7. 異世界ほのぼの日記3 71~75
-71 弁当の行方は結局-
複数の従業員に抑えつけられながら、結愛は光明の『瞬間移動』によりバルファイ王国にある貝塚財閥本社へと帰って行った。
結愛「やめろお前ら、せめて一口だけでも食わせてくれ!!」
食い意地を張る妻をよそに周囲への気遣いを忘れない夫は、好美達に優しく声を掛けた。
光明「好美ちゃん、うちの結愛が本当ごめんね。それとお2人もお騒がせしました。」
数人の男女がその場から即座に離れていくのを見て、貝塚財閥の実情を知ったライカンスロープ達は顔を引きつらせていた。
ヤンチ「大企業の社長ってのも大変なんだな。」
ケデール「どっちかと言うと結愛社長の方が皆に迷惑を掛けていた風に見えていたけどね。」
社長達を見送った後、兄弟は自分達が手に持っている弁当の方に目線をやって好美に声を掛けた。
ヤンチ「あの・・・、好美さん・・・。」
ケデール「ちょっと・・・、お願いがあって・・・。」
ケデールの言った「お願い」の事を好美は聞かずとも既に理解していた様で・・・。
好美「あの・・・、その前に焼肉サンドを頂いても良いですか?夜勤の休憩時間にお弁当を食べてから何も口にしてなくて。お腹空いちゃったので、宜しければ2つとも頂いても良いですか?」
夜勤明けの女性の言葉は半分本当で半分嘘だった、空腹で2つとも食べてしまいたいという気持ちはあったが、実は従業員の待機室に備え付けられたお菓子をちょこちょこつまんでいたのだ。そうにも関わらず空腹であるとは、好美の胃袋も侮れないものである。
ただ、狼男たちにとって先程のマンションの大家の発言は正しく「願ったり叶ったり」と言える物だった。結愛がいなくなってしまった分、余った物をどうしようか悩んでいたからだ。
実はと言うとこの弁当、2人が馬鹿食いする事を想定してかなり大きめ、そして多めに作ってあったので兄弟だけでは食べ切れそうになかったのだ。
ケデール「勿論です、是非お持ち帰りください。」
ヤンチ「やはりどんな料理でも出来立てが美味いですからね。」
2人から弁当を受け取った好美は即座に『瞬間移動』で自室へと帰って行った、慌てん坊の大家の背中を追う様に肉屋の店主が声を掛けようとしたが間に合わなかった様だ。
ケデール「好美さん・・・、まぁ、良いか・・・。後で分かる事だし。」
ヤンチ「何を言おうとしたんだよ。」
ケデール「別に、大したことじゃ無いよ。帰ろうか、「兄さん」。」
ケデールの口から自然に「兄さん」という言葉が出る様になった丁度その時、好美が到着した先では「大した事」が起こっていた。
好美「守!!何でいんのよ!!」
そう、仕事に行っているはずの守が半休を取って家にいたのだ、きっとケデールが伝えようとしたのはこの事だったのかも知れない。ただ、問題はそこではなかった。
好美「ねぇ、家に帰って来る時には制服から着替えてって言ってんじゃん。何度言ったら分かんの?!」
好美の家に住み始めた頃は着替えて帰って来ていたが、環境に慣れてしまったが故に最近は忘れがちになっていた。お陰で部屋が豚舎と同じ臭いに・・・。
守が恋人に怒られている一方で、秀斗と美麗は2人でダンラルタに置いていたトラックに乗り込んでいった。
秀斗「ねぇ、別にトラックに乗って運ばなくても『瞬間移動』や『転送』を使えば良いんじゃないの?正直、そっちの方が楽だし。」
秀斗が言った事は確かに正論だ、しかし美麗も引き下がらなかった。
美麗「良いじゃん、積もる話もあるだろうしお互い時間もあるんだからゆっくり行こうよ。」
秀斗「あ・・・、はい・・・。分かりました・・・。」
-72 ヒーロー、いやヒロイン-
秀斗が前日まで住んでいたマンションの前でトラックの運転席に顔を赤らめながら乗り込む様子を見る限りでは、美麗は懐かしい思い出に浸りたかったかも知れない。
