7. 異世界ほのぼの日記3 61~65


-61 「あれ」の正体と副店長のやらかし-


 拉麵屋の前で1人話について行く事が出来てない秀斗は、美麗が以前「あれ」を使った時には既に元の世界からいなくなっていたので2人の言う「あれ」が何なのか気になって仕方がなかった。ただ、隣にいた守は会話の流れから分かっていた様で・・・。


守「確か美麗、「あれ」でドリフトしたって聞いたけど。」

美麗「いやー、成功した時はスッキリしたよ。一度やってみたかったんだよね、「ドリフトでピッタリ駐車」。」

好美「だからって「あれ」でやらなくても良いじゃない、自分のがあるでしょ。」

美麗「よく言うでしょ、「大は小を兼ねる」って。大きいやつで成功したら小さいやつでも出来る様になるはずだと思ってさ。」


 やっと美麗達の言う「あれ」が母・王麗所有のトラックである事が分かった秀斗は、内心スッキリとしていたが流石に車を持って来る事には抵抗があったらしい。


秀斗「美麗、使っただけでも怒られてるなら持ってくるなんてもっての外だよ。やっぱり『アイテムボックス』を使った方が良いって。」

美麗「ごめん、たださ・・・。」


 必死に止めようとする恋人の前で頬を掻きながら焦りの表情を見せた美麗。


美麗「もう、持って来ちゃった。」


 いつの間にか『転送』を会得した美麗が全員の反対を押し切って母所有のトラックを出現させると、辺りに土埃が舞い、ズーンと大きな地響きが鳴った。


好美「ゲホッゲホッ・・・、あんたね、「持って来ちゃった」じゃないの。持って来るにしても場所考えてよ、うち一応飲食店なんだけど。」


 ただ事態はそれ所ではなかった、地響き見驚いた客達やバイト達が一斉に飛び出して来たのだ。


客①「何だ何だ、地震でもあったか?」

客②「結構揺れたよね、私スープこぼしちゃったんだけど。」


 店の前でざわつく客達を必死に止めようとするバイト。


バイト「皆さん、落ち着いて下さい。きっと何も無いはずですから・・・、ってうわあ!!」


 どうやらバイトはトラックではなく、クォーツがいた事に驚いていた様だ。すると、バイトの声を聞きつけたデルアがお玉片手に出て来た。


デルア「おいおい、何やってんだよ。騒がしいったらありゃしねぇぞ。」


 未だに勘違いをしているバイトは、そのまま上司に報告した。


バイト「副店長、古龍(エンシェント・ドラゴン)です!!古龍が降りて来ました!!」


 どうしてバイトが『人化』したクォーツを見て古龍だと分かったのか不明である中、デルアはずっと店外の様子をチラチラと調理場の小窓から見ていた様だ。


デルア「何言ってるんだお前は、クォーツ神様はさっきからここにいらっしゃったじゃないか。ほら、あの赤いトラックが出て来て・・・、って何でトラックが赤なんだよ。」


 そこにいた全員に「突っ込む所そこかよ」と言われていたデルアは、バイトとは別の勘違いをしていた。


デルア「好美ちゃん、駄目じゃないか。必要だからっていきなりトラック出しちゃ。」

好美「何で私なの、私免許持って無いもん!!」

美麗「すみません・・・、私です・・・。」

デルア「何だ君か・・・、だったら良いや。」

好美「何で美麗なら許す訳?!ぶー!!」


 副店長の言動に頬を膨らませて拗ねたオーナーは、「ムカついたから」という超個人的な理由で2か月分の給料を40%程ダウンさせる事を密かに決めたらしいが今の問題はそこではない。


好美「「持って来ちゃった」ってどうすんのよ、龍さんも女将さんも警察の人間なんだからバレたらまずいって。」

クォーツ「好美・・・、それがさ・・・、もうバレてるみたいだぜ・・・。」


-62 自分勝手な娘と頭を抱える母-


 焦っていた好美に申し訳なさそうに声を掛けた女神は、夫婦が店(と言うよりマンション)の駐車場に仕掛けた監視カメラの映像を何回も再生している様子を全員に見せた。誰もいない駐車場から突如王麗のトラックが消失している。「流石にまずい」と思った美麗が急いでトラックを『複製』して元の世界へと戻すと、先程「暴徒の鱗」で起こった地響きが「松龍」で起こった。


