7. 異世界ほのぼの日記3 186~190


-186 普段優しいコッカトリスは怒ると怖い-


 好美にこれ以上飲まれてたまるかと言わんばかりに焦った様子で手に持っていたコーラを一気に口にした守は国王の前だという事にも関わらず大きなゲップをしてしましった、第三者として様子を見ているだけの俺からすれば原因は好美にあるのか守にあるのかが分からない。しかし仲睦まじい恋人達の様子を見ていたデカルトは好美を乗せて地上に降り立った後にただただ笑うだけだったが顔が引きつっていない事を願うばかりであった。


守「王様、大変失礼致しました。申し訳ありません。」


 頭を深々と下げて謝る守、それに対して腰の低さに定評がある国王は全てを笑って許してくれた様だ。


デカルト「ハハハ・・・、楽しそうで何よりじゃないですか。私も学生時代に妻と付き合っていた頃の事を思い出してしまいましたよ。」


 デカルト達の学生時代が何年前の話なのかは全くもって想像がつきそうにも無かったが、今はハッキリ言ってどうでも良い話だ。と言うよりあんたら、ここには遊びに来た訳じゃ無いだろう?


守「分かってるよ、好美がいけないんだぞ。ずっと王様の背に乗って遊んでいたから。」

デカルト「まぁまぁ守さん、良いじゃないですか。誰だって何もかもを忘れて無邪気に楽しみたい時だってあるはずです、今回は私の顔に免じて許してあげて頂けませんか?」

守「王様がそう仰るなら・・・。」


 致し方なく好美を許した守、でも心中はずっともやもやしているままだった。


デカルト「一先ず入りましょう、このままだと大臣の弟さんに迷惑をかけるだけですから。」


 店に何の用事も無い訳では無いがこのままだとただの迷惑駐車だ、早く店に入った方が賢明だと皆が思うだろう。


好美「分かったよ・・・、早くこの問題を解決して旅行に戻りたいもん。」


 ビジネストークをしている時が多いので2人がまだ卒業旅行の最中だった事をついつい忘れてしまっていた俺、作者からすれば恋人達にはもっとほのぼのとした異世界ライフを楽しんで欲しいのだがそうは問屋が卸さないらしい。

 そんな中、店の中からずっと様子を伺っていたランバルは店にも入らずにずっと遊んでいる者達にしびれを切らして外に出て来た。


ランバル「あの・・・、うちの店の前でずっと何をされているんですか?」

デカルト「すみません、本当はすぐにお店の中に入ろうと思っていたのですがついつい楽しくなってしまいまして。」


 いつもと違う格好だからか、自分の目の前にいるのが国王だとなかなか気づかないランバル。やはりデカルトが小豆色のジャージで外に出て来るのはまずかったのではと思ってしまう。


ランバル「「店の中に入る」って・・・、うちはまだ都合が悪くて開店出来ない状態なんで何もご提供する事が出来ないんですよ。」

デカルト「その「お店の御都合」の為に私が来たんです、ご迷惑をお掛けした原因を作ってしまったのですから。本当に申し訳ございません。」

ランバル「謝らないで下さいよ、それより「原因を作ってしまった」とは・・・、ん?」


 目の前で頭を下げる男性の顔を改めてまじまじと見るランバル、想像上で数回程見た覚えのある服装を重ねてみると・・・。


ランバル「国王様では無いですか!!なぜこの様な寂れた所に?!」

デカルト「何を仰います、素敵なテーブルセットの揃った良いお店では無いですか。開店したら私も通わせて下さい。」

ランバル「王様自ら、恐れ多いですがそれはいつになる事やら。」

デカルト「先程申し上げた通りその原因を作った張本人は私でございます、明日にでも開店できる様に食材等を王城の方で手配させて下さい。」


 国王の言葉にじんわりと涙を流すランバル、しかし黙っていないのが兄の大臣だった。


ロラーシュ「そんな・・・、あんまりです!!個々の店主は他でも無いこの私なんですよ!!私の許可無しにどうして開店させようとしているんですか!!」

デカルト「ロラーシュ、この期に及んでまだその様な言葉を抜かすか。いい加減にしろ!!」


 今まででこの様なデカルトを見た事が有っただろうか、いや無いはずだ・・・。


-187 拘っているが故に-


 大臣の無責任な行動と発言に怒りがピークに達した国王はロラーシュを自宅謹慎処分にしようとしたがそれは流石に渚が許さなかった、屋台で修業をしている時のロラーシュの表情を一番間近で見ていた店主はぐんぐんと伸びる本人の実力を認めていたし買っていた。


