第8話 他視点あり

ーー真尋視点


私はお兄ちゃんの妹の真尋まひろ


兄妹仲は悪いわけでもなく、むしろいい方だとは思っている


一応これでも、家事とかはある程度分担でやっているし、家で一緒に過ごす時とか、私やお兄ちゃんの幼馴染の日葵ひまりちゃんとだけなら、ちゃんと話してくれる


...まあ所謂、人見知りってやつなんだけど


だから学校では、どうしても陰のグループとして扱われちゃって、私たちからも若干話しにくい


だって話しかけた挙句妬まれて、それでいじめられる方が嫌だからね


とは言っても、私たちが寂しいからという理由で、お昼は無理やり連れ出して一緒に食べている


その後は、一緒にソファーで並んでドラマを見ていたんだけど、今日色々あったせいか、疲れてウトウトしていた、お兄ちゃんを寝かしつけようと声をかけた


...これってもう完全に私、お兄ちゃんの保護者になってるよね?


今までこんなこと滅多になかったし


そしたら、なんと!


...抱っこをせがまれた


え?


幼児退行までしてるの?


精神は体に引っ張られるって、どこかのラノベで読んだ気がするけど、まさにその通りなのね...


お兄ちゃんが可愛すぎて、悶え死にそうになっているのを何とか堪えて、自分で歩かせようとしたけど、


調子に乗ってるわけじゃないけど、私や日葵ちゃんって、学校の中で人気があるらしいからね


まあ、誰とも付き合うわけないけど


それにお兄ちゃん、自分ではあまり大したことないって思ってるかもしれないけど、趣味で描いたイラストをネットに上げてるんだけど、それのいいねの数が数十万から多い時で数百万まで付けられている


これ、お金稼げるようになったらヤバそうなくらいうまいんだよね


...本人は自分のことはあまり興味ないというか、人見知りって言うので自分を下げすぎて、あまりそういうの気にしてない気がする


まあ、そんなお兄ちゃんのちょっとすごいところは置いといて、実はラノベとかの中だけだと思っていたことなんだけど、まさか身近でしかも実の兄がそんなことになるなんて思わなかった


そう


何を言おうと性転換、TSというやつ


最初は、本当にびっくりもしたし、お兄ちゃんが知らない女児を家に連れ込ん大犯罪でもしたのかとちょっと冗談で思ったりしたけど、ただでさえ人見知りのお兄ちゃんができるわけないし、本当に誰なの?って思った


でも本人の口調とか喋る内容が、お兄ちゃんと同じだったし、お兄ちゃん自身は気づいてないみたいだけど、昔のお兄ちゃんにちょっと似てたりする


どことなく、お兄ちゃんの面影もあるし、すぐに信じることができた


...頭ではわかっていても、心では追いつかないところがあった


けど、それも会話しているうちにだんだんとなくなった


一応、お兄ちゃん家族以外で唯一と言っていいほど、椎名家に心を許している


まあ、昔から家族同然で育ったわけだし


まあだから、ちゃんとこのことについては日葵ちゃんに伝えないとね!


そして、日葵ちゃんも家に呼んで、お兄ちゃんを見せた


案外、日葵ちゃんも受け入れるのが早かった


お兄ちゃんの方はどうかというと、どうやら、私たちが姿が違うだけで、お兄ちゃんのことを拒絶というか遠ざけようとするのではないかと思っていたらしい


そんなことするわけないのに


というか、不安そうに若干目をうるうるさせているのはわざとかな?


いやそんなわけないか


お兄ちゃんのことだしどうせ無自覚でそうなってる


...うん、なんか今日女子始めました!って人に女子力で既に負けてる気がする


実際、背は以前のお兄ちゃんから考えられないほど小さくて、綺麗で透き通るような銀髪は腰まで伸びている


後ろ姿だけでも完璧なのに、顔も完璧


もうちょっと自信を持ってもらえると私としては嬉しいんだけどね


日葵ちゃんが家に来た後は、一緒に、今のお兄ちゃんの下着とか、洋服を買いに出かけた


一応私の昔の洋服があるにはあるんだけど、今のお兄ちゃんにはちょっと大きい...