王麗「ど・・・、どう言う事だい・・・。」


王麗はトラックがいきなり出現したので泡を吹いて倒れてしまった。


龍太郎「母ちゃん!!母ちゃん!!しっかりしろって・・・、母ちゃん!!」


 必死に妻の肩を叩く龍太郎、どうやらその努力が報われた様で・・・。


王麗「す・・・、すまないね・・・。もう大丈夫だから、水を1杯貰えるかい?」


 部下であり、大切な妻である王麗をも失いたくなかった龍太郎は喜び勇んで調理場へと駆け込んでグラスいっぱいに水を注いだ。


龍太郎「母ちゃん・・・、ほら・・・。」


 旦那から受け取った水を一気に煽ると、王麗は落ち着いた様子で何かを思い出した。


王麗「そう言えば、美麗の葬儀の時も不思議な事があったね。確か・・・、龍が飛んできて女神様になって・・・、「美麗がどう・・・」とか言っていた様な・・・。」

龍太郎「じゃ・・・、じゃあ・・・、これも美麗が絡んでいるってのか?」


 龍太郎の推測は当たっていたらしい、真実が判明したのは王麗がトラックをいつもの場所に戻そうとした時だ。


王麗(中国語)「あの子ったら・・・、ちゃんと戻しなってあれ程言ってあったじゃないか。それに戻し方も相変わらず雑だよ、今回はドリフト以上に酷いし・・・。まぁ、幸せそうにしているみたいだから良い事にしておくかね。ただ、今度やったら容赦しないよ・・・。」


 女将は助手席に置かれた1枚の手紙を見つけて涙ぐんだ。


龍太郎「母ちゃん・・・、どうかしたか?」

王麗(日本語)「ああ・・・、ごめん・・・。ちょっと見てくれるかい?」


 2人は異世界にいる娘からの手紙に目を通したが、何故か中国語で書かれていたので龍太郎は妻に日本語で読む様に依頼した。


ママへ


 パパと元気でやってますか?私は先日の火事をきっかけに異世界にやって来ました。確か・・・、女神様が2人の所に行ったはずだから分かってくれるよね。

 今回、ママのトラックを借りたのは誠に勝手ながら金上秀斗君(かんちゃん)と同棲生活を始める事になったので香奈子の時の様に引っ越しをする為です。

 一先ず、秀斗や好美や守君とも再会したので何とかやっていけそうな気がしています。

時々ですがこうやって手紙をよこそうと思うので、気が向いたら読んで下さい。


美麗 


王麗「呆れた子だよ、あっちの世界でも好き勝手やってるみたいだ。」

龍太郎「まさか俺達に何の相談も無しにかんちゃんと同棲生活を始めちゃうとはな、相変わらず笑わせてくれるぜ。まぁ、あいつとなら安心だわな。」

王麗「あれ?まだ続きがあるよ・・・。」


 王麗は名前の下に書かれた追記(P. S. )へと目をやった。


 P. S. トラックのガソリン無くなっちゃったから入れておいてね、よろしく~。


王麗「あの子ったら、我儘ぶりも健在だよ。いつも通り、「小遣いから引いておく」からね。」


 一方、「暴徒の鱗」でクォーツの映像を通して2人の様子を見ていた美麗の顔が蒼白していた。


好美「美麗、どうかした・・・?顔色悪いよ?」

美麗「実はさ、「小遣いから引いておく」って、「お説教確定」の暗号なんだよね・・・。」


-63 救世主は板長-


 映像に映る母の一言による「お説教確定」でビクビクしていた美麗は、王麗のトラックを『複製』して好美のマンションの前に出現させたのは良いが既に酒が入ってしまっているので運転して駐車場に持って行くわけにも行かなかった。


