7. 異世界ほのぼの日記3 91~95
-91 遺伝なの?-
転生者達が談笑を続け、オーナーシェフが行方を眩ませている中、女子高生達は空腹に身を任せて目の前の料理をおかずに白飯を進めていた。その光景を初めて見た美麗はあからさまにドン引きしていた。
美麗「好美、あの子達は大食いの選手なの?こっちの世界でもギャルは大食いな訳?」
とある大食いタレントの影響なのか、美麗の脳内では「ギャル(と言うより女子高生達全般)=大食い」という等式が生み出されていた様だ。
好美「おや・・・、そう言う訳じゃ無くて何と言うか・・・。肉親の影響ってやつ?」
確かに、ガルナスが大食いなのは光の影響(遺伝?)と思われるが、メラの場合はどうだろう。確かに本人の姉であるニクシーのピューアは大酒吞みであるが、それは未だに未成年であるメラの食欲に関係するのだろうか。
ただ好美の心中を察したのか、隣で秀斗と酒を酌み交わして顔を赤くしていた真希子が会話に入り込んでいた。
真希子「好美ちゃんったら何言ってんだい、簡単じゃないのさ。あの2人の実家がトンカツ屋だからだよ。」
真希子はピューアと出逢った時の事を思い出していた、ダンラルタ王国にある実家に帰ろうとしたが道に迷ってネフェテルサ王国に来てしまったピューアを愛車で送り届けた時の事だ。
真希子(当時)「本当にこの店なんだね、確かにテレビで言ってた店だよ。」
ピューア(当時)「昔はこんなに人気じゃ無かったんですけどね、少し前に父が独断で提供し始めた料理があっという間に有名になってしまった様で・・・。」
声(当時)「おい、そこで何してんだ。」
その時、後頭部を軽く搔きながら語る娘を見かけて声を掛けた男性がいた。一応『人化』していたが見た感じから種族はマーマンだろうか、そこは流石異世界と言える。男性は当日の残りの営業で使用する為に店に運び込もうとしていた米をゆっくりと降ろして続けた。
男性(当時)「おいお前、銀行員の仕事はどうした?まさか辛くなったから逃げて来たんじゃないだろうな。」
ピューア(当時)「と・・・、父ちゃん・・・。」
そう、声を掛けて来たのはこの店の店主でピューアの父であるメラルークであった。どうやら、貝塚学園を卒業してすぐの頃に親(と言うよりメラルーク個人)の反対を押し切って銀行員になると家を出た娘を未だに許してはいない様だ。
メラルーク(当時)「仕事が上手く行かないからってここに縋ろうなんて甘い考えを持つんじゃないぞ、それなりの覚悟があるから家を出たと父ちゃんは思っているんだから簡単に家の敷居を跨げると思うな。」
ピューア(当時)「待ってよ、いつもの里帰りじゃない。」
メラルーク(当時)「里帰りの時期には早すぎるだろう、それに他の人の迷惑をかけてまで帰って来る馬鹿がいるのか。」
ピューア(当時)「父ちゃん、この人は店の豚カツを食べに来ただけよ。言ったらお客さん、私はこの人のご厚意で車に乗せて頂いたの。」
メラルーク(当時)「そうだったのか・・・、うちのだらしない娘がすみません。ご覧の通り他所行きの服を持っていませんで、恥ずかしい位ですよ。」
真希子(当時)「何を仰っているんですか、娘さんが働いておられる銀行は3国内でも大企業の1つと言われる会社じゃないですか。ご立派に育った方だと思いますけど。」
メラルーク(当時)「お心遣いありがとうございます、娘を連れて来て下さったお礼にサービス致しますのでゆっくりしていって下さい。」
店内に入ると、数組の客が食事を楽しむ中で隅っこの席に座り空になったご飯茶碗を幾重にも重ねた横でひたすらに食事をする制服姿のマーメイドがいた。本人の手元にはまだ豚カツが数切れ残っている、どうやらまだおかわりをするつもりらしい。
そのマーメイドは里帰りをしたピューアに気付いて白飯を口に含んだまま声をかけた、どうやらそのマーメイドが妹のメラの様だ。
メラ(当時)「あ、お姉ちゃんだ。お帰りなさい。」
