7. 異世界ほのぼの日記3 181~185


-181 国王の性格と現状-


 「やはりか」という言葉を頭に思い浮かべながら2人は店主の行動のおかしな点を指摘した、自分がやっとの思いで出そうとした店だと言うのにどうして兄の発言に合わせる必要があったのだろうか。


守「あの・・・、どうしてロラーシュ大臣を待つ必要があると言うんです?」

好美「そうですよ、この店の店主はランバルさんなんだからご自分で決めて開けてしまえば良いじゃないですか。」


 確かにそうだ、洋食と拉麺のコラボを実現したいのなら店を開店させてから商品を考えてしまえばいい話だと思われるが。


ランバル「それがですね・・・、自分が店主をやらないと意味が無くなる、王様に何を言われるか分からないと言われましてね。」

好美「そんなの横暴ですよ、突然やってきて店の改装費用や調理器具等の手配は全てランバルさんがやったってのにいきなりやって来て自分が店主をやるだなんてふざけているにも程があります!!」


 好美の言っている事は確かに正しい、しかし興奮しても話が前に進む訳では無いので一先ず守は恋人を制止する事にした。


守「好美、落ち着けよ。今お前がどうこう言ったって仕方が無いだろう。それで・・・、どうしてその場でお兄さんに何も言わなかったんですか?」

ランバル「言わなかった・・・、と言うより言えなかったんです。何分、自分の意見を言うだけ言ってすぐに出て行っちゃったんですから。」


 おいおい守、さっきの店主の話をちゃんと聞いてなかったのかよと言いたいところだが今はやめておこう。1国の大臣により多くの者達が巻き込まれる予感がする重要な案件を話し合っているのだ、これは邪魔する訳にはいかない。


好美「一先ずデカルトさんに話を通すのが先決なんじゃない?1番の言い出しっぺは他でも無いあの人なんだからさ。」

ランバル「王様にそんなの言いづらいですよ、私はただのいち庶民なんですから。」

守「しかしこのままだとロラーシュ大臣の思うつぼですよ、何とか手を打って貰うべきだと思います。」


 善は急げと言わんばかりに好美はデカルトに『念話』を飛ばして聞いてみる事にした、そう言えばここは異世界だったなと言いたかったがよく考えてみれば2人に接点なんてあったのだろうか。


好美「デカルトさんとは呑み友なのよ、パルライさんの紹介で一緒に呑む様になったの。」


 どうやら「暴徒の鱗」の支店をダンラルタ王国に出すという話も王同士での呑みの席で決められた事の様だ、パルライが忘れていたのも無理は無い。正直、納得したくは無いが。


好美「そろそろ『念話』飛ばしても良い?あんたに構っている暇は無いんだけど。」


 「暇は無い」ってお前ら、元々卒業旅行をしに来ていたんだろ?まぁいい、暇の塊みたいなもんじゃ無いかと言いたいが今はそっとしておくのが1番だよな。どうぞ、王様にご連絡下さいませ(ただ王様本人の都合も考えろよな)。


好美(念話)「デカルトさん、今ちょっと大丈夫ですか?」

デカルト(念話)「こ・・・、好美さん!!今はちょっと手が離せないんですよ、妻に部屋の掃除をやれとしつこく罵られましてね!!」


 やはりいつの時代でも何処の世界でも女性は強い、ただ王様としての威厳は何処へやら。というか王城にいるんだから使用人にでも頼めば良いじゃ無いかと思ってしまうのは俺だけだろうか・・・、って聞こえてるみたいだな。


デカルト(念話)「私だってそうしたいんですが・・・。」

女性(念話)「何を言っているんですか、貴方の性格から考えれば使用人を頼ると自分で何もしようとしなくなるんだから早くしなさい!!お姉さん、ごめんなさいね。うちの人、ちょっと時間が掛かりますが少々お待ち頂けますか?」

