7. 異世界ほのぼの日記3 76~80


-76 便利な体と親戚同士の再会-


 ガス欠しかけのトラックの前に戻って来た恋人達の前に再び現れた社長はある従業員を後ろに連れていた、ただその従業員は結愛と同様にパンツスーツを着た女性だったが右手には工具らしき物を持っていた。


結愛「すまねぇ、待たせたな。」

秀斗「良いけど結愛、業者さんでも呼んだのか?それともまた別の従業員の人でも来る訳?」

結愛「いや違うぜ、後ろにいるこのヒドゥラが作業をしてくれるそうなんだ。」


 結愛がそう言うと、先程から同行して来た女性従業員が1歩前に出て自己紹介した。


ヒドゥラ「社長秘書のヒドゥラと申します、結愛社長のご親戚の方とお伺い致しました。喜んでお手伝いをさせて下さい。」

秀斗「社長秘書さんが自動車整備を?」

ヒドゥラ「はい、実は私の実家が自動車の整備工場ですので1通りの資格は持っているんです。」

美麗「凄い方なんですね、でもスーツ汚れませんか?それに荷物を載せてるから整備用に高く持ち上げたらまずい気がするんですが。」

ヒドゥラ「大丈夫です、ご安心下さいませ。」


 ヒドゥラは美麗の質問に答えると『人化』を解除し、半身が蛇である元々の姿に戻ってあっという間に車両の下に潜り込んでしまった。


秀斗「え?!ここでするんですか?!」

ヒドゥラ「はい、では早速やっちゃいますね。」


 そう言うと目の前のラミアは慣れた手つきで作業を始めた、エンジンスタートに関する整備作業なので真下に積んであるエンジンの方から手を付けていく様だ。


結愛「凄いだろ、直接採用面接をした訳じゃ無かったから俺も最近まで知らなかったんだけどさ、この前光明の車の事で相談したらすぐに修理してくれたんだよ。」


 社長の言葉が聞こえたのか、トラックの中から秘書の声が聞こえて来た、ただ本人が何処にいるのかは外からは皆目見当もつかなかった。


ヒドゥラ「自動車整備は朝飯前というか趣味みたいなもんですからね、こうやって車の中に潜り込んでいると何だか楽しくなっちゃうんです。」


 そう語りながら作業を進める秘書に結愛はさり気なく、ただ結構重要な案件を伝えた。


結愛「ヒドゥラさん、今度新規事業として立ち上げる貝塚運送での社用車整備担当を貴女にしようと考えているんですけど良いですか?」


 ビジネスでの事案なので一応「大人モード」で話しかける社長。


ヒドゥラ「社長、いつも私にはその口調じゃないでしょ。気持ち悪いから戻って下さい。」


 作業をしながらもしっかりと上司の声を聞いていたヒドゥラ、仕方なしだが結愛は言われた通りいつも通りの口調に戻した。


結愛「ヒドゥー、貝塚運送の社用車の整備をお前に全部押し付けて良いか?」

ヒドゥラ「結ちゃん、「押し付ける」って何なのよ。人聞き悪いじゃない。」


 2人の会話の様子はまるで休日を共に過ごす友人同士みたいなものだった、社長と秘書の関係は他の人がいる時だけにしているのだろうか。


結愛「すまねぇが2人共、この事はここだけの話にしておいてくれないか?特に光明に見つかったらめんどくさい事になっちまうからよ。」


 確かに結愛以上にマナー等に厳しい光明が今の2人の様子を見たらどう思うのだろうか、ハッキリ言って美麗には想像も出来なかった。


美麗「見なかった事にしておくよ、それにしてもヒドゥラさんがさっき言ってたけど2人は親戚だったの?」

結愛「いとこ同士なんだよ、ただ互いに違う県に住んでたから久しく会ってなかったがな。」

秀斗「いつ以来だったかな、お前と会うのって。それにスーツなんてキャラだったか?」

結愛「確か・・・、高校時代に株主総会で会って以来だったよな。あの時は親父に着せられてた服が嫌で嫌で仕方が無かったから今は最高の気分なんだ。」


 秀斗も母・洋子が貝塚財閥の株主の1人だったので母と一緒に会議に出席していた。


-77 別視点から見た「あの会議」-


 これは義弘による「最悪の高校時代」が終わりを告げ、結愛が貝塚財閥の代表取締役社長となるきっかけになった緊急株主総会での事。

 持ち株が決して多かった訳では無かったが、貝塚財閥の株主の1人として財閥のこれからをちゃんと見ておこうと思った洋子は社会勉強の一環になれば良いと考え、秀斗を引き連れて総会に出席した。