渚「待っておくれ、国王様の気持ちは分かるけど私はどうなるんだい。もうすぐ自分の店を持てるまでの所までやっと来れたんだから最後までやらせてあげてくれないかい?」

デカルト「渚さん、これは王城内での話なんです。申し訳ありませんがもう少々お待ち頂けませんか。」


 大臣に対する怒りを露わにしつつもお世話になっている渚への敬意を忘れない国王、やはり何よりも国民を大切にしたいという信念が垣間見える。


ランバル「あの・・・、私が聞いて良いのか分かりませんが兄のお店はどうされるおつもりなんですか?」


 これに関してはロラーシュ本人も知らなかった様だ、正直腹が立って仕方が無いがそれが故の今回の行動だと思うと納得がいく。


デカルト「こうなってしまっては仕方がありませんね・・・。」


 国王が深くため息をついて落ち着きを取り戻して飲み水を求めたので素直に従うランバル、今自分に出来る事はきっとこれしかないと言わんばかりの様子と言った所か。


デカルト「ふぅ~・・・、ありがとうございます。さて、本題に入りましょう。確かにロラーシュには拉麵屋の修業をして来る様に申し上げたのは他でも無く私であります、しかしこんなに早く事が進んでしまうと思いませんでしたので新店の建設を未だ行っていなかったのです。実は王城の脇に随分前から使っていなかった物置代わりの平屋があるのですがそちらを改装して拉麵屋にしようと考えていたんです、しかし拉麵屋の修業は困難な物だとお伺いしておりましたのでまだ建設業者を呼んでいなかったのです。それが故に店の完成予定も未定でしたのでしびれを切らしたロラーシュの下に弟さんのお店の情報が入って今回の騒動になってしまった様です、本当に申し訳ございません。」


 改めて水を1口飲んだ後に深々と頭を下げる国王に物怖じしてしまう洋食屋の店主、まさか自分の夢だった店の開店が本当に国王を巻き込んでしまう騒動に発展してしまうとは思いもしなかった。


デカルト「あの・・・、恐れ入りますがお店の従業員は採用されているんですか?」


 確かに店を開店させたからって店員が全くいないと店が回らず仕舞いですぐに閉店に追い込まれてしまう、しかし開店がいつになるのかが全く見えていなかったので・・・。


ランバル「まだ1人も・・・、求人情報誌にも募集をかける事も出来ていないんです。この様な状況ですのでお気持ちは嬉しいのですが明日開店と仰られましても・・・。」

デカルト「そうですよね、なので本採用の従業員がある程度揃うまで王城から使用人を数名ほどお貸しいたしましょう。」


 国王の言葉に黙っていなかったのは大臣だ。


ロラーシュ「それはなりません!!王城だって人手不足だと言うのに何を仰っているのですか!!」

デカルト「お前の行動が原因だろう、お前にその台詞を吐く権利など無い!!各部署から数名ずつ引き抜けば何とかなるはずだ、迷惑も承知だが私が直接連絡を入れよう。お前には一切口出しはさせないからな、分かったら修業に戻るんだ。」

