7. 異世界ほのぼの日記3 131~135


-131 母だからが故に、そして男女だからが故に-


 恋人達が筆頭株主による懐かしい味での食事を楽しんでいる間、真希子は使用していた私物である寸胴を『アイテムボックス』に入れながら隣で皿洗いをしていた店主に感謝していた。


真希子「突然すまないね、営業中だったのに無理なお願いして。」

店主「構いませんよ、真希子さんに逆らえる人間なんてあまり見た事ないですからね。」

真希子「あらま、人間でも無いのに言ってくれるじゃないか。」

店主「あれ?バレてました?」

真希子「そりゃそうさね、私には何でもお見通しだよ。」


 こう言いながら真希子は店主の右手を手差しした、気持ちがほぐれていたのか『人化』が解けかけていたので元々の姿が露わになっていた。どうやら店主は出稼ぎにきたプラチナドラゴンの様だ。


店主「おっと、まだ店を閉める訳にはいかないのにまずいな。」


 慌てて『人化』で両手を元に戻した店主は改めて皿洗いに戻った、先程までピークタイムだった様でシンクには食器が山積みとなっていた。


店主「あの・・・、真希子さん。1つお聞きしても宜しいでしょうか。」

真希子「何だい、私とあんたの仲じゃないか。何でもお聞きよ。」


 数年程前からこの店に通い詰める真希子はすっかり顔馴染の常連となっていた、店に来る度に結構な量を注文するので店主も顔を覚えていたのだ。


店主「真希子さんは・・・、どうして2人が当店に来るって分かったんですか?」


 この世界でなら普通は『察知』を使用したと言いたい場面ではあるが、真希子は別の理由で踏ん反りがえりたかった様だ。


真希子「そりゃああそこにいるのは私の息子だよ、母なら何でもお見通しって奴さ。」


 そうは言っているがこの食事を提案したのは好美だったはず、まぁ気にしないでおくか。


店主「そう言えば寸胴の中に残ったお料理はどうされるんです?」


 運がよければ自分もお相伴に預かる事が出来ると踏んでいた店主。


真希子「家に持って帰って食べるつもりだよ、今から弟子が来るんだよ。」

店主「お弟子さんって拉麵屋のピューアさんですよね、あの人の寿司も美味かったのを覚えていますよ。」

真希子「あの子に料理を教えたのは私だよ、あの子は自慢の弟子さね。じゃあね、今日はありがとうね。」


 そう言うと『瞬間移動』で家に帰ってしまった、その数分後に厨房の外から守が声をかけてきた。


守「母ちゃん?あれ?お代わりを貰おうとしたんだけどな。」

店主「真希子さんなら今お帰りになりましたよ、きっとお2人に気を遣われたんでしょう。」

守「そうですか、それにしても母が無理を言ってすみませんでした。」

店主「構いませんよ、今度は当店の料理も食べて見て下さいね。」


 笑顔の店主に見送られて店を後にした恋人達は街の中心部に向かってゆっくりと歩いて行った、涼し気な夜風が2人の気持ちを落ち着かせていた。


好美「ねぇ、守。今から行きたいところがあるんだけど。」

守「今更何を言われても断れないだろ、何処へ行くつもりだ?」

好美「フフフ・・・、内緒。」


 好美は笑顔で守の腕を引いて目的地へと導いていった、着いた先はまさかのお風呂山にある銭湯だった。露天にでも入りたくなったのだろうか。


好美「ねぇ、久々に一緒に入らない?」

守「おいおい、言えでも別々なのに冗談でもそんな事言っちゃだめだろう。」


 恥ずかしくなって顔を赤らめる守を横目に、好美はあるポスターを指差した。


好美「ほら、あそこ見てみてよ。」

守「何々・・・、数日前に混浴露天風呂が出来たのか。こりゃびっくりだ。」


-132 浴場-


 いくら「何でもありの世界」だからって公共の場で男女が同じ釜の湯に浸かるなど許されるものなのだろうか、そう守が店に入りながら疑問に思っている時に番台にいた受付担当にまさかの言葉を発した。