好美「というかあんた、駐車場の契約もしてないよね・・・。それにうちの駐車場って普通車しか入らなかったはずなんだけど・・・。」

美麗「嘘でしょ?!無理なの?!」


 友人としてではなく、住人の1人として落胆していた美麗


好美「いや、中型車の駐車を想定してなかったからな・・・。ちょっと待ってね・・・。」


 決して焦りを見せる事はせず、落ち着いて契約する不動産屋に連絡する好美。


好美「もしもし?倉下ですけど、今お電話大丈夫ですか?」

不動産屋(電話)「もし・・・、もし・・・。ちょっと待って・・・、下さい・・・、ね・・・。」

好美「あの・・・、何か食べてます?」

不動産屋(電話)「すみません・・・、給料日だったもんで少し贅沢しようかと天丼を食べてました。」

好美「もしかして・・・、ちょっと前からヤンチさんの所がランチタイムで出し始めたっていうあの「名物天丼」ですか?」

不動産屋(電話)「そうなんですよ、ヤンチ板長って焼き肉屋さんですけど和食に通じている方じゃないですか。一度でもいいから死ぬまでに食べてみたいと思ってたんですよね。」


 数カ月前からランチタイムにやって来た客から「焼肉ランチ以外にないのか、魚介系があれば嬉しい」という問い合わせが多くあったので魚屋のジューヌの店と契約して天丼や刺身定食と言った海鮮系統のランチを出し始めたのだそうだ。


不動産屋(電話)「ヤンチさんって凄い方ですね、こんなに衣がサクサクの天丼初めて食べましたよ。いやね、以前から海鮮丼は食べていたんですけど今日は奮発して天丼にしちゃいました。」


 どうやら客席で幸せそうに語る不動産屋の声が調理場まで聞こえていた様で、洗い物を済ませた板長が会話に参加して来た。


ヤンチ(電話)「もうすっかり常連になってるピケルドさんにそう仰って頂けると嬉しいですね、ネクロマンサーの方って味にうるさいってお聞きしていましたが。因みに相手の方はどちら様でしょうか?」

ピケルド(電話)「倉下さんですよ、倉下好美さん。」

ヤンチ(電話)「あらま、すっかり有名人の好美さんでしたか。」


 ヤンチに気を利かせてスピーカーフォンに切り替えたピケルド。


好美「もう、有名人だなんてやめて下さいよ。結愛の方がよっぽど有名人じゃないですか。」

ヤンチ(電話)「何を仰っているんですか、この世界で貝塚社長を名前で呼べる数人の内の1人なんですから。それにマンション経営を中心に成功している好美さんが羨ましくて仕方ないですよ。」

好美「そんな・・・、私何もしていませんから・・・。」


 大型マンションの大家と焼き肉屋の板長が和気あいあいと会話している内に急いで贅沢なランチを食べ終えた不動産屋の支店長は、思い出したかのように電話に戻った。


ピケルド(電話)「すみません、お待たせしました。それで今日はどの様なご用件で?」

好美「実はですね、少し確認したい事があるんですよ。」

ピケルド(電話)「確・・・、認・・・、ですか。私で宜しければ何でも仰ってください。」


 今回の電話の用事を端的に伝えた好美、ただ答えたのはピケルドではなく・・・。


ヤンチ(電話)「確か・・・、「中型」はこの国で持っている人が少ないから普通車用の駐車場しか確保していないって以前言ってませんでしたか?」

ピケルド(電話)「そうでした、立体型も合わせて作りましたが全て普通車用だったと思います。」

好美「そうなんですか・・・、困ったな・・・。友人が中型を止める場所を確保したいって言ってまして。」


 好美の相談に応じたのは不動産屋ではなく板長だった様で・・・。


ヤンチ(電話)「だったら、うちの駐車場の1部を好美さんのマンション用にします?」

好美「良いんですか?助かります!!」


-64 駐車場探しから始まった商売話-


 電話の向こうにいる焼肉屋の板長の厚意により、中型車も置ける駐車場を借りる事が出来た好美。ただ、とある懸念材料を思い出していた。

 好美のマンションとヤンチの店はそれぞれ街を挟んで反対側に位置している、それが故に利用者としての目線から考えると、少々不便さがあるのだ。大家の表情から心中を読み取った板長は、好美を安心させようとこう伝えた。