デカルト(念話)「プーラ・・・、余計な事を言うんじゃない・・・、って痛ぇ!!」


 どうやら国王がプーラと呼んだこの女性はデカルトの妻、つまりこのダンラルタ王国の王妃の様だ。妻に強く頬を抓られたデカルトは再び掃除機の電源を入れて掃除を再開した。


デカルト(念話)「すみません、すぐに終わらせますので!!」

プーラ(念話)「馬鹿言ってんじゃ無いわよ、あと12部屋あるんだから早くしなさい!!」


-182 何とかなるかな-


 王族夫妻の口喧嘩(?)から数十分、やっとの思いで王宮にある部屋の掃除を終わらせたデカルトは滲み出ていた汗を拭いながら好美に『念話』を飛ばした。国王の様子からは本人の恐妻家っぽさが滲み出ていたので「鉱山下の大蜥蜴」にいた3人はため息をつくばかりであった。


デカルト(念話)「す・・・、すみません・・・。流石に愛する奥様に逆らう訳には行きませんので。」


 普段から「愛する奥様」だなんて言っていないのが何処の誰が聞いても分かってしまう、どう考えてもその場しのぎでの言動だという事が見て取れて仕方が無かった。


プーラ(念話)「私がそんな言葉で許すとでも思ったの?本当は掃除なんてはなからやる気無かったくせに。」

デカルト(念話)「いやあのね・・・・、プーラさん・・・。私だって国民の為に忙しく働いているんだからなかなか掃除なんて出来ないんですよ、その辺を考慮して頂かないと。」

プーラ(念話)「あんたね・・・、今日は1日ほぼ予定なかったはずよね・・・。本来予定してた鉱山の視察だって延期になったって聞いたから今日は暇と思うけど。」

デカルト(念話)「な・・・、何でそこまで・・・。」


 どうやら王妃には全てお見通しの様だ、これでは下手な嘘なんかつけやしない。しかしプーラも鬼ではなかった、残りの12部屋の掃除もしっかりとこなしたので・・・。


プーラ(念話)「でも良いわ、ちゃんとこの様に綺麗にしてくれたから許してあげる。」


 ただ王様を許すと言っていた王妃の右手には割り箸等にガーゼをかぶせて輪ゴムをくくりつけた有名な便利道具がしっかりと握られていたが今は忘れておこう。


プーラ(念話)「貴方、後でリビングにおいでなさいね。あ、好美さんでしたっけ?今からで宜しければうちの人へのご用事をどうぞ。」

好美(念話)「あ・・・、有難うございます。王妃様・・・。」


 改めてタオルで汗を拭いながら好美からの『念話』に対応するデカルト、やっと話が進む様なので俺も一安心だと思いたい。


デカルト(念話)「大変申し訳ありません、好美さん。それでどの様なご用件でしょうか。」


 好美はロラーシュ大臣とランバルの間にあった事について自分が話せるだけ話した、その話を聞いて発起人は頭を抱えていた。確かに原因のおおよそ半分を作ってしまったのは自分なので改めて考え直さなければならない。


デカルト(念話)「そうですか・・・、ロラーシュがそんな身勝手な行動を・・・。前回のミスリル鉱山での事件もそうですがまた頭を悩まされる事になりますとはね・・・。」

好美(念話)「デカルトさん・・・、何とかなりませんかね?」

デカルト(念話)「そうですね・・・、しかし新たに店を出すには中々土地を見つける事が出来ないでしょうし・・・。」

守(念話)「山の一部の土地を開発するのは駄目なんですか?」

デカルト(念話)「確かにその意見もアリなんですが、流石にその方法だと山の環境を崩す事になりますのであまり宜しく無いかと。」

好美(念話)「そうですか・・・、ちょっと相談しても良いですか?」

デカルト(念話)「勿論、私も少し水でも飲んできます。」


 ダンラルタ王国には「決して国内における生態系や自然の景観を損なう工事をするべからず」という昔からの習わしがあり、国民は先代からの言い伝えをずっと守っていた。当然、デカルトもその1人である。

