The Apocalypse METTAZASHI Shrine

「ナメクジ爆撃機ってなんだよ! ってか、なんでナメクジが空を飛んでんだよ!?」


 オレは頭がおかしくなりそうだった。おっさんは元々頭がおかしいが、今までオレは至って正常だったのだ。なのに急にあんな変な物を見せられて気が触れない方がおかしい。


「そんなこと今はどうでもいい! それよりマサキ、ワシらは今すぐにここから逃げなければならん!」


「逃げるってどこに!?」


The Apocalypse ジ・アポカリプス METTAZASHI Shrine・滅多刺し神宮じゃ!」


The Apocalypse ジ・アポカリプス METTAZASHI Shrine・滅多刺し神宮!?」


 The Apocalypse METTAZASHI Shrineとは村の中央にある土地だけ無駄に広い神社のことだ。数年前に建設されたものの、村の人々にはすでに信仰する土地神がいたのでここに訪れる人はいなかった。いや、オレとおっさんはよく顔を出しに行っていたか。


「あんなとこに行ってどうするんだよ! あのナメクジに爆撃されて焼け野原になるのが目に見えてるって!」


「いいから付いて来いマサキ!」


 そう言うとおっさんは抱き枕を抱えて走り出した。他に行く宛も無かったので、仕方なくオレもおっさんの後を追った。


 The Apocalypse METTAZASHI Shrineまではそう遠くなかったのですぐに着いた。塗装の剥げた鳥居には「ジ・アポカリプス・滅多刺し神宮」という木でできたプレートが乱雑に打ち付けられていた。

 ここに来るまで他の村人の姿を一切見ることはなかった。なので、村のみんなは無事なのだろうかとオレは少し心配になった。


「神父~! ワシじゃ!エレベーター上下が来たぞ~」


 おっさんは大きな声で境内に向かって叫ぶ。境内は壊れた洗濯機や羽の取れた扇風機、画面に大きなヒビの入ったテレビと多くのガラクタで溢れかえっていた。

 とても神聖な場所である神社には見えない。まだ、ゴミ廃棄場と言われたほうが納得がいく。


「うるせぇなぁエレベーター。ちゃんと聞こえてるっつーの」


 本殿の方から面倒くさそうに茶髪でロン毛の男がタバコを吸いながら出てきた。彼の名前は墨念仁ぼくねん じん


 このアポ神宮の神主なのにも関わらず、自身のことを神父ゴッドファーザーと名乗っている。そもそもここの正式名称が神宮なのか神社なのかもはっきりしていない。数ヶ月前に見たときは看板が「ジ・アポカリプス・滅多刺し神社」だった。


 仁さんは髪はボサボサで、ヒゲも手入れされておらず、全く清潔感がないが、素がイケメンなので何とかなっている。ちなみに彼はまだ30代とのことだ。


「おっ、坊主も来たのか。ちょうど飯も出来てるんだ。一緒に食おうぜ」


「マジ!? 食べる食べる!」


「ワシは?ワシは!?」


「お前にやる飯はねぇよ」



 ◇ ◇ ◇


 仁さんに連れられて本殿の中に入る。するとそこには、いかにもな感じのラーメン屋があった。


 そう、アポ神宮は普段は「麺屋アポカリプス」という名前でラーメン店を営んでいるのだ。


 オレとおっさんはカウンター席に座る。


「あいよ、お待ち! 特製滅多刺しラーメンだ! 残したら滅多刺しにするからな!」


 仁さんは威勢よく、オレとおっさんの目の前にこの店の名物である滅多刺しラーメンを出す。先程、おっさんに出す飯はないだの仁さんは言っていたがちゃんとおっさんの分もあった。


 ラーメンは豚骨ベースで、黄金色に輝く細麺の上にはこの村で採れた新鮮なネギともやし、焼け具合が絶妙なチューシュー、そしておっさんの手作りというメンマとナルトが載っていた。

 見ているだけでよだれが止まらない。


「「いっただきま~す」」


 オレとおっさんは割り箸を割り、ラーメンを啜りだした。口の中に広がる豚骨の風味と麺が醸し出すハーモニーがネギやメンマなどのオーケストラによって奏でられていく。ついでに遠くから聞こえる爆発音もいいアクセントだった。


――あぁ、生きていてよかった。


「「ごちそうさまでした!」」


 オレとおっさんはものの数分で滅多刺しラーメンを完食する。走ってきたからお腹が空いていたのだ。食欲が満たされ、今度は眠くなってきた。いい天気だし今日は昼寝でもしようかな。


 あれ? 何か忘れているような……


「こんなことしている場合じゃねぇ!」


 オレは勢いよくカウンター席から立ち上がった。


「おいおい、どうしたんだよ坊主」


「そうじゃぞ、ラーメンは美味しかったではないか!」


 仁さんは皿を洗っており、おっさんは店においてあった「バトルマッチングアプリ烈伝」を読んでいた。


「こんなことしてる場合じゃないんだよ! 仁さん、オレらの村に何かやべーのが攻めてきてるんだよ」


「あぁ、知ってる」


 仁さんは耳をほじりながらさも平然のように答える。


「だから対抗策も用意してんだよ。付いて来い」




 ◇ ◇ ◇


 仁さんはオレとおっさんをゴミ捨て場と化した境内の一角に連れて行く。そこには金色に塗装された二宮金次郎像があった。


「これは?」


「こいつはⅡGold-Law MK-Ⅱセカンド・ゴールドロウ・マークトゥーだ。この村の学校から安くで仕入れたんだ。対霊力れいりょくコーティングもしてある。これ作るのに結構かかったんだぜ?」


 数ヶ月前にうちの学校から二宮金次郎像がなくなるという事件が起きたが、おそらくその時無くなったものがこのⅡGold-Law MK-Ⅱセカンド・ゴールドロウ・マークトゥなのだろう。警察に被害届が出されていたはずなのだが大丈夫なのだろうか……


「見ろ! あの気色悪いネメクジももう随分と近くまで来てやがる。早く駆除しないとこの神社がさらにごみの山になっちまう。やるなら今しかねぇな」


 仁さんの言う通り、ナメクジ爆撃機はアポ神宮のすぐそこまで来ていた。


「じゃあ、行くぜぇ! ⅡGold-Law MK-Ⅱセカンド・ゴールドロウ・マークトゥ行って来い!」


 仁さんがスイッチを押すとⅡGold-Law MK-セカンド・ゴールドロウ・マークトゥⅡは空に飛び立った。




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「大変じゃ!この陰衆村に異世界からカルト教団が攻めてきよった!」 不労つぴ @huroutsupi666

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