ヤンチ(電話)「大丈夫ですよ、うちの店の駐車場と言っても今建設している2号店の物の事ですから。」


 実は数か月程前から弟のケデールの肉屋と業務提携を結ぶ事になり、その第一歩として好美のマンションの2つ隣に店を構える事になっていたのだ。因みに精肉店と焼肉や焼鳥を中心とした飲食店を合体させた形になる予定らしい。


好美「という事は・・・、うちの駐車場の隣にある場所を使っても良いという事ですか?」

ヤンチ(電話)「勿論です。一応多めに必要かと考えて広めに作ったんですが、私達の想定していた倍以上の広さになってしまっていたので困っていたんですよ。正直言ってこちらからもお願いしたい位です、是非ともご利用になって下さい(勿論、お金は頂きますが)。」

好美「あの駐車場って結構な台数を置けますよね、おおよそどれ位駐車出来そうですか?」

ヤンチ(電話)「一応・・・、荷物の運搬に使用する10~15台分と考えていたんですね、実はここだけの話、弟が間違えて発注した様で倍の30台分になってしまっているんです。好美さん・・・、私達をお助け頂けませんか?」


 ヤンチの切願する言葉に好美は一瞬顔をニヤつかせながら、冷静になって少しずつだが話を詰めていく事にした。


好美「(タダだけど)利用する方々には何か特典を付けるのはどうでしょうか。」

ヤンチ(電話)「そうですね・・・、一応はうちの店(2号店のみ)でのお買い物を2割引きにするというサービスを考えていますが(一応、金取る予定だから)。」

好美「(タダな上に)良いんですか?!そんなにサービスしちゃって!!」

ヤンチ「勿論です、空いて困っていたスペースをご利用頂けるので大盤振る舞いしちゃいますよ(お金貰えるから)。」


 何となく2人の会話に違和感を感じた美麗は、好美に小声で尋ねてみた。


美麗(小声)「ねぇ・・・、いくら何でも話が上手すぎない?中型用の駐車場の利用料の事って相談の内に入っている訳?」

好美(小声)「えっ?!タダでじゃないの?!」

美麗(小声)「流石に土地を借りるんだから、お金がいると思うんだけど。」


 電話を通して2人の会話が聞こえて来たヤンチは、恐る恐る好美に提案した。


ヤンチ(電話)「あの・・・、マンションに住んでいる方々は月家賃にプラス2000円での月極契約にしようと考えているんですけど駄目ですかね(因みに住民以外は1時間300円)?」


 よくよく考えてみれば、免許を持たない好美自身が利用する訳ではないので考慮する必要は無い。しかし、大家として住民の事を考えれば皆が平等にサービスを受けるべきだと思った。


好美「えっとですね・・・、2割引きのサービスは駐車場を使う人だけですか?それだと他の方々が何か言って来そうで怖いんですが。」

ヤンチ(電話)「確かにそうなり兼ねませんね、では住民の皆様を対象に出前をするサービスを考えてみましょうか。好美さんがオーナーをしている1階の拉麵屋さんの様に。」

好美「それ良いですね、ではその方向で話を進めてみましょうか。」


 2人が電話越しに話を盛り上げていく中、美麗は自分の駐車場探しから話が大きくなり過ぎていないかと不安になっていた。


美麗「何か・・・、違う方向に話が行ってない?「出前」って・・・、完璧にビジネストークになってんじゃん・・・。」

好美「美麗、チャンスは掴める時に掴んでおく物よ。稼げるときは稼ぐ、これがヤンチさんや私のやり方なんだから(今回は上手く商売されちゃったけど)。」


 ただ、話のきっかけとなった大家の友人の利用予定が気になっていた板長。


ヤンチ(電話)「因みにご友人の方は1台分のご利用を予定されていますか?」

美麗「いや・・・、会社の社用車も駐車出来たらなと思っていたんで2台分を・・・。」

ヤンチ(電話)「では、少しお安くさせて頂きましょう。後ほどご利用される駐車場番号をお教え願えませんでしょうか、優先して先に確保させて頂きますので。」


-65 大家が眠る裏で-


 時計の針が2時前を指し示し、好美が夜勤なので一睡すると戻った一方で一旦電話から抜けたヤンチは早速美麗の指定した番号の駐車場を確保する為に相談も兼ねて弟に連絡を入れた。ただ自分達が兄弟だという事自体が発覚して殆ど間もないというのに大丈夫なのだろうか、一先ず様子見してみようか・・・。


