7. 異世界ほのぼの日記3 86~90


-86 パーティーと秘密-


 先程の好美の言動に、光が黙っている訳が無かった。


光「ちょっと、まさかと思うけどここの野菜を使ってうちとの取引を減らすつもり?」


 今はナルリスの店での売り上げが有るので生活面等においては何とかなっているが、将来を長い目で見ると「暴徒の鱗」との契約は続けていきたい。いち農家の主人にとっては自然の考えと言っても過言では無い。


好美「そ・・・、そんな訳無いじゃないですか。勿論、光さんの所の野菜も使わせて頂くつもりです。」


 好美の心中では経費の節約と粗利益高のアップを狙って光との野菜の取引を考え直そうしていたが、この世界に来てすぐの頃からずっと世話になっている分、裏切る訳にはいかないと少しタジタジしていた。

 裏庭で店の裏事情が飛び交う中、訳あり品を使った試食品とは言え、折角の料理が冷めてしまうと勿体ないと思った秀斗と美麗は店内へと戻って食事を始めた。美麗の実家である「松龍」の味がベースになっている数々の料理は2人の舌に合っていたらしく、食がどんどん進んで行った様だ。

 そんな中、好美との話し合いを続ける光にナルリスの店でグラスを磨いていた真希子から『念話』が飛んで来た。


真希子(念話)「光ちゃん、今大丈夫かい?」

光(念話)「まぁ、大丈夫ですけど。何かありました?」

真希子(念話)「光ちゃんって、明日空いてるかい?」

光(念話)「別に何の予定も無いです、仕事も休みですし。」


 「休みだった」というよりは、とある理由からラリーの厚意によって「休みになった」と言った方が良いと思うのは俺だけだろうか。まぁ、それに関しては何も言うまい。


光(念話)「あの・・・、どうしたんです?」


 数秒の間沈黙する真希子に対し、少しだが不信感を抱いてしまった光。


真希子(念話)「ごめんごめん、いやね、明日って光ちゃんの誕生日だろう?うちの店で皆で集まってパーッとやろうかと思ってね(言っておくがあんたのではない)。」

光(念話)「別にいいですよ、もうそんな歳じゃないですし。」


 断りながらも赤面する光、実は嬉しかったりしている様だ。


真希子(念話)「良いじゃないか、それに美麗ちゃんがこっちの世界に来たんだろ?歓迎パーティーも兼ねているんだよ、守も明日有休を取らせたからどうだい?」

光(念話)「まぁ・・・、真希子さんが言うなら行きますけど何か恥ずかしいですよ。」

真希子(念話)「いつまで経ってもお祝い事は嬉しい事さね、じゃあ明日、必ず来るんだよ!」


 2人の『念話』が聞こえていたのか好美はノリノリになっている様だ。


好美「羨ましいですね、楽しそうだから私も守について行って良いですか?」

光「良いけど・・・、好美ちゃん、夜勤は大丈夫な訳?」


 「もしも」の時の為に王城にある待機室の連絡先と自分の週休日を光に教えていた好美、予想通りの質問にとスラスラと答えていた。


好美「問題無いですよ、今日もそうなんですけどこの前の代休で明日の夜も休みなんです。」


 翌日、守と好美は眩しい朝日を自室のテラスで浴びた後にエレベーターで1階へと降りて徒歩で真希子の待つナルリスの店へと向かった。『瞬間移動』を使えば良いのだが、運動不足の解消と美味い料理の為だという。