 好美は一旦『念話』を切って3人で話し合う事にした。


好美「そうか・・・、昔からの習わしや言い伝えなら仕方ないね。」

ランバル「皆さんもお聞きしたでしょう?王様が仰った通りなんで私も元からあった建物を改装して店を出そうって考えたんです。」

守「成程ね、元々ある店を改装するとなると建設費用も浮くし景観も損なわないから一石二鳥って訳か。」

ランバル「やはり飲食店としては最大限に食材に拘りたいので費用を抑えたかったんです。」


 ランバルの意見も分からなくもない、ただ問題はそれを利用しようとしている兄のロラーシュの方だ。


好美「さてと・・・、「暴徒の鱗」の人間としては店を出したいっていう意見もあったりするけどこのままではいけないだろうし・・・。」

守「一先ず、「あの人」の所に行ってみるか?」


-183 仕方ない・・・-


 恋人達は「あの人」、つまり渚が経営する屋台があると思われる場所へと向かう事にした。ネフェテルサ王国に残した仲間達に断る事無く卒業旅行に来ていると言うのに「赤鬼」に会って大丈夫なのだろうかと聞きたくなるが、それ所ではない事態が起こってしまっているので致し方が無い。1国の王までをも巻き込んでしまっているので守は事態に収拾を付けるのが最優先だと思っていたが、好美には別の理由があった。


好美「もう!!結局水だけで何も食べれて無いじゃない!!」


 そう、空腹が限界にまで達していたのである。これ以上この大食いの「鬼」を不機嫌にする訳にはいかないという危機を感じた守は車(カペン)を走らせようとしたが、何故かピクリと動こうともしなかった。別にクラッチ動作に失敗してエンストを起こしている訳でも無い、正直言って守は訳が分からなくなっていた。


好美「おう、どうしたってんだよ。」

カペン「守はん、何をしようと考えているか大体想像が付きますけどその必要は無さそうでっせ、店の中での会話が丸聞こえでしたわ。」

守「お前・・・、地獄耳かよ!!」


 正直あの軽自動車の何処に耳があるのかこちらが聞きたい位だ。


カペン「ほら・・・、匂ってきまへんか?芳しきスープの香りが・・・。」


 敢えて聞くが、あの軽自動車の何処に鼻があるのだろうか。


守・好美「スープの香り?」


 そう言うと守と好美は社外へと出てそこら辺の匂いを嗅いでみた、山中の美味い空気に段々とスープの香りが混じり出して来た。


好美「本当だ・・・、「暴徒の鱗」のスープの香りがする!!」


 ピューアの手伝い等で店に出ている時は嫌と言う位に嗅いでいるスープの香りが今は幸せを呼んでいるように感じた好美は屋外でずっと腹を摩っていた、その光景を見た守は「助かった」と言わんばかりにしゃがみ込んだ。そんな中、2人を見かけた渚はロラーシュに頼んで「鉱山下の大蜥蜴」の駐車場に屋台を止める事にした。「これも修業の一環」と言って最近は大臣に運転をさせているらしいが、どう見ても渚が楽をしたがっている様にしか思えない。一先ずカペンの近くで降車した渚は2人のいる方に早歩きで向かった。


渚「あんた達!!こんな所にいたのかい!!皆何の連絡も来ないから心配しているじゃないか、電話も『念話』も、それに携帯にメッセージを送っても通じないからネフェテルサで大騒ぎになっているんだよ!!」