洋子(当時)「良いかい?今から行われる会議でこの会社の、そしてあんた自身の歴史が大きく動くかもしれないからその瞬間をよく目に焼き付けておくんだよ。」


 ただ、食べ盛りであった当時の秀斗は夕飯の事しか頭に無かった様だ。


秀斗(当時)「母ちゃん、ここ何なんだよ。腹減ったよ、唐揚げ食わせてくれよ。」

洋子(当時)「あんたね、何恥ずかしい事を言ってんだい。馬鹿な子に食わせる唐揚げなんて作り方も私ゃ知らないね。」


 そんな中、会長である結愛の祖父の博が登壇した。


博(当時)「おはようございます、皆様本日はお集まりいただきありがとうございます。只今より緊急株主総会を開始いたします。尚、この場に私の愚息が居ないのはその愚息について話し合う場だからです。」


 会長の挨拶の後、義弘派閥の株主たちから反発の言葉が行き交いステージ上のスクリーンに映像が流れていた頃に秀斗の腹の虫が大きく鳴った。


秀斗(当時)「母ちゃん、俺我慢出来そうにねぇよ。」

洋子(当時)「良いから黙って見てな、あんたもテレビのニュースを一緒に見ていたんだから貝塚学園で起きた一連の事件を知らなかった訳じゃ無いだろ?」


 当時の洋子は状況を逐一把握するために夕飯時は必ずニュース番組を見る様にしていた、ただ秀斗は退屈さだけを感じていた様だが。


秀斗(当時)「あんなの俺が見ても仕方なかったと思うんだけどな、ハッキリ言って俺はこの場にいるべきなのか?」

洋子(当時)「あんたは本当に馬鹿だね、ここにいる意味はこれから分かるんじゃないか。」


 ステージ上にいる議長が義弘派閥の2人が反対したので社長解任決議案を否決にしようとした瞬間、真紅のスーツに身を包んだ真希子が浜谷信二達を引き連れて登場した。


真希子(当時)「待ちな!筆頭株主の私を放っておいて勝手に総会を終わらせようとしているんじゃないよ!」

洋子(当時)「ほら見てみな、救世主のお出ましだよ。」


 洋子は人生でこの上ない位に興奮していた、どうやらこの瞬間を待ち望んでいた様だ。


信二(当時)「さて、本題に入りましょうか。義弘さんに学校の土地と権利を譲っておくれと言われた時はこんな事態になると思ってなくて私が判断を見誤ったが故に起こった事です。私が発端とはいえ義弘さんがした事は決して許されることではありません。」

真希子(当時)「株主の皆さん、よく考えて下さい!あなた達も人の子で親でしょう、安心して子供たちを預けることが出来る学校を取り戻すべきではないでしょうか、そして守るべきではないでしょうか。それに子供たちのお手本となる教員、勉学を教える講師となる投資家への贈収賄。全て踏まえ、もう1度問います。私たちの子供達から安心できる学校を奪った義弘をあなた達は許しますか?!」