好美「今日楽しみだね、何の料理が出るんだろうね。」

守「母ちゃんが来るまでのお楽しみって言ってた、ただ俺って何で呼び出されたんだろう。」


 頭を悩ませる守と共に好美はルンルンしながら店へと向かって行った。

 一方、光が家庭菜園で毎朝の習慣としている野菜の収穫をしていたのを見かけた真希子は妻から見えない様にオーナーシェフのナルリスを厨房の奥へと呼び出していた。


真希子「朝早くから悪いね、ナル君。少し話があるんだ。」

ナルリス「仕込みは終わってますから別に構いませんけど、どうしました?」

真希子「実はね・・・・、・・・・・・、なんだよ。」

ナルリス「あの・・・、小声過ぎて全然聞こえなかったんですけど・・・。」


-87 不自然に記された秘密-


 ナルリスの店で副店長を務める真希子はオーナーシェフに耳打ちで重要事項を伝えようとしたが、本人の声が小さすぎたのかナルリスはまた聞き逃してしまった。


ナルリス「あの・・・、さっきから何を伝えようとしているんです?全然聞こえないんですが。」


 何度も何度も聞き返すものの、ナルリスが未だに全てを聞けないままの状態で早くも好美と守が入店して来た。


真希子「まぁ、後で分かる事さね。あら2人共、いらっしゃい、おはよう。」

好美「おはようございます。」

守「・・・。」

真希子「何だい、うちの子は挨拶も出来ないのかい?親として恥ずかしいよ。」


 挨拶の無い守を叱る真希子の表情は、1人の立派な母親の表情そのものであった。

 そんな中、渚と光親子が住居部分の側にある出入口から入店して来た。すぐさま業務に戻った真希子は挨拶を交わし、2人を席へと案内した。


光「おはようございます、真希子さん。今日は私なんかの為にすみません。」

渚「それにしても本当に私は客として来るだけで良いのかい?」

真希子「何言っているんだい、光ちゃんだけのパーティーじゃないって昨日言っただろう?それに、この店には拉麵屋の女将に出来る事なんて1つも無いよ。」

渚「あんたも「女将」だなんて呼ぶんじゃ無いよ、それにいい意味で失礼しちゃうね。」


 その数分後の事、光の元上司で叔父である一が入店して来た。


真希子「あらいらっしゃい、一さん来てくれたんだね。」

一「おはようございます、ご招待頂きありがとうございます。それにしても私なんかが来ても良いんですか?」

真希子「当たり前じゃないか、あんたも家族の一員なんだからね。」


 ただ一の姿を見て黙っていなかったのが渚だった。


渚「あんた、店の方は大丈夫なのかい?」

一「勿論大丈夫です、元々休みの日でしたから。それに出勤日だったとしても女将さんがシューゴさんに話を通して休みにするでしょう?」

渚「あんたも「女将さん」はやめな、何回言えば分かるんだい。」


 そうこうしている内に美麗や秀斗を含む招待客全員が席に着いて乾杯の時となった、まだ朝の9:00だったが全員気になどしていなかった。

 全員の気分が良くなる中、守はずっと気になっていた事を母親に尋ねた。


守「なぁ母ちゃん、何で俺は今日呼ばれたんだよ。」

真希子「ああ・・・、忘れかけていたよ、これこれ。一先ず守、あんたは「端」の物でも「つまんで」いな。」


 真希子は懐から一通の手紙を取り出して光に渡した、どういった理由なのか封筒には「必ず守と読む事」と書かれていた。


光「「守君と一緒に読む」ってどう言う事ですか?」

真希子「読めば分かる事さね、開けてみな。」


 真希子に勧められるがままに封を開ける光の手を、何故か渚が止めた。


光「何?!」

渚「実はね・・・、私と一さんはあんたに謝らないといけない事があるんだよ。」

光「どう言う事?」


 光が不審に思いながら手紙を開けると、とても不自然な形で文字が書かれていた。


あかりちゃん、誕生日おめでとう。

なる君から聞いたけど今日で結婚20周年なんだってね、転生して来

た人間は老けないから歳を取っ

た実感が湧かないよ。

ちいさい頃