ロラーシュ「は・・・、はい・・・。」


 デカルトの叱責に肩を落としながら店の外に出るロラーシュ、流石に今回の叱責は効いたようだ。


デカルト「渚さんすみません、またうちの大臣がご迷惑をお掛けしますが宜しくお願い致します。」

渚「ロラーシュの事は私に任せな、今はこの店を開店する準備をしなきゃだろ。それに私にできる事があれば何でも言っておくれ。」

デカルト「何と心強い、では一先ず私は王城に戻って各部署に連絡を入れますので食材の準備をお願い出来ますか?領収証は私の名前でお願い致します。」


 デカルトのお願いを聞き入れた渚はランバルから必要な食材のリストを受け取ったがそれを見て驚愕していた、何故なら・・・。


渚「これ全部高級食材じゃ無いか、経費不足で今夜営業できるか不安になって来たよ・・・。」


-188 大丈夫?-


 改めて食材リストを睨みつける渚はあまりにも高額だった為に再び震えていた、これだと今日の経費を全部使うどころか数日分の売り上げを返上しても払える訳が無い。


渚「あんたね、うちは見ての通り屋台の拉麺屋だよ。こんな大金、払える訳が無いじゃ無いか。いくら後で返金があるって分かっていても買い出しになんて怖くて行けないよ。」


 確かに渚が言っている事は正論ではあるが転生者達は元から1京円の資産を与えられているはずなので問題無いが、やはりいち経営者としてしっかりとした話し合いをすべきだと簡単に引く訳に行かない様だ。きっと王城からの信用を得て売り上げのアップを見込んでいるのだろう。


デカルト「では、予算を王城の方から先に出しておきましょう。渚さんは後から御釣りと領収証を渡してくれればそれでいいですので。」


 冷静に考えていればデカルトの言う通りだ、しかしその方法だと王城の使用人を買い出しに出せば良いだけなので渚が良く必要性は皆無となる。ただこれは王城と屋台の両方が絡んだ話なので双方でしっかりと話しをつけるべきだと言えるし、俺としては全ての責任者をロラーシュにするべきだと思うのだが。


渚「ロラーシュを預かる身とすればやはり王城からの信頼にちゃんと答えないといけないじゃないか、私だって1人の経営者である前に人間なんだからね。」

デカルト「すみませんね、ではこちらのお金でお願いします。」


ただ屋台に予算が無いのは事実だ、デカルトの言う通りに王城(と言うよりデカルトのポケットマネー)から予算を受け取って買い出しに行く事にしたが実はそれ以上の問題が浮上していた。

 長々とした国道を進む中、渚はロラーシュの運転する軽バンの助手席で渚は1人頭を抱えていた。


渚「参ったね・・・、買い出しに行くったってもこんな高級食材を扱う店なんて何処にあるってんだい。ただでさえ店の無いダンラルタ王国だってのにどうすれば・・・。」


 そんな店主に運転しながらも横から小声で話しかける大臣。


ロラーシュ「あの・・・、今はバルファイ王国なんですけど・・・。」

渚「あんたは余計な事を言ってんじゃ無いよ!!」


 ただでさえイラつく渚、そこに一言告げるのは火に油を注ぐ様な物だと思われるのだが渚は深呼吸して冷静になった後に腕組みしながら考えていた。


渚「あんた、今さっき「バルファイ王国」って言ってなかったかい?」

ロラーシュ「はぁ、確かに申し上げましたが・・・。」


 よく考えればここはダンラルタ王国との国境からさほど離れていない場所だ、渚の記憶が正しければ・・・。


渚「あの店があるんじゃないのかい?」

ロラーシュ「「あの店」・・・、と申しますと?」

渚「あともう少しだけ走れば分かるよ。」


 暫く走ると数人の住民達が行列をなして開店の時を待つ店があった、ただそこはどう見ても客売りをメインとしている様にも見えないんだが・・・。


ロラーシュ「あの女将さん・・・、ここってお店なんですか?」

渚「こら!!「女将さん」って呼ぶなって何回言えば分かるんだい!!」


 「またかよ」と言いたいがこれは忘れてはいけない件だ、これを忘れてしまっていては渚が何を言い出すか分からない。


ロラーシュ「すみません、お姉さん。それで、ここは何ですか?」

渚「何ですかってお店だよ、そうでないとお客さんなんて来る訳無いじゃ無いか。」


 渚がそう言うと店員が自動ドアの鍵を開けて客達を店に招き入れていた、ロラーシュも駐車場に車を止めて同様に店に入ろうとしたが渚が制止した。


ロラーシュ「お姉さん、何を考えているんです?」

渚「あのね、私達はあくまで商売をする人間だよ。用があるのはこっちさ。」


 そう言うと店の入り口から離れて裏にある倉庫の様な場所へと歩いて行った。


-189 必要なのは人同士の繋がり-


 ただただ呆然と立ち尽くすロラーシュを横目に、「バルフ酒類卸」にて一般客が利用する表側の小売り用の店舗とは打って変わった様に薄暗い倉庫の部分へと渚はゆっくりと進んで行った。