洋子(当時)「いよいよだ・・・、歴史が動くよ!!」

議長(当時)「貝塚義弘社長解任決議案に賛成の方・・・。」


 真希子や信二、そして洋子達が一斉に挙手して義弘が解任されて一時的に全権を奪取していた結愛が次の社長へと任命された。

 そうして幕を閉じた緊急株主総会から数分後、大会議室の出入口付近で洋子は結愛を見つけて強く抱きしめた。


洋子(当時)「結愛ちゃん、今までよく我慢したね。まだ高校生なのに本当に頑張ったね。」

結愛(当時)「洋子おばちゃん、来てくれたんだな。本当にありがとよ。」

秀斗(当時)「えっ・・・?!どう言う事だよ?!「洋子おばちゃん」って?!」


 当時の秀斗は目の前にいた新社長が自分の親戚だった事をまだ知らなかったのだ。


洋子(当時)「今更何言ってんだよ、この子の母親は私の姉なんだよ。「おばちゃん」って呼ばれて当然じゃないか。」

秀斗(当時)「俺が・・・、貝塚財閥の関係者・・・?!」


-78 社長も聞かされて知った母の記憶-


 ヒドゥラによるトラックの改造作業が進む中、秀斗はあの「株主総会」以来気になっていた質問を巨大財閥の社長にぶつけた(そう言えばこれ、異世界での話だったな)。


秀斗「なぁ結愛、ずっと分からんかったんだがな、俺達は親戚だってのにどうしてあの「株主総会」まで会う事は無かったんだ?」


 秀斗の質問に頭を悩ませていた結愛は、ゆっくりと重い口を開いた。


結愛「そろそろ聞かれると思ったぜ、何処から話せば良いんだ?」

秀斗「どんな事でも構わねぇ、知っている事を俺にも聞かせてくれるか?」

結愛「そうだな・・・。」


 再び深く考え出す結愛、何とか自分が秀斗に話せる真実は無いかと記憶を必死に辿っていた。


結愛「実は俺・・・、母親の顔を知らねぇんだ。まだ小さいガキだった海斗も覚えていないって言ってたよ。」

秀斗「そうなのか?」

結愛「ああ。これは洋子おばちゃん、つまりお前の母ちゃんから聞いた話なんだけどよ。」


 結愛や海斗が産まれる数年前の事、かつてよりギャンブルやキャバクラへの依存により父親が残していった借金を抱えていた羽柴莉子(後の貝塚莉子:海斗と結愛の母親)・洋子姉妹は4畳半の古いアパートで2人暮らしをしていた。

 丁度その頃、莉子が借金返済のためにバイトで働いていたスナックの客としてやって来たのが当時専務取締役をしていた義弘だった。

 当時の義弘は貝塚学園を設立した頃とは真逆で、周囲への心遣いも忘れず、皆に好かれる性格だったという。


義弘(当時)「お父さんの借金を返す為にここでアルバイトを・・・、それは大変ですね。」


 社長兼理事長だった時の義弘と同一人物とは思えない台詞だ。


義弘(当時)「それで・・・、洋子さんでしたっけ?妹さんも弁当屋で昼夜働いていると。」

莉子(当時)「はい、元々は5時間のみでの契約だったのですがお店の人に無理言って8時間にして貰っているんです。私は私で午前中は別の工場で働いているので、共同で住んでいても会う事は殆ど無いに等しいですね。」

義弘(当時)「休日も無く・・・、という感じですか?」

莉子(当時)「そうですね、家には寝る為だけに帰っている様なものですよ。」


 莉子は冗談を言う様にクスクスと笑いながら自らの日常を話していた。


義弘(当時)「因みに・・・、その・・・、差し支えなければなんですが、例のお父さんは?」


 持っていたウィスキーのロックを一気に煽る莉子、度数37%の酒はかなりキツめだと思われるが大丈夫なのだろうか。


莉子(当時)「知りませんよ、あんな男。洋子が産まれる寸前で他に女作って出て行ったって聞きました、母さんだって私達が幼少の頃に死んじゃいましたし。」


 莉子も生前の祖父母に聞いた話だったが姉妹の父親は昔から酒と女癖が悪く、結婚してから何度も何度も不倫を繰り返していた様だ。そんな旦那に愛想を尽かせた2人の母親が自分1人で何とか子供を育てようとしたが、過労でこの世を去り、莉子たちは養護施設で育ったのだという。

 莉子から過去の話を聞いた数か月後、同情した義弘が莉子の働く店に花束を持ってやって来た。


義弘(当時)「莉子さん、こんな私で宜しければこれからの貴女の人生を幸せにするお手伝いをさせて下さい。」


 この一言に涙が止まらなかった莉子は当然の様にプロポーズを受けたという。

 それから暫くして2人の間に兄の海斗が産まれ、その1年後に結愛が産まれた。そこまでは良かった、ただ義弘は娘が誕生してからすぐに貝塚財閥の社長に就任したが正直言って会社の羽振りはそれ程よくなかったので義弘は自宅でなりふり構わず暴れ回っていた様だ、そんな生活が嫌になった莉子が義弘に離婚を迫り、一応受諾はされたが金の力を行使した義弘が兄妹の親権を無理矢理奪い取って莉子を家から追い出したのだという。洋子も姉に替わり2人を育てると志願したが、裁判所の命により叶わなかったらしい。