ピューア(当時)「あんた・・・、相変わらず食べてばっかじゃないの。何で太らないのか不思議で仕方ないよ、偶には運動も兼ねて店を手伝ったら?」
メラ(当時)「手伝ったからお腹空いちゃったの、これでもまだ少ない方なんだから。」
真希子(当時)「それが・・・、少ない方なのかい・・・?」
メラの隣には十数杯分の御飯茶碗が積まれていた、この後の皿洗いは確実に地獄だ。
-92 副店長にとっての憧れの存在は食い逃げ犯?-
賑やかな宴会が続き、女子高生達がひたすらに箸を進めていく中、調理場でサブシェフと共にずっと調理を続けていたナルリスには1つ不可解の事があった。
ハーフ・ヴァンパイアである娘のガルナスと同級生のメラが以前から大食いというのは変わっていない、むしろ食のペースが速くなっている(よく言えば成長していて、悪く行ってしまえば金のかかる様になってしまっている)のだ。まさかと思ったが2人で大食い同好会でも結成して日々鍛錬を続けているのだろうか、そうでないと早食いとしても成長してしまっている根拠が産まれない(まぁ、ガルナスに至っては光からの遺伝だと思われるが)。自らの店の周囲を中心に飲食店等をぷらぷらと当たってはみたが、何処の店も大食いのチャレンジメニューなんて出してもいない。
ただガルナスは学校の陸上部に所属していた事をも思い出した、日々厳しい練習が放課後から数時間の間続く中で大食いの練習をする時間なんて取れるだろうか。
そんなこんなで父が頭を悩ませているのを横目に娘達はどんどん空いた皿を重ねていった、正直アルバイト1人では皿洗いが追いつきやしないのでタイミングを見つけてはロリューが手助けに入る様になっていた。
ロリュー「無理しなくても良いからな、ちょこちょこ水分摂ってくれよ。」
流石にどんなに忙しい状況でも「無理をしろ」だなんて人として言える訳が無い、と言ってもロリューは『人化』したケンタウロスなんだが。
アルバイト「ロリューさん、すみません。本当に助かります。」
ロリュー「なぁに、元々休みだったのに無理やり入って貰って申し訳なく思っているのはこっちの方さ。後でアイスでもご馳走させてくれ。」
アルバイト「はい!!」
ロリュー「お前、こんな時だけは良い返事だな。」
バイトの返事が良いのは分からなくもない、高く昇った日の光が窓から差し込む調理場はずっと火を使っていたが故に室内温度が40度を超えてしまっていた。正直ナルリスもロリューも調理と汗拭きのどちらを優先すべきか分からなくなっていた、この状態でのアイスは何よりのご馳走だと言えるだろう。
そんな中、真希子にはこっちの世界に来てからずっと疑問に思っていた事が有った。
真希子「ねぇ、ずっと思っていたんだけどこの世界って妖精とかっていないのかい?」
メラ「えっと・・・、姉は一応ニクシーですけど・・・。」
確かにニクシーは人魚や妖精の一種を呼称する時によく使われるが、真希子の言う「妖精」とは全くもって別物だった。
真希子「ほら、フェアリーとかピクシーとか、小さくて可愛いのがいるイメージがあるんだけどね。」
その時だ、女子高生達が一心不乱に食事を続けるテーブルの方から女の子の声がした。声色からはガルナスやメラと同い年かと推測された。
声「おばさん、小さすぎて悪かったね。」
真希子「誰だい、ご挨拶な子だよ。それに「おばさん」じゃなくて「お姉さん」だろ。」
少し怒りかけている真希子を必死で抑えようとするガルナス。
ガルナス「真希子さん、悪気があって言った訳じゃ無いと思うので落ち着いて下さい。ほら言ったじゃない、その大きさだから見つからなくても当然だから姿を見せてあげて。」
ガルナスの言葉が終わった瞬間、女子高生達の間にぼんやりとだが光が出始めた。やがてその光は人型に変わりどんどん大きくなっていった。それから少し経って光の中から2人と同じ制服を着た女の子が出て来た。
ガルナス「お気持ちはお察しします、この子は友人で妖精(フェアリー)族のピクシーであるホル・マイヤーって言うんですけど食事代を浮かせたいからって小さいまま見つからない様にしていたそうなんです。もうホル、あれ程駄目だって言ったじゃない。」