ロラーシュ「お姉さん・・・、ここ私達は入って良い場所なんですか?」

渚「大丈夫だって、私は以前からここで屋台の食材を仕入れているんだ。それに表向きの店舗はつい最近出来た場所で元々はこんな倉庫だけでの営業だったんだ。」


 と言うよりこの世界では渚の屋台以外にもあらゆる外食産業の店を経営する会社達が必ずと言って良いほどこのお店との付き合いをすると言っても過言では無い、その為に先程赤鬼が言った「倉庫」には酒は勿論だがあらゆる食材が取り揃えられていた。

 ロラーシュがきょろきょろと辺りを見廻す中、2人に向かって男性の声がした。


男性「「倉庫」とは何ですか、可能な限り多くの食材等を取り揃えるのに予算をつぎ込むために敢えて施設をこの様にしているんです。」


 突然の声に驚きを隠せない2人は焦りながら声の方へと振り向いた、まだ焦りが残っていたのか2人の息は少し荒くなっていた。


渚「誰なんだい、全く気配を感じなかったよ。」

男性「すみません、ごく偶に癖が出ちゃうんです。狭い店の中で『瞬間移動』を使うなって友人にいつも怒られているんですが。」

渚「まぁ、私も人の事を言えた立場じゃないから構わないさね。歩くのが面倒な時ってつい『瞬間移動』に頼っちゃうんだよね。」

男性「あらま、気が合いますね。ネクロマンサーか何かで?」

渚「ただの転生者だよ、ネクロマンサーって何なのかを全く知らないって言ったら嘘になるけどね。」


 「転生者」という言葉を聞いた男性は薄暗い中で渚の赤い髪と相も変わらず男勝りな姿を見た後、必死に何かを思い出そうとしていた。


男性「あの・・・、恐れ入りますがもしかしたら赤江 渚さんではないですか?」

渚「あらま、私も有名になったもんだねぇ。」


 因みに普段渚には別の店員が対応しているので2人には全くもって面識が無かった、ただどうして男性は渚を知っていたんだろうか。


渚「ただどうして私の事を知っているんだい?生前から雑誌とかの取材なんて受けた覚えなんて無いんだけどね。」


 確かに生前の渚は表向きではただのOLだったから思い当たる節など無い、それにこっちの世界でも八百屋の仕事を失った後にのんびりと屋台を経営していただけだから尚更だ。


男性「ヴァンパイアのナルリスに聞いたんですよ、ナルリス・ダルラン。私はリッチのドゥーンと申しましてアイツとは友人なんですよ。」

渚「そうかい、ナル君の友人だったのかい。だったら話が早いね、ちょっと頼まれてくれるかい。」

ドゥーン「勿論です、友人のご家族の方とあれば喜んでご協力させて頂きますよ。先程は失礼な事をしてしまいましたので是非お詫びをさせて下さい。」


 優しく微笑む店主に渚が食材のリストを手渡すとドゥーンは頭を悩ませていた、理由はただ1つ・・・。


ドゥーン「こちらですか・・・、困ったな・・・。」

渚「何言ってんのさ、さっき見回った時はいっぱい在庫があったはずだけど?」

ドゥーン「それなんですがね・・・、つい先程ある方からお電話を頂きまして酒を中心に買い占められてしまったんですよ。」

渚「買い占めね・・・。」


 デカルトやランバルが渚がここに来る事を予測して先に電話で注文をしていたのだろうか、出来ればそうであって欲しいと願うばかりの渚。ただ「酒を中心に」という言葉が少し引っかかるが・・・。


渚「誰が電話したってんだい?」

ドゥーン「あの・・・、「暴徒の鱗」の倉下好美さんという方なんですが・・・。」

渚「好美ちゃんだって?!あの子は今彼氏と旅行中だよ、どういう事なんだい・・・。」


 慌てて好美に『念話』を飛ばす渚、ただ噂の好美は痺れを切らしたのかランバルからオススメされた近くの居酒屋へと向かって思いっきり吞んでいた・・・。


-190 優先すべきは店舗か個人か-


 自分の屋台と同じチェーン系列である1店舗のオーナーである好美のまさかの行動に慌てて『念話』を飛ばした、別の店舗に食材を探しに行けば良いじゃ無いかと俺は個人的に思ったのだがこのまま国王を待たせたままだと「暴徒の鱗」の信用を落としかねないし何より好美の為にならない。しかし今の好美には仕事を忘れて折角の卒業旅行を楽しんで欲しい、一先ず理由及び動機を聞いてみる事にしてみた。