 渚の言う通りだ、特に好美はネフェテルサ王国では重要人物の1人となっているので予想通りだが王国中が騒然としていた。


好美「すみません、元の世界にいた頃に出来なかった卒業旅行をこっちの世界でしていたんです。隠すつもりは無かったんですが言い忘れてました、ごめんなさい。」


 嘘だ、思いっきり夜中にコソコソしていたじゃないか。


好美「もう、余計な事を言わないでよ!!」

渚「まぁ、見つかったから良しとするか。一応あんた達も良い大人なんだし、親離れしたくなる歳だから気持ちは分からなく無いさね。」


 渚は一安心して深く息を吐いた、そして・・・。


渚「でもね!!あんた達を見つけた事は皆にすぐ言うからね、帰ったら覚悟しな!!」

好美「すみません、ただ今はそれ所じゃないんです!!」

渚「「それ所じゃない」って、何だって言うんだい。」


 好美は渚にロラーシュとランバルの事について話せるだけ話した、そんな事を気にしていない様子の大臣は離れた場所で呑気に読書をしていた。


渚「それは弟さんが可哀想じゃ無いか、今すぐ王宮に行かなきゃね。」

男性「その必要はありません!!」


 聞き覚えのある男性の声の後、1体のコッカトリスが地上へと降り立った。


3人「デカルト国王(さん)!!」


-184 習わしを守る為-


 突如現れた国王(コッカトリス)は地上に降り立ってすぐに『人化』し、転生者達が見慣れた男性の姿へと変身した。ただつい先程まで部屋の掃除を行っていたせいか、動きやすい恰好としてピューアと同じ小豆色のジャージを着ていた。何となくだが以前にも見た様な件があった様な気がするのは俺だけだろうか、確か前回は「赤鬼(渚)」ではなく「紫武者(真希子)」だったか。


渚「あんたね・・・、一応王様なんだから外に出る前には着替えたらどうなんだい。」

デカルト「すみません、王城の者がご迷惑をお掛けしていると聞いたので急いで行かなきゃと思ってこのまま来てしまいました。」


 何よりも国民の事を大切に想うデカルトの信念の強さが故の行動に頭が上がらなかった3人、ただそんな中でも国王が来たにも関わらずにずっと読書に耽っている大臣の方に全員が視線を向けた。


デカルト「ロラーシュ、またお前は国民の方々にご迷惑をお掛けして申し訳ないと思わないのか。」


 今頃になってやっと王が来た事に気付いたロラーシュ、よっぽど好きな本を読んでいたのか、それとも仕事なんてくそくらえと思ってしまっているのかと皆頭を抱えるばかりであった。


ロラーシュ「国王様、どうしてこの様な場所に?!しかもその様ななりで!!」


 飽くまで白を切るロラーシュ、しかし国王の事を決して舐めてはいけない。


デカルト「好美さん達から聞いたぞ、弟さんがこれから開こうとしている洋食屋の開店をお前だけの都合で遅らせている上に店主としての権限を奪おうとしただと?!私はその様な事を命令した覚えはない、すぐに謝罪して開店の準備を手伝うのだ!!」

ロラーシュ「し・・・、しかし王様・・・。恐れながら申し上げます、私はこちらの渚さんの下での修業の真っ最中ですし、新しく店を造るのは流石に景観等の観点からまずいかと・・・。」


 デカルトはロラーシュをより強く睨みつけた。


デカルト「何だ、私に口答えをするのか。」

ロラーシュ「いえ、とんでもないです!!申し訳ございません!!」


 王の叱責により深く頭を下げた大臣の様子を見たデカルトは転生者達に声をかけた、その優しい口調からは王の腰の低さが伺えた。


デカルト「申し訳ありません、本人もこの通り反省していますのでお許し頂けませんか?私からもお願い致します。」


 デカルトは3人に向かって深々と頭を下げた、しかし本当に謝るべきなのは転生者達にでは無いと思うが?


好美「あの・・・、デカルトさん。頭を上げて下さい、ただとても言いづらいんですけど私達では無く大臣の弟さんに謝るべきではないでしょうか。」


 確かに好美が言っている事は正しい、1番迷惑を被っているのはロラーシュの弟であるランバルだ。


デカルト「そうですね・・・、恐れ入りますがその弟さんの所までご案内をお願い出来ますか?良かったら私の背に乗って下さい。」


 国王はそう言うと『人化』を解除して元の姿に戻り、自ら頭を下げて好美を背中へと案内した。


守「じゃあ、俺達は後から追いかけますので。」

デカルト「すみません、助かります。」


 今思えばデカルトも車に同乗すれば良いのではとツッコミを入れたかったが、やはり国王に逆らうべきでは無いのでやめておこう。好美を乗せたデカルトは大空高く飛び上がり好美の指差した方向へと直進し始めた、元の世界にいた頃の好美は重度の高所恐怖症だったが自宅の場所が場所なだけに今ではすっかり平気になった様だ。