はよく守の世話をしてくれてありがとうね、本人はいつも「お

姉ちゃんと遊べて楽しかった」って言ってたんだよ。「走り屋の師」

弟関係になりたい」って言われた時は焦ったけど内心は嬉しかったん

だよ、これからもよろしくね。 真希子


-88 秘密と嘘-


 2人は真希子から渡された手紙を読んで心が温まった以外に何も感じていなかった、ただ守はどうして自分が読む必要があったのかを自分なりに思い出そうとしていた。


守「そう言えばさっき母ちゃんが「端の物でも摘まんでいろ」って言ってた様な気がするな、「端」を「摘まむ」ね・・・。」

光「守君、どうしたの?」

守「光姉ちゃん、その手紙ちょっと借りて良い?」

光「良いけど、どうするつもり?」

守「ごめん、折り目付けるよ。」


 守は端っこの文字だけが見える様に手紙を摘まんで読み上げた。


 「あ」「な」「た」「た」「ち」「は」「姉」「弟」「だ」


守「「あなた達は姉弟だ」・・・。えっ?!俺達が姉弟?!」

光「守君、何冗談言ってんの。私達が姉弟な訳無いじゃん、だって家が隣同士だった以外共通点も無いのに!!」


 光は守の手から折り目の付いた手紙を奪い取って読み直した、何度呼んでも「あなた達は姉弟だ」と書かれていた。

 2人は手紙を見て驚きを隠せなかった、自分達が姉弟だって?!その後何処か険悪なムードになるかと思われたが、光がおふざけで始めた「プロレスごっこ」により場は治まった。

 そんな中、渚と一は未だにじゃれ合う光達に近付いて頭を下げた。


渚「実はね、あんたにずっと嘘をついていたんだ。あんたの父である阿久津はすぐに死んだ訳じゃ無くて実家の組員に追われた際に私と離婚して逃亡したんだ。あいつ、生まれたばかりのあんたを私に任せて私達を決して巻き込みたくないから自分は死んだ事にして成長したあんたにもそう伝えておいて欲しいと頼んで来たんだよ。親として嘘をつくのは良くないんじゃないかと言ってはみたんだけど、こればかりは仕方なかったのさ。」

一「吉村・・・、いや光ちゃん。俺と2個下の弟である阿久津は私が中学の頃に両親が別れて俺は母方に引き取られたからずっと知らなかったとは言え、ずっと話せなくて悪かったと思ってるんだ。本当に申し訳ない。」


 必死に頭を下げる叔父を目の当たりにしつつ、光にはもう1つ気になる事があった。


光「じゃあ・・・、阿久津は一度戻って来たって事?」

真希子「そうさ、その時私との間に生まれたのが守だったんだよ。」

光「でもどうして?どうしてお母さんの所ではなく真希子さんの所に?」


 真希子に尋ねたはずの質問に何故か頬を掻きながら答えようとする渚。


渚「えっとね・・・、これは私も人づてに聞いた話なんだけどさ。阿久津は逃亡を続けていた際に真希子が「紫武者」としてスルサーティーに乗って走っていたのを見かけて惚れてしまったらしいんだ、それで私と真希子の友人関係を知らない上に私との元夫婦の関係を隠したまま子供を作っちまってまた逃亡したって訳さ。」


 渚の話にため息が止まらない真希子。


真希子「もう・・・、あの時は滅茶苦茶だったね。色んな意味で。」


 正直言って想像もしたくないのは俺だけだろうか。


渚「本当、私達が和解しているのが奇跡と言っても良い位だね。」

真希子「あれは仕方なかったのさ、私達2人は何も知らなかったんだから。唯一悪いのはただ欲にまみれた阿久津1人って事にしようって、あの時話したじゃないか。」

渚「そうだったよ、ハハハ・・・。」


 今となっては良い(?)思い出となった昔話を思い出して談笑する母たちを見ながらも、まだ驚きを隠せない守の横で嬉しそうに光が笑っていた。


守「な・・・、何だよ。」

光「ごめんごめん、いやね、あんたみたいな弟が欲しいなって思っていた事があったのよ。」

守「何だそれ・・・。」

真希子「まぁ付け加えるとしたらだけど、私が王麗に協力して捜査していたのはそれを理由に警察に保護してもらっていたって訳なのさ。えへへ・・・、守、まだ母ちゃんも侮れないだろ?」