久々の再会に心から興奮したのか、美麗は少し強めに鍵を回してギアを「2」に入れてアクセルもまた強めに踏んでエンジンを蒸かした。
秀斗「美麗、大丈夫なのかよ・・・。このトラック、まだこっちの仕様にしていないの?」
美麗「ごめんごめん、元々古いトラックだから少し強めに蒸かさないと動かない時があるのよ。それに・・・、こっちの仕様って?」
嘘だ、この(元々)王麗所有のトラックは美麗が亡くなる数日前に買い換えたばかりだった物だ。まぁ、買い替える原因を作ったのは美麗本人なのだが今は本人の為に内緒にしておこう。ただ、女将本人の拘りである「MT」を探すのにかなりの苦労をした事は美麗には伝わっていない。
一先ず今言える事は、美麗自身がこの世界に来たばかりなので車が元の世界の仕様のままであるが故に「あの問題」が発生しようとしていた。
秀斗はバルファイ王国からネフェテルサ王国へと直通している道路上でトラックを運転している恋人が額に汗を滲ませている事に気付いた。
美麗「どうしよう・・・。」
この言葉から秀斗は確信した、元の世界でもよく発生する(?)あの問題だ。
秀斗「美麗、まさかガス欠か?」
美麗「いや・・・、まだ1目盛上なんだけどさ・・・、この辺りってガソリンスタンドってあるかな?」
読者の方々はご存知である事と信じたいが、この世界にはガソリンスタンドどころか石油が存在していない。この世界の車は全て所有者の魔力で動いているので必要ないからだ。
秀斗「参ったな・・・、何とかしてくれる人いないかな・・・。」
その時、本当に偶然だったのだが2人の乗った車両は貝塚財閥本社、そして貝塚学園魔学校の前にいた。
秀斗「そう言えば、「アイツ」がこの世界にいるって守が言っていたな。電話番号はっと・・・。」
トラックを道端に止める様にと指示した秀斗は携帯を取り出して貝塚学園魔学校の番号を調べ、適当に見当たった番号から1つを選んで電話を掛けた。
数コールの後、とある男性が電話に出た。
男性(電話)「お電話ありがとうございます、貝塚学園入学センターです。」
電話に出たのは入学センター長を兼任するバルファイ王国警察のリンガルス警部だ。
秀斗「突然のお電話申し訳ありません、貝塚結愛さんはいらっしゃいますでしょうか。」
リンガルス(電話)「あの・・・、当校の理事長とどの様なご関係で?・・・っと、少々お待ち頂けますか?」
確かに怪しまれても仕方ないが、2人の会話を『察知』したネクロマンサーが警部に直接『念話』を送った様だ。
そして、数十秒後・・・。
リンガルス(電話)「大変お待たせいたしました、お持ちの携帯電話の番号を直接理事長の貝塚にお伝えしても宜しいでしょうか?」
秀斗「分かりました、宜しくお願いします。」
それから数秒経過した後、見覚えのない番号から秀斗の携帯に着信があった。勿論、相手は貝塚財閥代表取締役社長兼貝塚学園理事長のあいつだ(長い・・・)。
結愛(電話)「もしもし、秀斗か?お前、本当に秀斗なのか?」
秀斗「俺だよ、金上秀斗だよ・・・。その証拠として隣に美麗もいるから替わろうか?」
結愛(電話)「いや、取り敢えず用件を聞いてからだ。」
秀斗は親戚である社長に今乗っている車両について簡潔に説明した。
結愛(電話)「成程な、ネフェテルサにある珠洲田自動車まではまだ距離があるだろうし・・・。分かった、俺が何とかするから学園まで乗って来い。」
いざという時、そしてこう言った緊急時に頼りになるのが貝塚結愛社長だ。
-73 代替品として渡された好物の記憶-
スマホで結愛に状況を報告している秀斗の隣で、恋人からの指示でトラックを路肩に停車していた美麗は退屈になったので車両から降りて近くの自動販売機へと向かった。
美麗「喉乾いちゃった、秀斗もずっと喋ってるから暇になっちゃったよ・・・。」
