安静中の過ごし方

翌日。事情聴取の続きを受けた後、伯爵家まで馬車で送ってもらい、数日間、家で安静に過ごした。その間、眠るたびに前世の出来事を夢に見るのだった。



私が奏音の生まれ変わりと同様に、もしもルーカス様が瑠伽の生まれ変わりだったとしたら?

・・・・ってムカつく。

ルーカス様と瑠伽は似てるところがあるのは事実。

でも、瑠伽と全ッッッ然違う!

冷たい視線で見降ろしてきちゃってさ。

何で私が『悪女』前提なわけ?足し算引き算は得意だし、『人間関係の計算』だってするわよ、必要だもの。でもさ!王子殿下を助けて疑われるとか感じ悪い!

だいたい、私がベルナルド様のとこにご機嫌伺いに行くたびに追い帰すんだもの、ほとんどあったことがないじゃない!


結論!ルーカスは瑠伽の生まれ代わりだとしても瑠伽じゃない!



それにしても・・・。


どうしてこのようなタイミングで思い出してしまったのでしょう。

私はベルナルド様の妃になるために日々過ごしているというのに。

『政略結婚』して当然だと思っていたし、愛のない結婚でも問題なかったはずなのに。


「好き」のドキドキとか、「愛する」幸せや、「愛される」悦びを思い出してしまった私にとって、この愛のない関係が辛い。


瑠伽・・・逢いたい。もう一度好きだと言って抱きしめて。

あなたの腕の中で笑い合いたい。


瑠伽を思い出しては涙がこぼれてくる。



   ***


ずっと部屋の中にこもってはボーっと奏音の頃に思いを馳せていた。

そんな風に過ごす私を誰も咎めなかったが、3日目の朝、アイシャが散歩に誘ってきた。

アイシャが私の心配をして外に連れだそうとしていることがわかるし、ずっと考えてもらちが明かない。

そこで気晴らしに屋敷の中を探検してみることにした。


するとどうだろう。

奏音の記憶が戻る前は気にも留めていなかったものが、前世の記憶を取り戻してからというもの、屋敷の中はわくわくする物で溢れかえっていることに気が付いた。


奏音は世界遺産が好きで、休日には博物館や美術館を巡って芸術品を見るのが趣味だった。特にレンタルの解説を聞きながら見ることも好きだった。この素晴らしい建物の中や調度品を見て回れることに心震わせるのだった。

左右対称のシンメトリーの建物。広大な園庭には噴水やたくさんの花々が植えられている。

室内の調度物は高級感がある。恐れ多くて手で触れることなどできない。

美しい絵画。

美術館や博物館の中に住んでいるようなものだ。

た、たのしいいい!


何てことを思いながらさらに数日を屋敷で過ごしていると、王城に行っていないことを知ったマルクス王子殿下が心配なさって「お見舞いに来たい」という内容の知らせが届いたのだった。


やばい。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る