もっと

愛し方を、知りたかった。

「ねぇ、佑実ゆみちん……」


「何よ、糺媟こうな


「私さぁ……」


「あぁ……、そう来るか。泣きたいなら、早く言いなよ」


ぼやぁ……。


(やば……ほんとに涙出て来たヨ……もう、吹っ切れたつもりだったんだけどな……)


「伸びた前髪とかさ」


「うん」


「あんまし、長くない指先とか」


「うん」


「なんか知らんけど、いっつも跳ねてたんだよね、襟足」


「うん」


「髪の毛、ぐるぐるぐるぐる……分厚い手で……」


「うん」


「髪の毛……、薄茶色に……褪せてて……さ……」


「そうだったね」


「眠る邪魔もしたな」


「そうなの?」


「調子乗って悪戯しすぎて、ウザがられた……」


「はは。糺媟しそう。たまに、あたしにもウザいもん」


「それ、言うかな……。でも、私、褒めてもらいたがりじゃん?」


「うん」


「ラーメンも……飽きなかったじゃん?」


「うん」


「車の助手席が、一番幸せな場所だったんだよ」


「だね」


「すべてを知りたかったし、なりたかった……」


「分かる気がする」


「でも、なんも知らなくて……なんも出来なかった……」


「そうだね……」


「もっともっともっともっともっともっと」


「……」


「深く、愛したかったなぁ」


「……コップ一杯……涙流したんだから、きっと、愛してたんだよ。大丈夫じゃん?」


「……だと、いいなぁ……」




―END―

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

もっと @m-amiya

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