好美「予約してた倉下です、そろそろ大丈夫ですか?」

番台「勿論です、お2人のお越しをお待ちしておりました。」


 守は玄関先のポスターをしっかりと見ていなかったので気付いていなかった様だが、どうやら混浴露天風呂は予約制らしい。


守「おいおい、ナルリスさんのレストランで言った通り今日俺が真っ直ぐに帰ろうとしてたらどうするつもりなんだよ。」

好美「もう・・・、何年守の彼女をしてると思ってんの?守の考えなんてお見通しに決まってんじゃない。」


 好美が死んでからのブランクが皆無だったかの様に思える位の記憶力に驚かされるのはきっと守だけではなく俺も同じだった、しかしこの世界に来てから結構な年月が経っているのに守の性格をはっきりと覚えているとは・・・。


好美「当たり前でしょ、守みたいな変態はこの世界にいなかったもん。」

守「おいおい、流石に勘弁してくれよ。」


 確かにこの世界の住民が守の様な性格を露わにした場面を見た事が無い、まぁ平和なままに話を進行していきたいという気持ちがあったから出さなかったと言うのが正解だったのかもしれない(実際「2」の1話序盤で既に光とナルリスの間にガルナスが産まれていたので察してもらえるだろう)。

 俺がぽかんとしている間に2人は露天風呂に入っていた、しかもビール片手に(どんだけ呑むつもりだよ)。

 ※健全な物語進行の為、2人には水着とタオルを着用してもらっています。


好美「はぁ・・・、やっぱり外の風に浸りながらのひとっ風呂はたまらないね。」

守「確かにそうだけど家の風呂で十分じゃないか?」


 確かに高層マンションの最上階が故に作る事が出来た露天風呂があるというのにわざわざお風呂山に行く必要があったのだろうか、不思議で仕方が無かった守は湯船のお湯で顔を洗った。


好美「ほら・・・、うちのお風呂って私用と守用で別々じゃない?たまには良いかなって思ってさ、折角一緒に住んでいるのに・・・。」


 守がちゃんと気付いているかどうか分からないがどうやら好美はずっと寂しかった様だ、きっと秀斗と会えなくなってしまった頃の美麗の様に。

 ただ1つ言える事と言えば、自宅で別々になる様に露天風呂を設置したのは確か好美本人だったはず・・・。


好美「何よ、あれ結構な金額したのに自業自得って言う訳?」


 いや、そんな事は申しておりませんです。何かすんません・・・。


守「まぁ、好美が良いなら別に良いんだけどさ・・・。」


 おいおい、顔が赤くなっているぞ。今更ながらに初々しさを出してんじゃねぇよ。


守「それで?本当に露天風呂に入りたかっただけなのか?」

好美「どういう意味?それ以外の理由が必要だったの?」

守「別に・・・、必要無いけど・・・。」


 ゆっくりと湯を楽しむ守の横で湯けむりをあげる浴槽に顔を埋める好美。


好美「良いじゃない、2人っきりで話したかったんだもん。」

守「そ、そうか・・・。何か悪かったな・・・。」


 豚舎での仕事や王城での夜勤、そして自らのマンションの1階部分の店舗の経営によりなかなか取れなかった2人の時間を好美は大切にしたかったのだ。


好美「ねぇ守、私達これからどうしようか・・・。」

守「それ、どういう意味だよ。」


 突然の恋人の発言に嫌な予感がする守、まさかな・・・。


-133 欲情-


 温かな間接照明と優しい月夜の光のみが照らし、正直貸切(?)と言っても過言では無い露天風呂の一角で守は焦らされていた、何となくだが好美の発言に嫌な予感がして仕方なかったのだ。今までの自分の行動を顧みていつかは来るであろう瞬間が来たような気がして仕方なかった、それが故に守は好美から見えない様に湯船の中で拳を強く握った。