好美「改めて見ると良い景色ですね、この自然を壊さない様に私達も頑張らないと。」

デカルト「そうですね、昔から良い物はやはりそのまま残しておくべきだという考えから「景観を損なう建物を建ててはいけない」と代々の国王に伝わっている位ですからね。」


-185 店には着いたけど・・・-


 ダンラルタ王国にて連なる山々を眺めながら国王の背で笑顔を見せる好美は美しい景色によりすっかり空腹を忘れてしまっていた、これは台風が来かねない位の事態と思われたが今はそれ所ではない。しかし、2人共に(?)今から向かう目的地における問題の当事者では無いのでゆったりとした空の旅を楽しみながらずっと笑い合っていた。ただ転生者達、いや住民達にとっての貴重な経験は長くは続かなかった。


守「王様、こちらです!!非常に申し上げづらいのですがずっとグルグルと回ってないで降りて来て頂けませんか?」


 いつの間にか目的地についていた事に気付いていないフリをしていたデカルトは後ろを追う守達が来るまで好美に特別サービスを行っていた、どうやら王城で延々と家事をこなしていた為に外で遊びたかった様である。


デカルト「すみません、お気遣い感謝致します。すぐに降り・・・、へ?」


 突如好美に背中を数回タップされた国王は好美へ耳を貸す事にした。


好美(小声)「あの・・・、敢えてずっと旋回を続けて頂けませんか?もう少しだけ遊びません?」

デカルト(小声)「貴女も悪いお方ですね、彼氏さんを無視しちゃって大丈夫なんですか?」

好美(小声)「折角の旅行なんでもう少しだけ楽しみたくて、駄目ですか?」


 好美の質問に優しく微笑みながら返答したデカルト。


デカルト(小声)「ハハハ・・・、好美さんが良いなら私は構いませんよ。それにしても折角のご旅行中に私共の大臣がご迷惑をお掛けして申し訳ありません、お詫びと言ってはなんですがサービスさせて頂きますね。」

好美(小声)「私自身は大丈夫です、ランバルさんには悪いですけどお陰でそれなりに楽しませて貰っていますので。」


 そう言うと速度を上げて空中を旋回するデカルト、何処からどう見ても好美の悪戯心による行動だという事が分かる。地上から2人の様子を見ていた守はため息をつきながら好美に『念話』を飛ばした、元の世界にいた頃と合わせたらこういった放置プレイは何度目だっただろうか。


守(念話)「好美、勘弁してくれよ・・・。それにその人国王様だろ?大丈夫なのか?」

好美(念話)「良いじゃん別に、本人が「良い」って言ってくれたんだから。」

守(念話)「だからって他の人を待たせたら駄目だろ、特に渚さんに変なイメージを持たれたらまずくねぇか?」


 時すでに遅し、守が1人頭を抱える横で噂の渚も空中の2人の様子をずっと見ていた。


渚「守・・・、あんた達どんな関係なんだい?好美ちゃんって昔からあんな感じだったのかい?遊び人と言うか何と言うか・・・。」

守「うん・・・、遊び人では無いと思いたいんだけどあの様子を見てしまうと否定出来なくなってくるな・・・。まぁ、大学に行ってた頃からそうだったんだけどまだ子供っぽさが残っているんだよな。でも俺からすればこっちの世界でも変わらずに元気でいてくれただけで嬉しいんだよね。」

渚「あんたも語るね・・・、というか何時(いつ)からコーラなんて持っていたんだい?」


 『アイテムボックス』の能力が存在しているこの世界では十分あり得る話なのだが、何となく話を繋げる為に敢えてツッコミを入れる渚。


守「ずっと運転してたから疲れちゃってさ、一応糖分補給も兼ねて冷たいコーラが欲しくなっちゃって。」

渚「ただあんた・・・、よっぽど喉が渇いてたんだね。やたら減りが速いじゃ無いか。」

守「いや、おれはまだ1口しか飲んで無いけど・・・。」


 守が右手に持っていたコーラを確認すると既に中身は半分に減っていた、「まさかな・・・」と思いつつも正直違うと信じたかったが・・・。


守「やっぱり好美か・・・。」


 そう、好美が右手だけをコーラの近くに作った異空間から出してコーラを飲んでいたのだ。バレない様にする為に少しずつ飲んで守の右手に戻していたらしいが・・・。


守(念話)「好美・・・、自分のやつを飲めよ。と言うか早く降りて来いって。」


 いや、ツッコむのそこですか?

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