待ち望んでいた妖精の登場に空いた口が塞がらない真希子。
真希子「こりゃたまげたよ、でもね・・・。」
すぐに冷静になった真希子、流石は店の副店長で大企業の筆頭株主。
真希子「お代はちゃんと頂きますからね。」
ホル「はーい・・・。」
ガルナス「もう全く・・・、馬鹿な事考えるからよ。」
-93 妖精族の昔と今-
副店長の真希子が何とか冷静さを保とうと必死にしている横で、ひたすら給仕の仕事をしていたミーレン少し興奮していた。実は貝塚学園魔学校大学部に通っていた頃、学内の図書館でずっと妖精族についての本を読み漁っていたので本人にとっても憧れの存在だと言えたのだ。
ただこのダーク・エルフが読んでいた書物には、「古くから妖精族の者達はダンラルタ王国(若しくは外界)の山中に籠り、決して人前に姿を見せない」と書かれていた上に、その書物を参考に卒業論文まで提出していた。
しかし、ウェイトレスの目の前に本物のピクシーがいる、しかもガルナス達と同じ制服姿をしているので何の違和感も感じさせない。『人化』した妖精は堂々とした姿で目の前にいるのだ、そんな状態で落ち着いて仕事が出来る訳が無い。
プルプルと震えるミーレンを見かけた真希子は丁度隣の椅子が空いていたので座る様に促した、勿論ナルリスの許可を得た上でだ(と言うよりこの店で真希子に逆らえる人物などいないのだが)。
真希子「あんた、どうしたんだい?さっきから顔色が悪いじゃないか、ほら、水でも飲んで落ち着きなさいな。」
学生時代に研究していた事が総崩れしそうになっているミーレンは真希子からグラスを受け取ると、中に入っていた水を一気に飲み干した。一応冷房は利かせていたつもりではあったが、室内温度の高さが手伝って喉がずっと乾いていた様だ。
ミーレン「すみません・・・、本物の妖精族の人を見るのは初めてだったんで驚いてしまって。」
真希子「何言ってんのさ、ガルちゃんだってこんなに冷静になっているというのに。」
ガルナスやメラについては冷静になっているというよりただひたすらに眼前の食事に集中していただけだと思われる、その上いつも学園で会っているので今更どうしたと言わんばかりだ。
ミーレン「いやですね・・・、一生会えないと思っていたんでうれしくてつい・・・。」
2人の会話に口を挟んで来たのは『人化』して食事を再開したピクシー本人だった。
ホル「あの・・・、それっていつの時代の事を言っているんですか?」
ミーレン「確か・・・、あの時呼んでた書物には今から丁度700年程前の事だって書いてあったけど。」
ウェイトレスの言葉を受けてため息をつくホル。
ホル「やはりですか・・・。」
ずしんと肩を落とす様子から見るに、もう既に慣れてしまった(と言うより呆れてしまった)パターンの様だ。
ミーレン「「やはり」って?」
ホル「それね、私のおばあちゃんがまだ小さかった頃の事なんですよ。」
真希子の想像のはるか上を行くスケールの会話から、どうやら妖精族もエルフと同じで長齢種の様だ。
ホル「その頃は今みたいに決まった所に家を持たず、襲われない為に木の枝や草むらに息を潜めて暮らしていたらしいんです。ただ私のお母さんの代から重い荷物を持ちながらの長距離の飛行が困難だと言い始めた人たちが増えちゃったので今みたいに他の種族の方々に紛れて(と言ったらおかしいかもだけど)生活する様になったんです、今でこそ種族関係なく平和で仲良く暮らしていますが昔はドラゴンやグリフォンによく襲われていたので仕方なかったんですよ。」
真希子「そうかい、嫌な事を思い出させて悪かったね。」
ホル「いえ、私が産まれた頃にはこっちでの生活が普通でしたから大丈夫です。」
真希子「じゃあ責めて、おばあさんに会わせてはもらえないかい?貴重なお話を聞いて見たくてね。」
ホル「あの実は・・・、私もあんまり会った事無いんです。」
真希子「何でだい?まさかまだ昔みたいに?」