車両を止めた場所よりゆっくりと歩きながら懐から財布を取り出して小銭を入れていた場所を開けた美麗、中身を確認すると100円玉が4枚入っていた。
実はと言うとこれは美麗が元の世界にいた時からいつでも水分補給が出来る様にと必ず行っていた事で、この世界でも役に立ったので過去の自分の習慣が功を奏した様だ。
美麗「そうだ、秀斗の分も買っておこうかな。えっと・・・、コーラと強炭酸水を買っておいたら大丈夫だよね。」
先程の秀斗もそうだがいつの間にか互いの事を名前で呼ぶようになっていた事は触れない様にしておくとして、ただ今更ながら美麗には少し不安になっていた事があった。
美麗「そう言えば私、日本のお金しか持って無い・・・。どうしよう・・・。」
ビクターにより日本円でそのまま買い物が出来る様にこの世界自体が作り替えられている事を未だに理解しきれていない美麗は、恐る恐る小銭を自販機に投入していった。
当然の様に反応した自販機は「ピッ・・・」と言う音を出し、「ガシャン・・・」と言う音と同時に飲み物を吐き出した。
美麗「良かった・・・、普通に買えるじゃん。助かる・・・。」
安心して路肩に止めているトラックに戻ろうとする美麗に、秀斗が車両の窓から顔を出して優しく声を掛けた。
秀斗「美麗、結愛に話がついたからすぐそこの貝塚学園に行こうか。車を回して貰っても良いかな?」
決して上から命令する様にではなく、飽くまで下手に出て優しくお願いする形を取る秀斗。そのお陰で美麗も気持ちが楽になって色々とやりやすくなっていた。
美麗「ねぇ、その前に喉乾かない?ジュース買ってきたよ。」
秀斗「え?ビールは無いの?」
流石にまだ引越し作業自体が終わって無い上に、美麗自身が運転中なのでまだビールはお預けと言っても良い状況だ。
美麗「ビールなんて持って無いよ(そうそう、後で後で)、持ってたら私が呑んでるって(馬鹿か、お前は)。」
秀斗「冗談だよ・・・、引っ越し作業が終わり次第だよな。」
美麗「引越し蕎麦と一緒に呑む予定だからそれまで我慢だよ、それでどっちにする?」
秀斗は美麗が右手に持っていた強炭酸水を選ぶと夏のビアガーデンでビールを楽しむ会社員の様な勢いで一気に煽った、強めの炭酸が体に流れ込む・・・、すると・・・。
秀斗「はぁ・・・、これが一番決まるわ。」
美麗「やっぱりね、秀斗ならこっちを選ぶと思った。」
秀斗「美麗・・・、覚えててくれたんだ。」
美麗「当たり前じゃん、うちの店でランチタイムにいつも強炭酸水ばっかり飲んでたから覚えたくなくても覚えちゃうって。」
2人がまだ学生だった頃、テレビで「炭酸水が体に良い」という事を見かけた王麗の発案で客たちの健康を気遣い店で扱い始めた事をきっかけに、秀斗はランチを食べに「松龍」へ来ると必ず炭酸水を飲んでいたのだ。美麗は大学の授業が休みだった土日、ランチタイムで店の手伝いに入っていた時に秀斗が毎回炭酸水を飲んでいた事をずっと見ていた。
ただ、当初は「強」が無かったので・・・。
秀斗(当時)「ねぇ、女将さん。強炭酸水は無いの?」
王麗(当時)「炭酸水自体試しなんだよ、そんなに強いのが欲しいのかい?」
秀斗(当時)「刺激が欲しいんだよ、良かったらおいてくれない?」
王麗(当時)「分かったよ・・・、じゃあ今度試しに卸業者に頼んでみるね。」
そう、この2人の会話をきっかけとして新たに「強炭酸水」が置かれるようになったので嬉しくなった秀斗はランチタイムにずっと「強炭酸水」を飲んでいたのだ。
美麗「正直、店で「強」を頼んでいたの秀斗と数人だけだったんだよ。そりゃ覚えるって。」
-74 移動に車が必要な位の巨大な学園-
まるで日本の高速道路みたいにバルファイ王国からネフェテルサ王国へと延びる舗装された直進道路の路肩で、美麗が買って来た飲み物で一息ついた2人は改めてトラックに乗りこんで貝塚学園へと向かった。秀斗が言うには結愛が話を付けておくので先程の電話で話したリンガルス入学センター長の所に行って欲しいとの事だ。
