第20話 ねね子の家で試験勉強頑張ります!
「さぁ、みんな上がって、上がって」
おばあちゃんのせいで勉強も頑張らなきゃいけなくなった私は、勉強のために三人をうちに招くことにした。
うちの学校は期末試験の日程が早く、6月中旬過ぎには始まってしまう。
残る時間はあと一週間。
正直いって時間はない。
「ここがっ、将来の私のお家っ! ついにうちも億ションデビューや! よし、記念にうちの名前を柱に彫ったろ」
「こらこら、金ヶ森君、みっともないぞ。ほほぉ、これがねね子君の部屋か。どれどれ、どんな下着があるんだろうね。僕好みの穴あきショーツや透けブラはございますかな?」
「あんたら、止まれぇええ!」
犬みたいにはしゃぎまわる那由と、勝手に人の部屋に行こうとする関ケ原先輩。
知ってはいたけど、この二人はかなり危険だ。
関ケ原先輩に至っては丁寧語を使っている時ほど、危険度が高い。
当然ながら穴あきショーツもスケスケブラも持ってないよ。持ってるかっての。
「まったく、ねね子の家に来たぐらいで大げさなんだよ」
一方、香菜は何度かこの家に来たことがある。
実を言うと、引越しの手伝いだってしてくれたのだ。
そう意味では香菜には実家のような安心感を感じるね。
「ねね子、お風呂にする? それとも、わ、わ、わ?」
だが、しかし。
おかしいのはこいつも同じなのだった。
エプロンを身に着けて、まるで新婚ほやほやみたいなことを言い出している。
私よりも身長高いのにかがんで上目遣いしてこないでほしいし、「それとも、わたし?」って言うのが恥ずかしいのなら最初からやめて。
「今日はみんなで勉強するんだからねっ! 私、マジでやばいんだから」
私の高校は大学付属である。
しかも、かなり緩い学校である。
よって、勉強をそんなにしなくても大学には行ける(はずだ)。
焦らなくてものんびりだらだらしてればいいのさ、今は春なんだからとキリギリスばりに思っていたのだが、ここにきてこの仕打ちである。泣きたい。
「そんなにやばいか? 普通に授業受けてたらなんとかなるだろ?」
香菜は不思議そうな顔をする
そう言えば、彼女はヤンキーみたいな性格の割には、真面目なのだ。
この間、見せてもらった成績表には赤点なんかなかったように思う。
「あんた、モデルの仕事で忙しいのに、なんで勉強できるの?」
「いや、家ではほとんどやってないけど? 授業に出てればわかるんじゃないの?」
不思議そうな顔をする香菜に若干の腹立たしさを感じる。
この女、地頭がいいってやつなのである、きっと。
すごく成績がいいわけではないが、学校の授業に普通についていけるタイプ。授業中に宿題を終わらせちゃうタイプなのだ。
「ねね子君、安心したまえ。僕は勉強なんか、てんでダメだよ! 体育以外は全滅だ!」
笑顔で爽やかにそんなことを言ってのけるのは関ケ原先輩である。
ほっと胸をなでおろす反面、なかなか心配になる物言い。
「全滅ってどういう意味ですか?」
「さっぱりわからないってことさ! あ、でも一夜漬けをするから赤点はとらないんだよ、不思議だね」
先輩曰く、ほとんどの授業は寝ているか、妄想をしているか、落書きをしているとのこと。
それなのに赤点を取らないなんてむしろすごいって話である。
私みたいに授業をまじめに受けている割に成績が悪いって致命的なのではないだろうか。
要領が悪いのか、地頭が悪いのか、うぅ、考えるだけで辛くなってきた。
「ふふふ、勉強なら私に任せてください! 私は授業料免除の特待生ですからっ!」
ここで華麗に躍り出るのが那由である。
銀縁のメガネをかけて、髪をひっ詰め、どこからどう見てもお勉強のできる女子になっていた。
かわいくはあるけど、正直、ほとんど原型をとどめていない。
「授業料免除? そんなのがあるんだ」
「えぇ、成績が優秀な限りは授業料が免除されるんです! でも、成績が落ちたら、免除が解かれるんですぅうう。試験は私にとってデッドオアアライブなんですよ! ひぐぅ、私の気持ちが分かるか、ぬくぬくと育ったあんたらにぃいい」
泣き出した。
那由いわく、授業料免除を維持するためにも必死こいて勉強しているという。
彼女は何事においても頑張り屋さんなのであった。
「取り乱してしまい、申し訳ございません。ちなみに、ねね子さんは成績はどんな感じなんですか?」
「あ、えーと、こんな感じ」
「ひ」
恐る恐る、中間試験の成績を見せると、那由の表情が凍り付く。
「ほとんどアウトじゃないですかっ!」
「あははー、一人暮らしで油断しちゃったぁ」
そう、これも一人暮らしの弊害なのだった。
親と一緒に暮らしていた時には家庭教師が来てたし、それなりに勉強する機会もあったのだ。
私は環境が整うと、それなりに頑張るタイプなのである。流されやすいともいえるが。
だが、高校に入ってからは美味しいレストランやカフェの情報を調べる勉強がメインになってしまった。
結果、学校の勉強などする機会がなかったのだ。
「よし、ねね子のために頑張るか」
「頑張ろうね、ねね子さん!」
「ねね子君にはヤマ勘の当て方を伝授しようじゃないか!」
三人はそれぞれの方法で私をサポートしてくれるという。
なんてありがたいことだろうか。
「ありがとう、みんなっ! 本当に大好き!」
これで赤点クリアできたら抱きつきたいぐらいである。
私は三人の友情に感謝しまくりなのだった。
ちなみに関ケ原先輩のヤマ勘はめちゃくちゃよく当たり、結果として私は赤点を回避できたのだ。
先輩、あんたのこと、初めてちゃんと尊敬した。
【お嬢さまの体重】
+500g
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