祖母が未だに他の種族を恐れているのかと思われたので真希子は思わず心配してしまったが、ホルの答えは意外な物だった。
ホル「いえ・・・、年中クルーザーでシャンパン片手に遊びまくっているらしいんですよ。私も両親から聞いた話なんですけど、株などで大儲けしたらしくて。」
真希子「何だい、それ!!心配して損しちゃったじゃないか!!」
-94 真面目な無職と不真面目な店長-
ガルナス達の新たな学友の出現に湧きあがる店内の傍らで、好美は顔を赤くしながらも少し前から気になっていた事を聞いてみる事にした。
好美「美麗、そう言えば新しい仕事はいつから始まるの?結愛は何も言ってなかった訳?」
正直、泥酔寸前の状態で仕事の話なんて出来るのだろうか?日を改めて素面の時に聞いた方が良いのではないかと思うのは俺だけだろうか。
好美「何え、おまはんみたいに毎日深酒ばっかりしとる阿呆に言われたくないんじゃけど。」
仕方ねぇじゃろ、呑んどらんと夜勤なんてやっとれんのじゃ・・・、って今は我がじゃのうて美麗の話ちゃうんけ。
好美「ほうじゃほうじゃ、わせとったわ。」
もう・・・、我がらが2人共阿波のもんじゃからって皆の前でいきなり阿波弁出したら混乱するじゃろうに。
美麗「ねぇ好美、さっきから何訳分かんない事言ってんの。」
好美「大丈夫、気にしないで。それで?結愛は何も言ってなかったの?」
美麗「実はこの前ね、結愛に電話してみた時なんだけどまだ社屋の建設と車の手配が完了していないんだって。それが終わるまでは何処かでバイトしててって言われたんだけど。」
好美「じゃあ、うち(「暴徒の鱗」)でバイトする?確か・・・、昼の従業員不足で人手欲しがっていたはずだから聞いてみるよ。「松龍」にいたんだもん、美麗なら大歓迎してくれるはずだよ。」
好美は急遽店長のイャンダに『念話』を飛ばした、まだ忙しくなる時間帯ではないはずなのだが全くもって返事がない。
好美「まさか・・・。」
好美は嫌な予感がしたので、代わりに副店長のデルアに聞いてみる事に。
好美(念話)「デルア、イャンダが今どうしているか分かる?」
デルア(念話)「イャンダ?さっき店にはいたけど、何分か前から見かけないな。」
好美「やっぱりか・・・、(念話)ごめんねデルア、後は本人に直接聞くわ。」
デルア(念話)「だったらついでにすぐに戻る様に伝えてくれるかい?野菜の積み下ろしで人手が欲しいんだよ。」
好美(念話)「分かった、でもあんまり期待しないでね?」
好美はため息をつきながらデルアの行動を『察知』してみた、やはり嫌な予感は当たっていた様だ。
好美(念話)「イャンダ、忙しいみたいじゃん。景気良いみたいだね。」
ただ前回と違って今度は返事があった。
イャンダ(念話)「本当だよ、まぁ嬉しい事なんだけどね。」
好美(念話)「そんな事言いながら今回は何味の牛乳を飲んでいるのかな~・・・。」
イャンダ(念話)「げっ!!」
実は数日前の事、イャンダが午前中の仕事を抜け出して「お風呂山」の銭湯に浸かっていた事が発覚した。こんな奴が店長で本当に良いのだろうか。
好美(念話)「前にも言ったよね、いくらデルアがしっかり者だからって店長はイャンダなんだからね。ちゃんと仕事してくれないと給料払わないよ!!」
イャンダ(念話)「いや・・・、俺にも付き合いって物が・・・。」
好美(念話)「何?文句あるの?クビにされたい?」
イャンダ(念話)「す・・・、すんません・・・、すぐ戻ります・・・。」
イャンダが急いで仕事に戻る中、レストランにはいつの間にか噂の社長の姿があった。仕事の方はだいじょうぶなんだろうか。
好美「結愛じゃない、こんな所にいたらまた光明さんに怒られるよ?」
結愛「今日は大丈夫だって、有給届を出して来たから。」
どうやら貝塚財閥は俺が思った以上のホワイト企業に成長した様だ、これも教育等に熱心な結愛が社長を務めているが故だろう。もしも義弘だったら今頃・・・。
そんな中、既にグラスを手にしていた結愛の意識は別の方向へと向かっていた。