守「な・・・、何だよ・・・。どういう意味だよ・・・。」

好美「ねぇ、日本にいた頃の事を覚えてる?ほら、私達がまだ大学生で出逢ったばかりだった頃の事。」


 恋人の発言から最悪の事態を免れた守は正直ホッとしていた、ただ過去に今の様な場面に遭遇した事があっただろうか。

 守はゆっくり目を閉じて生前の出来事を必死に思い出そうとした、好美が死ぬ前だから結構前の事だったはずだが・・・。


守「えっと・・・、何があったっけな・・・。」


 守は広い露天風呂の中で1人考え込んでいた、おいおい好美、このままだと守が湯冷めしちゃうぞ。


好美「大丈夫よ、『状態異常無効』を使えば問題ないじゃない。」


 そう言えばそんな能力あったね、大変失礼いたしました・・・。


好美「何さ、元々はあんたが考えた能力じゃないのよ。忘れるって事はそこまで思い入れが無かったって事じゃないの?」


 いや、そんな事は無いですよ・・・。ちゃんとノートに書いてますし・・・。


好美「という事は、いちいちノートを見なきゃ思い出せないって訳?」


 くっ・・・、仕方ないだろ・・・。忘れやすい性格なんだから許せって、夜勤族が思った以上に忙しいのはお前も分かるはずだろうが。


好美「確かにね、最初はみんなが働いている傍らで昼から堂々とお酒が呑めるっていい気分になってたけどそこまで甘くない世界だもんね。」


 そうだぞ、俺が夜勤の人間じゃなかったら今頃お前は存在していなかったかも知れないから感謝しろよな。


好美「何よあんた、今はそう言う問題じゃないでしょ。それで?守は私が何をしたがっているのか思い出せた訳?どうしたいか分かった?」


 全くもって関係無い話で茶を濁し過ぎた様だが、時間は稼げていたはずだから守も思い出せたんじゃないのか?なぁ、守君?


守「い・・・、いや・・・、えっと・・・。」


 必死に思い出そうとする守の傍らから状況を楽しんでいる様に思われる女性の声が・・・。


女性「あんた達、楽しそうにしてんじゃない、私も混ぜなさいよ。」

守「あ・・・、光おばさん!!」

光「こら!!「光お姉さん」だろうがー!!」


 レストランで2人が真希子からの手紙を読んだが故に光の言った「お姉さん」という言葉の意味が重くなったと感じた守、数時間程前に発覚したからって腹違いの姉を「おばさん」と呼ぶのは俺も流石にまずいと思うのだが・・・。


守「と言うよりここって貸切だったはずだよな、好美が「2人で」予約して・・・。」

好美「予約はしたけど人数は指定してないもん。」


 確かに好美の口からは「2人で予約」という言葉は全く出なかった上に、守は今自分が何処にいるのかを忘れていると言うのか?そう言えばこんな件、前にもあった様な・・・。


光「守・・・、ここは異世界よ。『瞬間移動』を使えば容易に出来るに決まってんじゃない。」

好美「そうそう、何でもありの世界なんだからこう言う事もありなんだよ。」


 好美はそう言うと守の顎を摘まんで無理やりに唇を押し付けた。


光「あらま、流石に何でもありだと言ってもこう言った場面は見ちゃ駄目だわね。」


-134 時間はある?それとも無い?-


 館内放送で「閉館30分前」が知らされたのでずっとキスをしていた2人は浴槽から出て浴衣を着た後にロビーの自販機で瓶入りのコーヒー牛乳を飲んでいた、どうやら熱い風呂に入った後に冷えた牛乳が好まれるのはこの世界でも変わらない様だ。と言うかあんたらずっとキスしとったな、お熱い様で。


好美「何ぇ、光さんはすぐに行ったのにあんたはずっと見てたんけ?趣味悪ぅないで?」


 しゃあないじゃろ、見とうなくても話の進行の為には見ざるを得なかったんじゃ。ただあんたらの事じゃけんてっきりビールを買うんかと思ったけど、さっきまで呑んだけん牛乳にしたんぇ?と言うかあんたらお熱いのはええけんどずっと入っとったんけ、のぼせても知らんじぇ。