車両をUターンさせた美麗は秀斗の案内で学園の校門へと向かい、大きな校門の隣にある守衛室らしき小さな建物の前に車を止めた。
美麗「ここが・・・、異世界の学校なの?」
秀斗「貝塚学園魔学校だよ、高校と大学、あと貝塚財閥本社が併設されているんだけど改めて見ると広くて建物がデカいな・・・。」
東京ドーム約70個分の敷地に魔法大学各学部の講義棟、そして高等魔学校の校舎や部活棟に共通体育館等が建ち並んでいた。
引越しの荷物を載せたままなので校舎前の運動場で体育の授業を受けている高校生と思われる女子生徒達から目立って仕方がない、その内の2名がこちらへと視線をぶつけて来ていたので尚更だったが体育教師の一言で授業へと戻って行った。
生徒①「誰だろ・・・、あんなに沢山荷物持って大学に用事がある人達かな。」
生徒②「この辺では見かけない人たちだね・・・、転生者とか?」
生徒①「母さんに帰って聞いてみようかな、この辺の事詳しいはずだから。」
体育教師「おーい、ダルランとチェルド!!何をじぃ~っと見てんだ、集合だからすぐに戻って来~い!!」
生徒②「まずい・・・、アイツうざいから早く行こう。」
生徒①「そうだね、走ろうか。」
そんな中、美麗と秀斗は未だに生徒達からの視線を感じながら守衛室内にいる男性に声を掛けた。
美麗「あの・・・、すみません・・・。」
男性「お待たせいたしました・・・、恐れ入りますがどちら様でしょうか?うちは配送業者では無いのでそんなに多くのお荷物をお持ちになられましても困るのですが。」
秀斗「いや、そういう訳じゃなくてですね。えっと・・・、入学センターのリンガルスさんに用があるんですが。」
男性「そうですか、失礼致しました。先程入学センターにいるリンガルスから連絡があったんですよ、貴方達の事でしたか。」
美麗「突然の訪問ですみません、それで入学センターはどちらでしょうか?」
男性「入学センターですね、ご案内致しますので少々お待ち頂けますか?」
男性は建物の奥にいる別の男性に話をつけて、鍵を片手に建物から出て来た。
男性「こちらも車でご案内致しますので、お車に乗ったまま後ろに御同行ください。」
そう一言告げると、近くに止めてあった軽トラへと乗り込んでハザードを点滅させながら2人の乗るトラックの前をゆっくりと走りだした。美麗がその後ろをただただついて行くと、校舎と思われる建物の間を縫うように張り巡らされた道路を進んで行くようだった。
それから5分程走っただろうか、男性のは敷地内で一番高い建物の前に停車して2人の下に近付いて来た。
男性「運転お疲れ様でした、こちらが貝塚学園本部でございます。こちらの1階になります、では私はこれで。」
男性は再び軽トラへと乗り込むと先程来た方向へと戻って行った、2人はトラックから降りて建物へと足を踏み入れた。
秀斗「入学センターね・・・、何処だろう・・・。」
美麗「秀斗、あそこに案内板があるから見てみようよ。」
美麗が指差した方向に目線をやると、そこには2人が今いる1階から結愛のいると思われる社長室がある最上階への詳しい案内が記されていた。
美麗「入学センターは・・・、そこの2番目のドアだね。」
2人は案内に従って誰もいない廊下を歩き、2番目のドアを開いて中に入った。部屋の奥でリンガルスが1人ゆっくりと香りを楽しみながら鼻歌交じりで珈琲を淹れていた。
秀斗「すみません・・・、リンガルスさんはいらっしゃいますか?」
リンガルス「ああ・・・、先程のお電話の方ですね?お待ちいたしておりました、理事長の貝塚からお2人をご案内する様に申し付かっておりますのでご一緒にと言いたいんですが・・・。」
-75 旦那にも言っていない秘密-
何も考えずに2人を結愛のいる社長室へと案内すればいいはずのリンガルスの様子は何処か変だった、ずっと2人の前で頬をかいてばかりだったのだ。