ヤンチ「ケデール、ちょっと時間あるか?」


 調理場の裏でオレンジジュースの入ったグラス片手に電話を掛けたヤンチ。


ケデール(電話)「に・・・、兄さん。どうした、唐突に。」


 未だヤンチの事を「兄」だと呼ぶ事すらうまく出来ないのに業務提携や店の経営など共に出来るのだろうか。


ヤンチ「慣れていないなら名前でも良いと何回も言っているだろう、まぁ、今は良いよ。実は例の駐車場の事なんだが、10~15台分を好美ちゃんのマンション用に貸し出す事になったんだが良いか?」


 いつの間にか「好美さん」から「好美ちゃん」に戻っている事は今はそっとしておこう、問題はそこでは無いだろう。


ケデール(電話)「嘘だろ、先に相談してくれよ・・・。まずい事になったな・・・。」


 電話の向こうで焦りの表情を隠せない弟、何があったのだろうか。


ヤンチ「「まずい事」って?」

ケデール(電話)「実は貝塚学園の通学用バスの一時駐車場として使わせて欲しいって結愛社長からさっき電話が入ってOKしちゃったんだよ。」


 正直言って人の事を言えないのはお互い様、やはり兄弟だからか。しかし、兄は決して焦りを見せる事は無かった。


ヤンチ「まだ大丈夫だよ、現時点では利用を予定しているのは2台分だけなんだ、まだ増えるかも知れんがそこは話し合いながらだろう。」


 すると、2人の会話を『察知』したのか、「噂の社長」から『念話』が。流石はネクロマンサー、話が早くて助かる。


結愛(念話)「あの・・・、お悩みの様でしたら私が好美と話しましょうか?」


 今回はビジネスでの話し合いの場なので、「大人モード」での対応だった。やはりそこは大企業の社長、オンとオフの切り替えが上手な様だ。


結愛「てめぇ・・・、何上から物言ってくれてんだよ。仕事サボって小説書いてるゴミクズ会社員が生意気言ってんじゃねぇ、お前と違って俺は社長なんだぞ。」


 な・・・、何かすんません・・・。圧が凄すぎるわ・・・。まさか登場人物とこんな形で話す事になるとは、避けては通れない事なのかね。ただな、その「ゴミクズ会社員」の妄想次第でお前の人生なんてどうにでもなるんだからな。


結愛「わ・・・、悪かったよ・・・。」


 まぁ、分かってくれたら良いんだ。じゃあ気を取り直して・・・・・・、と・・・。

 ライカンスロープ達に承諾を得た結愛は、早速好美に『念話』を飛ばして駐車場に関する相談を持ち掛ける事にした。


結愛(念話)「好美・・・、今大丈夫か?」

好美(念話)「・・・。」

結愛(念話)「聞こえてねぇのかな・・・、好美?」


 返事が無いのも無理は無い、好美は酒が回って熟睡していたのだ。仕方がないと思った結愛は好美の代わりとして守に一言連絡して伝言を頼むことにした。


結愛(念話)「守、すまね。好美に伝言を頼めるか?あいつ、熟睡しているみたいなんだ。」

守(念話)「そりゃそうだな、今夜仕事なのに大瓶5本丸呑みしてたから無理もねぇよ。」

結愛(念話)「ハハハ・・・、アイツは相変わらずだな、俺もドン引きしちまう位だぜ。」

守(念話)「誰だよ、好美を昔以上の酒呑みに育てたのは。」

結愛(念話)「悪かったよ、ただ一緒に呑める相手が欲しかっただけなんだ。」

守(念話)「はぁ・・・、お前らしい返答だな・・・。」

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