「声」がそこら辺にいた全員の脳内に直接流れ込んで来た、この声は女性の様だ・・・。


女性「あの・・・、前から言おうと思っていたんですが最近私の扱いが雑過ぎませんか?」

渚「だ・・・、誰だい!!不審者でもいるのかい?!」


 女性の声を聞いた数人が辺りを見廻しても渚以外に女性は見当たらなかった、ただどう考えても渚があんな丁寧な言葉遣いをするとは思えないと全員がざわついていた。


渚「ちょっと、いくら何でも失礼じゃ無いのかい?」

デカルト「渚さん、そんな事より今は声の正体を知るのが先決でしょう。」

渚「そ・・・、そうだね。あの・・・、何処のどなたかは存じませんが宜しければお顔を見せて頂けませんかね?」


 初めて話す相手だからか、今までに無い位に丁寧に話しかける「赤鬼」、しかしその必要はすぐに無くなった。


女性「いや渚さん、さっきから目の前にいるんですけど。と言うより貴女が目の前に出したんでしょ?『アイテムボックス』から出て来た時って意外と痛いんですよね・・・。」

渚「ま・・・、まさか・・・。実はちょっと前に守君から聞いた話に似てるけど、まさかこれが「デジャヴ」ってやつかい?」


 渚さん、改めて言いますけどここは何でもありの異世界なんで十分あり得る話ですよ?


女性「そうですよ、それより私を宣伝に使うのならそれなりの相談をさせて頂いて互いが納得した上で無いと動きたくないんですけど。」

渚「あんた・・・、エボⅢだね?元の世界にいた頃はバカみたいに燃料を食ってたのにこっちに来てドケチになってないかい?」


 自分の知らない所で愛車がある意味変わってしまった様なので少し困惑する渚。


エボⅢ「それで?私の時給はおいくらなんですかね?私安くないですよ?」

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