結愛「これが・・・、俺が知っている全てだ。俺には・・・、俺達には母親との記憶や思い出が無い。全て・・・、あのくそ親父の所為だ・・・。」


-79 やっと引越し再開-


 結愛の話を作業中のラジオ代わりに聞いていたヒドゥラが、父親を思い出して拳を強く握る社長に声を掛けた。


ヒドゥラ「結ちゃん、これからは私があんた達2人兄妹のママよ。」

結愛「アホか、俺は半身が蛇の母親なんてお断りだね。」

秀斗「それにさ・・・、さっきまでの感動を返してくれない?」


 先程まで芽生えていた感情が一気に冷めていくのを感じた秀斗を横目に、車両の下から滑る様に現れたヒドゥラは『人化』して社長をギュッと抱いていた。まるで、本当の母親みたいに。

 これはあくまで推測だが、今までずっと独身を貫いて仕事重視の生活をしていた反動が今頃になって現れたと思われた。


ヒドゥラ「何よあんた、勝手に推測してんじゃないわよ。」


 何か・・・、すんません・・・。何でだろうな、この世界の住民達は妙に俺に対して風当りが強い気がするんだけど。


美麗「あんたが余計な茶々入れるからよ、少しは静かにしていなさい。」


 美麗もかよ、まぁあくまで妄想の中の何でもありな世界だから十分あり得る話なんだけどさ。

それはそうと、もうトラックの方は大丈夫なのか?完全に作業がストップしている様だけど。


結愛「馬鹿言ってんじゃねぇよ、テメェと違って俺の秘書は優秀なんだぞ。」


 おい、全員してそんな事言って良いのか?結愛には前にも言ったが、俺の妄想次第でお前らの人生なんてどうにでもなるんだぞ。歯向かっても良いと思うのか?それに2人はまだ抱き合っているつもりかよ。


結愛「ヒドゥー離れろって、作業は終わったのかよ?ずっとくっついてないで終わらせろってんだ、2人共家に行けなくて困ってるだろうが。」

ヒドゥラ「何言ってんのよ、さっきあんたが言った通り私は「優秀」なんだから終わっているに決まってんじゃないの。」


 遂には結愛の事を「あんた」と呼んでいる社長秘書、全く・・・、上司部下の関係は何処に行ってしまったんだろうか。


結愛「終わったんか、じゃあ乗って良いんだな?」

ヒドゥラ「勿論よ、美麗ちゃんだっけ?運転席に座って魔力を流してみて。」


 先程までとは全く別人の様なラミアに言われた通りにする美麗、しかしこの世界に来て間もないのでどうやるか分からなかった。


美麗「ねぇ秀斗、魔力って私にもあるの?それに何処にどうやって流す訳?」

秀斗「魔力も『作成』で作れば何とかなるさ、ほら、鍵の所のクリスタルに触れて自分の周りにあるオーラ的な物を注ぐイメージをしてご覧。」


 イメージ通りの動作を行ってはみたが、エンジンは全くかからない。それどころかセルモーターまで動かない、ヒドゥラはおかしいと思いながら美麗に近付いた。


ヒドゥラ「美麗ちゃん、これってクラッチングスタートじゃないの?踏みながら流さないと動かないわよ。」


 王麗が今の車両に買い換える以前の物にすっかり慣れてしまっていた美麗は、久々のクラッチングスタートに焦っていた。あれ?でもさっきまで乗ってたよね?


美麗「何?また茶々入れる訳?普通MT乗る時は最初にクラッチ踏むじゃん。」


 じゃあ、何で今は踏まなかったの?