好美「余計なお世話じゃわ、我がら2人共長風呂が好きやけんええの。」

守「おい好美、何語喋ってんだよ・・・。」

好美「ごめんごめん、いつもの「アイツ」が阿波弁で話しかけて来たからつい・・・。」


 登場人物に「アイツ」と呼ばれる俺(作者)って一体・・・、まぁそれは良いとしてどうだ、こっちの世界の牛乳は美味いか?ラベルを見た感じはダンラルタ王国にあるバラライ牧場の物みたいだが。


好美「そうだね・・・、日本と変わらないかな。何となく懐かしくて嬉しいけど。」

守「あれ?日本にいた時、俺達一緒に温泉なんて来た事があったか?」

好美「いや、そういう訳じゃ無くて徳島にいた頃によく飲んでいた牛乳に後味が似てたから。それと守がバイトで会えない時、よく桃や美麗達と入りに行ってたのよ。誰だって癒しが欲しい時ってあるでしょ、それに・・・。」

守「それに・・・?」


 顔をポカンとさせる守をよそに、懐から1枚の紙切れを取り出した好美。そこには「守と再会出来たらやりたい事リスト」と書かれていた、表面上では守の転生(いや多分転移)を拒否している様に見せかけていたが心中ではこの世界での再会を望んでいたらしい。よく見るとリスト内には「一緒に思い出の味(ハヤシライス)を楽しむ」や「混浴風呂に入る」、そしてまさかの「出逢ったばかりの頃の様なキスを交わす」とあった。おいおい守、羨ましいじゃねぇかよ、さっきのキスの味はどうだったんだよ、え?


守「大学で初めて交わした時みたいに・・・、甘かった。」


 恥ずかしそうに答える守の横で顔を赤らめながら学生時代を思い出した好美、2人の表情には何処か初々しさがあった様な無かった様な・・・。


好美「確か私の「初めて」を奪った時もそう言ってたよね、あの時教室で同じ種類のボールペンが同時に落ちたのって本当は運命(いや必然)だったのかも。」

守「何言ってんだよ、俺なんて浜谷のおっちゃん達が経営してたマンションの前で好美の事を初めて見た時から運命を感じてたんだぞ。」

好美「「浜谷のおっちゃん達」・・・?」


 聞き慣れない名前だったが必死に何かを思い出そうとした好美。


好美「もしかして私が住んでた「ニューハマタニ」の?」

守「そう、もしかしたら「最悪の高校時代」におっちゃん達が俺達の元からいなくなって結愛や光明と一緒に義弘を潰した事は今思えばこうやって好美に出会う為の布石だったのかも知れないなってなっちゃってさ・・・。」

好美「ねぇ、皆の言う「最悪の高校時代」って何?」


 好美は大学進学をきっかけに守達のいた街に来たので、元の世界の貝塚学園高校(元西野町高校)で起こった事件の全容を知らない。


守「話せば長くなるぞ、良いのか?」


 少し躊躇いながら質問した守。


好美「大丈夫、時間ならたっぷりあるって。」


 いや好美さん、それがもう時間無いんですよ。番頭さんが近づいて来てますけど。


番頭「お客様恐れ入りますがもう閉館のお時間なんです、あと浴衣をお返し頂けませんか?」


 すっかり時を忘れてしまっていた2人、そんな中好美は先程のリストを取り出してある文字を指差しながら笑った。守が覗いてみると「守と大学の卒業旅行をする」とあった。

 そう、好美が本当にしたかったのは元の世界で叶わなかった卒業旅行に行く事だった。


-135 昔話-


 番頭に浴衣を返すのが面倒になった2人は銭湯から数歩程度の距離の所にあり、同じ者が経営する旅館へと向かった、ここなら今自分達が着ている浴衣のままでも行動できるし『アイテムボックス』や『転送』を使えば脱衣所の衣服は何とかなるはずだ。好美達がロビーに声を掛けた時には殆どの客室が予約客を中心に埋まっていたが、数部屋程空室があったのでその1部屋に泊まる事にした。