お兄ちゃんには、外で「俺」とか言われたら不自然で仕方ないから「私」にしてもらおうと思ったけど、嫌みたいで、結局「僕」になった


まあ、それならいいか、って思ってた私は、お兄ちゃんが「ボク」と言った時の破壊力はやばかった


ショッピングモールに着いた時には、お兄ちゃんは羞恥心からなのか顔を真っ赤にして、恥ずかしそうに涙を浮かべながらプルプル震えていた


何というか、お兄ちゃんというよりかは、妹ができたような...?


ランジェリーショップでお兄ちゃんに上目遣いでひとりにしないでって言われた時は、本当にひとりにしないで一緒にいようかと思った


けど、わたしたちも若干大きくなった(特に日葵ちゃん)から、新しいの買わないとなあって話してたから、ちょっと惜しい感じはあったけど、お兄ちゃんには一人で頑張ってもらった


その後はちゃんと家に帰って、夕食は日葵ちゃんの家で取ることになった


うちの親もそうだけど、日葵ちゃんの家の親も、お兄ちゃんのことを大切に思ってくれている上に、今の姿になっても受け入れてくれているみたいで、私としても、安心した


...まあ、うちのお父さんが過保護すぎる気がするけどね


明日の朝イチで帰ってくるとか言ってたし


ご飯の後は家に帰って、お兄ちゃんと一緒にお風呂に入った


お兄ちゃんに体の洗い方とか教えないといけなかったからね


流石に最近はお兄ちゃんとお風呂に入らなくなったけど、今はお兄ちゃんも女子だし問題ないよね?


まあ、それでもちょっと恥ずかしかったけどね


その後はソファーに並んでドラマを見ていたんだけど、今日1日で色々あって疲れたのか、お兄ちゃんがウトウトしていた


滅多にこういうことはないけど、お兄ちゃんに声をかけて、寝させようと思った


そしたら、なんと!


...お兄ちゃんに抱っこをせがまれた


え?


何で?


女体化だけじゃなくて、幼児退行もしてるの?


いやいや、精神は体に引っ張られるって、どこかのラノベで言っていたような気もするし...


私がお兄ちゃんで悶え死にそうなのを何とか堪えていると、さらに、呂律が回っていない状態でもう1度、せがまれた


これに答えない奴は何というと馬鹿な人だと思う


うん、だってこんなのに逆らえるわけないでしょ⁈


だから、ちゃんと落ちないように抱っこしたんだけど、もうねお兄ちゃんが羽のように軽かった


ちょっと...いや結構羨ましい


で、お兄ちゃんをお兄ちゃんの部屋に運んで、ベッドに入れてあげた


その時、お兄ちゃんが眠そうに薄く目を開けて微笑んできた


...


...


気づいた時には、日付が回っていた


どうやら、私はあれで気を失ったらしい


いや失わない方がおかしい気がする


まあ、そんなわけで、部屋に戻ろうとしたんだけど、立ちあがろうとしたら何かに引っ張られているような気がした


振り返ってみると、あどけない顔ですやすや眠っているお兄ちゃんが私のパジャマの裾を軽く握っていた


少し悩みはしたけど、結局お兄ちゃんの部屋に残ることにした


やっぱりまだちょっと不安なのかな?


でも、少なくとも、いつでも私だけはお兄ちゃんの見方だからね




え?今私何してるのか?だって?


そりゃあ、お兄ちゃんと一緒のベッドに潜り込んで、頭を撫でながら(お兄ちゃんはめっちゃ気持ちよさそうにしている)、今日のこと振り返ってましたよ?


これじゃ、どっちが妹かわからないね...

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