守「いや母ちゃん・・・、俺の知らない秘密持ちすぎだろ・・・。それと、褒めてねぇよ。」


 それから暫くの間、レストランは温かな雰囲気に包まれていた。


-89 有名なはずの大騒動-


 客席で先程姉弟だと発覚した2人を含めた転生者達が談笑している頃、調理場でずっと時間に追われていたシェフ達は焦りに焦っていた。


ロリュー「ナル、転生者達って皆こんなに食ってばっかなのか?俺こんなの初めてなんだけど。」

ナルリス「光の祝い事だから余計じゃないかな、唯一の救いはガル・・・。」

バイト「すいませーん、オーダー通しまーす。」

2人「はーい・・・、よろしく・・・。」


 雪崩の様に機械から吐き出される伝票を見て先程からなのだが何度も何度もため息をつく2人、そんな中ソムリエ兼サブシェフは先程聞き逃したオーナーの言葉を聞きなおそうとした。


ロリュー「ナル、それで?さっき「唯一の救いは・・・」って言ってたけどガル・・・。」


 ただタイミングが悪かったのか、唯一の救いが崩れ去ってしまった様だ。それどころか、状況が一変してしまったと言っても良い位に・・・。


ガルナス「パパただいま、メラ連れて来たけど忙しそうだね。」


 ハーフ・ヴァンパイアの娘・ガルナスの学校の友人でマーメイドのメラ・チェルドは相も変わらずナルリスのコロッケが好物の様だ、今日もそれを食べに来たらしいが・・・。


メラ「お・・・、お邪魔してます。」


 女子高生達の姿を見て焦りの表情を隠しきれなかった父は、せめてこの2人の食事は後にさせて欲しいと願って仕方がなかった。嫌な予感が頭をよぎった・・・。


ナルリス「あれ?そう言えばアルバイトは大丈夫なの?」

メラ「今日は先日の代休なんです、確か店長もここに来ていると聞いたんですけど。」

ナルリス「え・・・、どこからそんな情報が飛んで来たの?」

メラ「姉です、後で本人も来るって言ってましたけど席は空いてますか?」

ナルリス「席ね・・・、今日は予約で埋まっているんだよ・・・。」

ロリュー「え?そうだ・・・。」


 空席の状況を改めて確認しようとするロリューをきつめの視線で引き止めるナルリス、勿論先程の言葉は嘘であった。店の端の方にまだ2テーブルの空席があったが今は自分達の仕事を執拗に増やしたくなくて必死だった、しかしオーナーシェフの希望は再び崩れ去ってしまった。


真希子「あら、ガルちゃんにメラちゃんじゃない。2人もこっちにおいでなさいな。」


 酒が回った勢いで気持ちが大きくなっていた副店長が女子高生達を手招きしていた、その光景を見て2人は絶望していた。


ナルリス「ロリュー、今日って白飯って炊いてたか?」

ロリュー「白飯?うちのメインってパンだよな。」

ナルリス「でもあの2人だぞ・・・、お前はあいつらの勢いを知らないのか?「暴徒の鱗」での大騒動を聞いてないのか?」


 どうやら元竜将軍(ドラグーン)達の体験を耳にしていないケンタウロス、目の前の細身の2人が起こした大騒動はある意味歴史的な物だった事を未だに知らない。


ナルリス「良いか、よく聞けよ。」


 忙しい中、敢えて調理をする手を止めて改まった様に声を掛けるヴァンパイアの様子がただ事では無い事を語っていた。


ナルリス「お前は想像できるか?あの「暴徒の鱗」が予備として設置していた物も含めた炊飯器に入っていた白飯が全て空になったんだぞ、しかもそれからまだ追加が大量だったらしい。はっきり言って俺らが今見ている雪崩はまだましと言っても良いかもしれん。」

