第18話
夏休みに入り記録的な猛暑の中、俺と心とその他諸々のメンバーは遊園地内にあるジャンボ海水プールに来ている。
ガラガラの遊園地に対してプールはまさしく芋洗い状態だ。
「これ、女子と合流できるのか?」
「さすがに入り口で待っていれば見逃さないだろ?」
確かにオーラ的には見逃しようのない集団だ。だが、それは通常時のことで夏のマジックとでも言っていいであろう、非日常の魅惑のプールでも通用するのかはわからない。
大学生くらいの綺麗なお姉さんたちがキラキラなオーラを発しながら俺たちの前を通り過ぎ———、
「ね、君たち2人? 良かったら私たちと一緒に遊ばない?」
蒼眞と俺の身体をチラチラと見ながら話しかけてきた⁈
逆ナン? うわっ、さすがイケメン! 蒼眞効果すげ〜な!
そんなアホなことを考えながらも女子側の入り口を注視していると「お〜!」と言った歓声が聞こえ、思わず駆け寄った。
「おいっ、斗真置いて行くなよ!」
蒼眞の情けない声を無視し、人垣を掻き分けると一際鮮やかな集団がいた。
「キミたちかわいいねっ、一緒に泳がない?」
「ねえねえ、一緒に遊ぼうよ」
「あ〜、お待たせ。さあ行こうぜ」
あの手この手で連れて行こうとしているナンパ野朗たち。
「ごめんなさいねぇ、待ち合わせしてますので」
年長者の雨宮先輩がのらりくらりと囲みを突破しようと試みるがいかんせん、何重にも敷かれた包囲網の突破には馬力が足りない。
「あっ、斗真くん」
どうしようかと迷っていたところで心が俺を見つけて声をあげた。
「ま、眩しいっ!」
プールに舞い降りた天使の満面の笑み。周りを神々しい光が包み……いや、まあ日差しが強いってだけなんだが、水色のダボっとしたパーカー姿の心が人垣の合間をぬって飛び込んできた。他のメンバーは置き去りだ。
「お待たせしてごめんなさい」
至近距離からの笑顔とパーカーの隙間から見える白の水着に胸の鼓動は高まるばかり。
「あ、いやこちらこそ」
平静を装いながら答えるものの、俺の胸に耳をピタっとつけた心にはバレバレらしい。
「おいおい、こっちが先に———」
「それを言うならこっちは一緒に来てるんだけど? それにあまり騒がない方がいいよ。すでに
クイクイっと指で指し示す先には監視員が騒ぎを聞きつけて様子を見にきていた。
「げっ、まじかよ」
ここは地域でも屈指の巨大プール。勿論トラブルなんかも日常茶飯事ってことで、監視員もライフセーバー並のマッチョマンが採用されている。
「ちょっと遅いじゃない斗真」
「文句言われたってこの混雑だからな。蒼眞なんて向こうで女子大生のお姉さんに逆ナンされてるぞ?」
「なんでそれを1番に言わないの!」
なぜか朱莉に逆ギレされ、弁解の余地もないまま俺と心は置き去りにされた。
「これ、後から合流できるか? ってかあいつらも蒼眞見つけられるか?」
当たり前だがプールにスマホは持ち込めない。合流場所をあらかじめ決めておくべきだったな。
「仕方ありませんね! みんなを探し回って時間をロスするよりも、2人の時間を楽しむ方が効率的です」
ギュッと腕に抱きついてくる心だが、こころなしかさっきよりも谷間がくっきり見えるようになってないか? たまたまパーカーのチャックが下がっただけだよな?
胸に抱え込むように俺の左腕に抱きついてるものだから感触がダイレクトに伝わってきて、非常に心臓によろしくない。その上、ときどき効果確認のように俺の胸にピッタリと顔をつけてくる。
『効いてる効いてる』
幼い頃の思い出がふと蘇る。あの子もイタズラするときは確認しずにはいられないような子だったな。
俺たちのプールイベントは初っ端からトラブルに見舞われることとなった。
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