秀斗「「ですが」・・・、って何ですか。案内して頂ければ済む話じゃないですか。」
秀斗が言っている事は正論だ、リンガルスも否定している訳ではない。
リンガルス「確かに仰っている通りなんですがね、実は・・・。」
美麗「「実は・・・」、何ですか?」
入学センター長兼バルファイ王国警察警部の様子はどう見ても異常だ、ただその理由が分かったのはすぐの事だった。
リンガルス「もうこちらに理事長が来ているんですよ・・・、多分。」
秀斗「何で「多分」なんです?」
本当にリンガルスが言う通り結愛がこの場にいるのなら2人の目の前にいてもおかしくはない、しかしリンガルス自身もまだ分かっていない状態だった様なので2人は辺りを見廻して見たが3人以外部屋には誰もいなかった。
美麗「貴方は先程から何を言っているんです?私以外いないじゃないですか。」
秀斗「俺達引越し作業の途中で困っているから来たんです、ふざけないで頂けますか?」
リンガルス「いや・・・、私だってこうしたくはないんですがね。「そろそろ」かな・・・。」
そう答えたリンガルスは不安そうになりながら部屋の隅にある膝位の高さの小さなドアを開けた、中から金庫みたいにダイヤルが付いた重厚な扉が現れた。
その様子を見た秀斗はより一層苛立ち始めた、しかし冷静になる為に自分の頬を抓って我慢した。
秀斗「あの・・・、俺達金が欲しい訳ではないんです。結愛に用事があるから会いに来たんですけど。」
リンガルス「存じております、ただもう少々だけ・・・。」
そう言うとドアを2回ほど優しくノックした後にダイヤルをゆっくりと回し始めた、ドアの見た目のせいか宝物が出て来そうな雰囲気と静寂が辺りを包み込んでいた。
数秒後、「カチッ」という音と同時に扉の鍵が開いたのでリンガルスが扉を開けると、中には電灯で明るく照らされた空間が広がっていた。中の見た目は金庫そのものと言うよりまるで「応接間」の様になっていて、高級そうな椅子とテーブルが並べられていた。
リンガルス「あれ?いないな・・・、とりあえずこちらでお待ち頂ければ大丈夫と思いますので。」
リンガルスは2人を部屋に案内すると1人外へ出てまた鍵をかけてしまった、このままだと部屋から出ることが出来ない。2人は意味も無く捕まってしまったのだろうか、それとも結愛が来るまで脱出ゲームでもやってろと言うのだろうか。
そう思いながら数秒が経過した後、結愛が『瞬間移動』して部屋へとやって来た。
結愛「2人共待たせて悪かったな、それにしても本当に秀斗なんだな・・・。」
秀斗「お前もこっちの世界にいるとは聞いてたけど本当とはな、世間って狭いんだな・・・、って言っている場合じゃないだろ!!この部屋何だよ!!外から鍵閉められたぞ!!」
結愛「ここはな・・・、俺しか使わない隠し部屋なんだよ。」
実はこの部屋、結愛自身が人事等を中心とした業務について1人で集中して考えたり突然の来客(特に友人)があった時に使う為の物だったのだ。因みに、副社長である旦那の光明はこの部屋の存在を知らない。
結愛「それで・・・、本当に美麗もこっちに来たんだな・・・。えっと・・・、例のトラックは外に止めてんのか?」
美麗「この建物の前だけど。」
結愛「分かった、じゃあ建物前まで送るから外で待っててくれるか?」
結愛はリンガルスに『念話』を飛ばした後で部屋の外、そして建物の前まで2人を案内した後で『瞬間移動』で社長室へと向かった。
秀斗「あいつ「何とかする」って言ってたけど自動車整備とか出来るイメージ無いんだけどな・・・。」
美麗「そうだね、私も聞いた事ないかな。」
2人がそう話していると、噂の社長は1人の従業員を連れて戻って来た。
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