歓迎?ベルナルド御一行様
私のお見舞いにマルクス王子殿下が伯爵家にお見えになった。
「ようこそおいでくださいました」
王子のお迎えに出た私の横に、お義母様、双子の弟妹のセルジュとエリーゼもおめかしをして並んでいる。
双子は父と義母との間の子達で王子の一つ下になる。
私一人で幼い王子のおもてなしに不安があったので二人(+義母)にも助力を求めたのだった。
そして。
王子の横にはベルナルド様とその側近であるルーカス様が並んでいる。
なぜだ?
私は微笑みながら皆さんとご挨拶をして、テーブルや椅子を用意してお茶会の用意がされた庭へご案内するのだった。
・・・おい、そこの(マルクス王子の)叔父様よ。忙しいんじゃなかったのですかよ?
毎日ご機嫌伺いに行っては
『申し訳ございません。今お忙しく、ご面会は難しゅうございます』
と執事に言われ続けておりましたのに。
どうして、伯爵家にいらっしゃる時間的余裕があるのでしょうか?
・・・と文句を言いたいのを堪えてアイシャに用意してもらったお茶を飲む。
「いやあ、マルクスがカノン嬢のお家に見舞いに行くと聞いてね。可愛い甥っ子に一人で行かせるのも心配だったもので、一緒に来たのだよ。カノン嬢は婚約者候補の令嬢だしね」
とベルナルド様がにこにことお茶を飲む。
ベルナルド様の横に座るマルクス王子をちらりと見る。
王子は座って用意されたお菓子をパクパク食べながら大人の会話を聞いていたが、お腹いっぱいになって食べる手が止まる。キョロキョロし始めたので飽きてきたのがよくわかる。
お義母様が弟妹たちに庭を案内してはどうかと勧めた。
勧められた幼い3人組は花を愛でることもなく、駆けずりまわって遊んでいる。ああ、ああ。護衛やメイドたちがあたふたと追いかけているではないですか。お可哀想に・・・。
などと3人達の様子を見ている私の前で、義母様はベルナルド様に双子のすばらしさを語っている。
お義母様は王子と我が子が親しくなることを望んでいるのだろうな。私の怪我も彼女にしてみれば王子に接触するいい機会なのだろう。
ベルナルド様の婚約者候補の私ではなくご自身の子供たちを褒める義母の様子に、ベルナルド様は少し困惑したような顔をしている。
あ。目があった。
もしかして、ベルナルド様って助けを求めてる?
ふーん。ふふふ。
沸いてきた悪戯心を隠すこともせず、ベルナルド様ににっこりと微笑んで見せる。
ベルナルド様はほっとした顔をなさった。
残念でした!!
うふふふ。助けるわけないじゃなーい。ふふふ。
すっと立ち上がり、お二人に微笑みかける。
「私、王子殿下方の様子を見てまいりますわね」
「!?」
驚くベルナルト様を後目にアイシャと庭に歩いて行く。
するとルーカス様が付いてきた。
「え?ベルナルド様のお側にいなくていいのですか?」
とルーカス様に話しかけると、
「構いません。それにカノン様に尋ねたいこともありますので」
「そうでございますか」
ルーカス様のお家は公爵家で、貴族のトップに立つお家柄だ。
格下の伯爵家令嬢に私に対し、畏まった言葉使いはしなくてもよいのに口調が丁寧だった。
「それで、私に尋ねたいこととはどのようなことでございますか?」
「カノン様。あなたはベルナルド様の婚約者は諦めてマルクス王子殿下の妃を目指すことにされたのですか?」
「は?」
不躾な質問に目を丸くする。
「先日マルクス王子殿下がカノン様に求婚をなさいました」
「ああ、それで・・・」
王城で怪我をしたのをお気になさって、責任を取って結婚するっていうアレのことをおっしゃっているのね。
「マルクス王子殿下の婚約者は王や皇族方が話し合われよくよく吟味した上で決定なさること。とはいえ、聡明で計算が得意というカノン様のことですから、何かよいお考えがあるのではないでしょうか?」
つまり、王子の妃になるために何か画策してるのでないかと?
はあ、馬鹿馬鹿しい。
「王子殿下はまだ8つでございますよ。私は18ですし、適齢期を迎えております。王子殿下が成人になるまで待てとおっしゃるのですか?それって、現実味がございませんよね?」
「そうでしょうか?5年後。王子が13歳になられた時、カノン様はまだ23歳です。それでもありえないと?」
「ええ。その頃にはお歳の近い、かわいらしいご令嬢と出会っていらっしゃるのではないかしら?」
「ですが・・・「カノーーーン!カノンも遊ぼう!!」」
ルーカス様の声を遮るように王子殿下が大声で呼びかけた。
「いいですわよ!ではみんなで『ケードロ』でもいたしましょうか?」
「「「ケードロ?」」」
『キードロ』とは『騎士と泥棒』の略。私発案と思われている鬼ごっこに類似する遊び・・・いわゆる『ケードロ』。前世の記憶を思い出した私が説明し、3人のお子様たちに加えてベルナルド様、ルーカス様、アイシャも交えての大捕り物が繰り広げられることになったのだった。
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