受付「あれ?好美ちゃんじゃない、今日は夜勤じゃないの?」

好美「有給取ったのよ、ちょっと色々あってね。」


 話の流れからして、どうやら2人は知り合いの様だ。


受付「あら?もしかしてそちらが噂の彼氏君かしら。2人で1部屋だなんて羨ましいじゃない、ウフフ・・・。」

好美「何変な想像してくれてんのよ、昔から全然変わらないんだから・・・。」

受付「それにしてもすぐ近く(?)なのに帰らなくて良いの?それに好美ちゃんの家に比べたらうちの部屋だなんて月とスッポンよ。」


 「月とスッポン」なんて言葉をこの世界のみで生きているはずの受付の者が何処で覚えたのだろうか、多分転生者達の影響と思われるが。


好美「たまには良いかなって思っただけよ、ほら、よくある気分転換ってやつ。」


 それに酒に酔った男女2人が月夜の照らす街の中心を歩いていると正直言って目立ってしまう、まぁ2人の場合酔いは殆ど冷めていたし『瞬間移動』や『状態異常無効』を使えば何とかなるが、酒の影響でまだ頭がまともに回らなかった様だ。

 ロビーでの記帳を終えて2人は案内された客室へと入った、この旅館は全客室に露天風呂が付いており、備え付けの冷蔵庫の中にはビールやジュースが数本ずつ常備品として入っていた。

 好美達は先程の話の続きをする為にまたもやビール片手に露天風呂へと入って行った、結局宿に泊まって入るなら銭湯は行かずに最初からここに来れば良かったんじゃないか。また折角夜風や牛乳でクールダウンを行い、酔いを醒ましたというのにまた呑みながら入るなんてのぼせる率が高くなっている様な気がするのは俺だけだろうか(こちらでも健全な物語進行の為に水着等を着用してもらっています)。


好美「良いじゃないの、元々ここに泊まる予定じゃ無かったんだし「旅は道連れ」って言うでしょ。」


 あの・・・、その言葉そう言う意味で使う物じゃないと思うんですけど。まぁ、良いか。

取り敢えず守、あまり乗り気じゃ無いだろうけど「あの事」を話してやれよ。


守「分かってるよ、じゃあ何処から話せば良いかな・・・。」


 守は思い出せる限りの事を好美に話そうとしたが実は少し抵抗していた、何故なら「最悪の高校時代」にはあの圭の存在があったからだ。この事に関しては好美と和解は出来ているはずなのだがやはり好美の心の奥底には守との仲を険悪にした原因を作った圭への恨みが残っているのかも知れない。


守「好美は日本の貝塚学園で何が起きていたのか知っているかい?」


 一時(いっとき)は義弘の圧力による報道規制がされていたが、前社長の逮捕によりニュースとしてテレビに流れて日本中の茶の間を驚かせていた。


好美「結愛のお父さんは学校を滅茶苦茶にして警察に捕まったって事件だよね、確か学校がまるで刑務所みたいな場所だったって聞いたよ。」

守「ああ、もう既に分かっていると思うけど俺や正はその貝塚学園の卒業生なんだ。当時俺達の母校は元々「西野町高校」っていう名前だったんだけど、その学校を結愛の父・義弘が買い取って理事長になったんだ。」


 守は覚えている限りを好美に伝えた、毎日の学校帰りに寄っていた想いでの店である「浜谷商店」が突然消えてそこに貝塚家の大きな豪邸が建った事や学校の周囲に大きな外壁が建造されて外に出る事が出来なくなった事、そして・・・。


守「多くの血が流れ、沢山の生徒(友)が死んでいった。義弘は兎に角成績主義で、成績が下の方の生徒達を自分の手を汚す事無く殺していったんだ。そこで立ち上がったのが今の社長である結愛や多くの株主だった訳、カメラを壊した時の結愛は凄かったな・・・。」

好美「という事はその頃から結愛ってあんな感じだったんだね、納得出来るかも・・・。」


 守は寒さからか、それとも心配する必要も無いはずの義弘による恐怖からか体を震わせていた。と言うか2人共、そのままだと本当に風邪引くから中に入れ。

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