ロリュー「冗談はよせよ、それにこの店にある炊飯器はたったの2台で片方ずつしか使っていないじゃないか。もしも今の情報が本当なら速攻で全滅しちゃうんじゃないか?」


 それから十数分後・・・、ナルリスの「嫌な予感」が当たってしまった様だ・・・。ウェイトレスとして勤めるダーク・エルフのミーレンから悲報が・・・。


ミーレン「オーナー!!ガルちゃんたちが炊飯器からそのままご飯食べてるけど大丈夫な訳?!店の米が無くなっちゃうよ!!」


-90 まさかね-


 緊急事態に気付いたサブシェフは使っていなかった方の炊飯器に洗ったばかりの米を詰め込んだ後に水を流し込んで電源ボタンを押した、ただそれだけで間に合う訳も無く・・・。


ナルリス「まずいな・・・、炊飯器1台分の米が無くなろうとしているぞ。折角ロリューが用意してくれているのに早くも総崩れしてしまうかもしれないぞ!!」


 ナルリスは注文を取り終えて手の空いていたミーレンを捕まえると、調理場の裏の事務所(あったか?)へと連れて行って両肩に手をやりながらお願いしようとした。


ミーレン「何してんの、いくらオーナーでも奥さんがいるじゃない!!私は不倫するような男は大嫌いなんだけど!!」


 どうしてダーク・エルフがこういった思考に至ったかは分からなかったが、出逢ってからずっと光の事を想っていた吸血鬼が不倫をする為にウェイトレスを呼んだ訳が無い。


ナルリス「何馬鹿な事を言っているんだ、そんな訳が無いだろう!!」


 ただ2人の会話は声が大きすぎてオーナーの嫁に聞こえていた様だ、客席から鬼の形相をした光が事務所へとやって来た(あれ?関係者以外立入禁止のはずだけど・・・、気にしないでおこう)。


光「ナル・・・、今聞こえて来たけど不倫ってどう言う事?」

ナルリス「違うんだ、光!!」


 しかし、2人の姿はどう見てもラブホテルの前で繰り広げられる不倫の現場にしか見えなかった。


光「何よ、仕事の邪魔しちゃいけないと思って気を遣っていたのにそれを良い事にその女といい関係になっていた訳?!」

ミーレン「光ちゃん!!」


 この店に雇われてからゆっくりとだが光と仲良くなっていったウェイトレスも必死に誤解を解こうとしていた、一先ず未だに両肩に乗っていたナルリスの手を振り払って・・・。


ミーレン「私、彼氏がいるの!!彼氏一筋なの!!不倫なんてあり得ないじゃない!!」

光「あっ、そうか。ははは・・・、私ったら勘違いしちゃってごめんね。」


 ウェイトレスの言葉によりその場は一気に和んだが状況は未だに悪いままだ、ナルリスはミーレンを呼び出した本来の目的を実行する事にした。


ナルリス「ミーちゃん、俺が君をここに呼んだ理由はこれなんだ。」


 ナルリスは事務所の奥に隠してある金庫から金の入った封筒を取り出してミーレンに渡した。


ミーレン「何?お小遣いでもくれる訳?丁度欲しいバッグがあったから嬉しいよ。」


 封筒の中の金に興奮するウェイトレス、しかし世の中そんなに甘くはない。


ナルリス「何でこの空気でそうなるんだ、この金で買えるだけの炊飯器を買って来てくれ。出来るだけ大きい物な!!」


 娘たちの暴動に備えるにはこれしかないと、光に黙って以前からこっそり貯めていたへそくりをミーレンに託したナルリス。空気を読み急いで家電屋へと向かったミーレンを見送った吸血鬼の後ろから睨みつける女性の姿が・・・。


光「ナル・・・、今のお金何?結構な大金だったよね・・・。」


 背筋が凍る想いをしたナルリスは妻の機嫌を何とか直そうと必死だった。


ナルリス「えっと・・・、これはあれだよ。皆で旅行に行こうと貯めていたんだよ。」


 嘘だ、これは今度ネフェテルサ王国公園にある競艇場で今度行われる大きなレースの為に貯めていた軍資金だ。


光「え?今まで新婚旅行も行った事無いのに今更何言ってんのかな・・・。」

ナルリス「い・・・、いや・・・、ぎゃあああああああ!!!!!」


 それから数十分の間、ナルリスの姿を見た者はいなかったという・・・。

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