美麗「し・・・、仕方ないでしょ。違和感があったんだから忘れる時だってあるの、人間なんだからね。」


 あの・・・、ホンマにすんません・・・。


美麗「もう何なのよ、早く行こうっと・・・。でもその前に・・・。」

秀斗「結愛、いくら払えば良い?」


-80 マジなの?-


 思ったより大掛かりな作業だった事にかなりの高額を覚悟してサイフを開く秀斗、しかし結愛からの返事は意外な物だった。


結愛「いらねぇよ、こいつも趣味だって言っているし、親戚からは金を取れねぇって。」


 いくら大企業の社長でも作業を行った本人がどう言っているのかを聞いてからにした方が良いと思うのは俺だけだろうか。


ヒドゥラ「そうそう、後で結ちゃんの財布から抜いておくから安心して。」

結愛「おいてめぇ、ふざけんじゃねぇぞ!!」


 ラミアのお陰でその場は一気に和んだ。何か・・・、助かった・・・。

 結局作業代の件は全てヒドゥラの冗談だった様で、人助けと言えども趣味に没頭出来たからそれだけで嬉しいという理由でお金は取らなかった様だ。ただ、1つ確認したい事が有った様で・・・。


ヒドゥラ「社長、先程は大変失礼致しました。誠に申し訳ございません。」


 あれ?ラミアが元通りの秘書に戻っているぞ。


ヒドゥラ「あの・・・、本当に宜しかったんですか?あの2人の前では普段とは全く違う態度で自分と接して欲しいと仰っていましたが。」

結愛「良いんですよ、実はあの美麗が貝塚運送に入社するんですが少し堅苦しいイメージを抱いてしまっている様だったのでそれを崩したかったんです。私はたとえ大きい会社と言ってもアットホームな雰囲気は持ち続けたいと思っています、私自身が堅苦しいのが苦手だと普段から言っているじゃないですか。こちらこそ、演技に付き合わせてしまって申し訳ありません。」

ヒドゥラ「私は良いんですよ、何か・・・、新鮮でしたし。いっその事、あのままお2人のママに・・・。」

結愛「それだけはやめて下さい。」

秀斗「え?じゃあお前ら、アイツの為にわざとやっていたのか?」

結愛「そうだよ、美麗に「社長」って呼ばれたくねぇもん(個人的に)・・・、ってなんでここにいるんだよ!!」


 秘書の本気度の高いジョークと演技力に少し引き気味になっていた結愛は、自分への協力のお礼と決して敵に回してはいけないという気持ちを兼ねて向こう数か月分の給与を数パーセント程上乗せしておこうと決めた様だ。でもよく考えれば貝塚運送での仕事が本格的に始まれば秘書の仕事が結構増えるのでそれに伴って給与が自動的に増える様な気がするが、それはいずれ分かる事として・・・。

 結愛とヒドゥラの協力のお陰でトラックのガス欠の心配が無くなった美麗は早速秀斗の荷物を運ぶために再びネフェテルサ王国までの直進道路を走り始めた(まぁ、結愛は何もしていない様な気がするが)、ただ何か忘れている様な気がするが。


美麗「これでもう大丈夫だね、取り敢えず次の信号で止まった時にジュースでも飲もうか・・・、ね?あれ?秀斗?秀斗がいない!!何で?!」


 「何で?!」って、お前が忘れたんだろうが。今頃かよ、1番忘れちゃ駄目だろ。


美麗「あんたもあんたよ、上から見てたんなら何で言ってくんないの!!」


 元々俺はこの世界にいない事になってんだから、頼られても困るんだが。でも安心しろや、この世界は日本と違って何でも出来るんだぞ。ほら、助手席を見てみな。


美麗「え?助手席?あ・・・、いた。」

秀斗「「いた。」って・・・、普通同乗者(というか引っ越す本人)を忘れるか?『探知』と『瞬間移動』が無かったら今頃大騒ぎだぞ。」


 2人の様子を『察知』したのか、結愛が爆笑しながら『念話』を飛ばして来た。


結愛(念話)「ハハハ・・・、お前ら面白いな。腹が痛くて仕方ねぇ、今度一緒に呑みに行こうや。さっきのお礼は酒代で良いからよ。」

ヒドゥラ(念話)「結ちゃんは何もしてないでしょ、作業は全部私がしたんだから。」

秀斗(念話)「いや、結愛がいなかったら作業をして貰えなかったから感謝してるよ。」


 必死に結愛のフォローをする秀斗。


結愛(念話)「ほら見ろヒドゥー、俺のお陰だろ?」


 あらら・・・、これはご機嫌とお調子がよろしいこった。

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