ウサギ

 太らせてから食べるのかしら。怪我の手当をしてくれてご飯もくれた。

「大慌てで電話して来て何かと思えば野ウサギの怪我とは」

 呼ばれた獣医が呆れた。

「今時トラバサミを仕掛けるなんて信じられるか!?」時代の遺物のベアートラップ、レッグホールドトラップの無断使用は禁止されている。

「なあジュリアン、歩くのに不自由じゃ野生じゃ生きて行けないから太らせて食おうぜ」

「飼うよ」

「食わないのか?」

「ペットでも飼えと言ったのはお前だろ、ロブ」

「食わないなら餌をやり過ぎて太らせるなよ」

 ウサギは栗色の毛皮に茶色の目をしていた。ジュリアンは銀色の髪と灰色の目をしている。

「ごめんな。かわいそうに」

 そう言って撫でられた。謝らなくていいのに。助けて貰ってご飯を貰って申し訳なく思う。お礼を言いたくてもウサギは喋れない。どうしたらいいかしら?

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