渚(念話)「好美ちゃん、どういう事なんだい。バルフでこんなに食材を買い占めてどうするつもりなんだい?」


 いち経営者として、そして先輩として好美のこの行動は許す訳にはいかない。しかし好美サイドにもそれなりの理由があって・・・、欲しかった。


好美(念話)「え・・・、何の事ですかぁ~?」

渚(念話)「あんたね、いくら「ビル下店」を好きな様にしていい権利を有しているからってこれはあんまりじゃないのかい?店の皆がびっくりしちゃうじゃないか。」


 確かに好美は「ビル下店」のオーナーであるがその様な権利をいつの間に持っていたのだろうか、ただ先日の「鮪1本事件」と「大量の白菜・胡瓜事件」という前科があるので流石にイャンダやデルアもこの様な事態は懲り懲りだと思うはずだ。可能であれば買い占めた大量の食材を突然店内に出現させて驚愕させるという事態は未然に防いでおきたい。


渚(念話)「何だい・・・、もう出来上がっちゃってんじゃ無いか。なのに酒を中心に買い占めているだなんて改めて聞くけどどういう了見なんだい?」

好美(念話)「いや・・・、店を出た後に適当に何処かで呑もうかと思いまして。」

渚(念話)「まさか・・・、あんた個人的な吞みの為に買い占めたのかい?ここは一応業務用食材の店なんだから私が来るって思わなかったのかい?」


 こんなに買い占めてどうやって運ぶつもりなんだろうか、どう考えてもカペンには乗りそうにもない量なのだが今はそれ所では無い。冷静な表情をしながら好美の隣で2人の『念話』を聞いていた守が割って入って来た。


好美(念話)「ネフェテルサ王国のゲオルさんの店で買って『転送』か『アイテムボックス』を使えば・・・。」

守(念話)「すみません渚さん、こいつ最近酔ったら馬鹿買い癖が出てしまう様になっちゃうんですよ。この前も八百屋さんから「暴徒の鱗」の名前でピーマンを馬鹿みたいに買い占めようとしていたので必死に止めたんです。」

好美(念話)「何よ・・・、まだ全然吞んで無いもん。」


 因みに現時点で店に入ってから1時間半程経過しているが大瓶のビールを2本分と日本酒を3合丸呑みしてしまっている、これの何処が「全然呑んでない」と言えるのだろうか。


守(念話)「好美が買い占めようとした食材は全てお返ししますので国王様達の為に渚さんが購入して頂けませんか、今いる店にはまだ酒や食材の在庫があるみたいですし流石の好美でも倉庫ごとは無理だと思いますので。」

渚(念話)「助かるよ、素面のままでいてくれてありがとうね。今度サービスさせてよね。」

守(念話)「わ・・・、分かりました・・・。」


 渚は今度屋台で料理をサービスすると言っただけのはずなのだが生前含めた過去の記憶が走馬灯の様に脳内を走った守は返事に困っていた、嬉しさと痛さが半分ずつの「記憶」・・・。


渚(念話)「何だい、嬉しくないってのかい?私のサービスに不満でもあるのかい?」

守(念話)「嬉しいに決まっているじゃないですか・・・、やだな・・・。」

渚(念話)「あんた、まさか光の「プロレスごっこ」を思い出したのかい?あの子じゃあるまいしそんな馬鹿な事をする訳無いじゃ無いか。」


 しかし「蛙の子は蛙」、同じことをやりかねない。守は自分なりに防衛線を張っているつもりであったがそれも渚の一言で打ち砕かれた。


渚(念話)「それよりもあんた、私は腹違いだけどあんたの姉の母親だよ。という事はあんたの義理の母親だ、家族も同然なんだからそろそろ敬語はやめないかい?」

守(念話)「そうだね・・・、おば・・・、おば・・・。」

渚(念話)「「おば・・・」、何だって?!」


 流石に「お義母さん」は許せても「おばさん」は許せない様だ、そこは1人の女性として譲れないものがあるでもだろうか。


渚「何さ、あんたも私の事を「おばさん」って言いたいのかい?」


 い、いえ・・・、とんでもないです。大変失礼致しました・・・。

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