-95 感動の裏で-
今回は先に有給届を出して来たと宣言した後に喜び勇んでグラスに瓶ビールを注ぐ結愛の意識は別の方向へと向いていた、どうやら聞き覚えのある声に反応した様だ。
結愛「ん?聞き覚えがある声がすると思えば、お前ホル・マイヤーだな。もうすぐ期末だってのに随分と余裕じゃねぇか。」
ホル「理事長先生、食事中にその話題はやめて下さい。」
ネクロマンサーの顔を見たピクシーが少し焦った表情をしていたので好美は小声で尋ねてみた。
好美(小声)「結愛、あの子がどうしたって言うの?」
社長兼理事長は好美の問いに頭を抱えながら答えた、本人に気遣って回答も小声で。
結愛(小声)「あいつな・・・、次の期末で赤点が3つ以上あったら留年しちまうんだ。」
どうやらこの世界でも学校の事情は変わらない様だ、ただ言える事は折角この世界で一番競争倍率が高い貝塚学園魔学校に通っているのに今のままでは本当に勿体ない。
ホル「もう・・・、人の事ひそひそ話で言わないで下さいよ。帰って勉強するから勘弁して下さい。」
結愛「本当だな、俺は全員の成績表を預かって目を通しているからちゃんと勉強してないか分かるんだぞ。来年は大事な年になるんだから今現在でそんな状態だとまずいってのは分かるよな?」
ホル「はい・・・、十分分かってます。」
自分の言葉に崩れ落ちるピクシーの気持ちを察した結愛は本人の肩に手を乗せて慰めた。
結愛「悪かったよ・・・、そんな顔すんなって。俺はお前も頑張っている事も知ってんだぞ、1年2年と特進クラスに通っている数少ない生徒の1人なんだからそれを活かして欲しいだけなんだよ。ほら、今日はゆっくり食ってからでいいから帰って必ず勉強しろよ。」
ホル「は~い・・・。」
結愛「それとガルナスにメラ、お前らも人の事言えないって事は感じておけよ。俺は3人に仲の良いまま特進クラスに居続けて欲しいんだぜ、期待を裏切んなよ。」
ただ娘の学校での様子をあまり知らないが故に結愛の発言に驚きを隠せないのが光とナルリスだった、ガルナスのイメージと言えば「陸上」と「大食い」だけだったはずだが・・・。
光「結愛ちゃん、今何て言ったの?うちの子が「特進クラス」って?」
状況を把握しきれていない両親に理事長は「大人モード」で答えた。
結愛「そう・・・、ですけど・・・。なんでそこまでびっくりしているんですか?」
ナルリスに至っては驚くどころか完全に調理の手が止まってしまっていた、伝票はずっと雪崩の様にで続けているのに大丈夫なのだろうか。
ロリュー「おい・・・、ナル・・・、大丈夫かよ。隕石でも落ちて来た位の顔すんなって。」
ナルリス「悪い・・・、俺は夢をみているのかと思ってしまってな・・・。」
今の今まで娘に勉強というイメージが無かったので「特進クラス」なんて夢のまた夢と思っていた、夏休みの自由研究だってちゃんとしないのにコネでも使ったんだろうか。
ガルナス「パパもママも失礼な事言わないでよ、私だって実はちゃんと将来の事を考えてるんだから。」
ガルナスの発言に続いたのは、学園の理事長本人だった。
結愛「光さん、ナルリスさん。実は私結構見てたんですよ、娘さんが学校の図書室で分厚い共通一次試験の過去問題集と睨めっこしながら真面目に勉強していた所をね。しかも本人が必死に稼いだバイト代で買ったって言ってるんです、私正直理事長をしていてこんな生徒初めて出逢いましたよ。一応、エスカレーター方式でうちの大学に入れるんですがもしかしたら本人には別の希望があるかも知れませんね。」
まさかの賞賛につい嬉しくなったオーナーシェフは急ぎシンクへと向かって追加として大量の米を研ぎ始めた、その眼にはうっすらとだが涙が・・・。一方、別の席では。
ガルナス「あれま~・・・、私本開いて寝てただけなんだけど・・・。」
メラ「確かにそうだけど、今それは言わないでおこうか。」
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