第一章 入学
第2話 異端生徒会
「今年の入学試験の死亡者数は・・・1500人中200人ですか」
「結構少ないですね・・・」
「あぁ、豊作と見ていいかもしれない」
「じゃあ
「合格者一覧です。数は600です」
「わぁ、この子、全試験満点合格・・・ですか。凄いですね・・・」
「だが、目立てばいいってものでもない。それだけ、
「目をつけておきますか?」
「まぁな。少し様子を見よう。今年は面白くなるかもしれない」
「ボク、すぐにでも殺りに行きたいんですけどっ」
「会長命令ですよ」
数ある校舎の中でも、不用意に入れない禁忌スポット。
その一室で
入学試験もとより、通常戦歴もトップである異端な存在が集まる会。
彼らが目をつけたその新入生こそが、アリス・レズポンドであった。
超難解な入学試験を突破した新入生たちは、さすが、すでに歴戦の猛者らしい風格漂う存在だが、今日ばかりは浮かれているようだ。
新入生たちに校内を案内するのは、異端生徒会の庶務、フリーデ・ワイグン。
二年女子生徒であり、戦歴は600人突破。
生徒たちには、一人ずつ、無条件に個室が渡され、卒業までの4年間、その部屋で過ごす。
そう聞くと窮屈に感じるかもしれないが、ところがどっこい。
無駄に広いベッドにふかふかソファ。贅沢メニュー揃うルームサービス、ジャグジー付き風呂完備。
何不自由ない。いちゃもんをつけることの方が難しいほどの完璧さだ。
食事は、ルームサービス、もしくは食堂を利用することができ、前料金無しでずっとタダ。
外出は基本禁止だが、レジャー施設も整っており、ルームサービスにはマッサージ師を呼ぶメニューもあり、学校内に室内プールや遊園地、バーまで揃っている。
フリーデは、校内を案内し続けた。
ゴリゴリマッチョや、巨人かと思うほどの身長を持つ者、何か近寄りがたいオーラを持つ者、色々いるが、どれも校内の豪華さに目が行ってしまっている。
「では、その他学校の説明は各自の部屋に資料として配ってありますので、熟読下さい。熟読です。熟読ですよ」
うるさく三回同じ事を忠告して、フリーデは一礼した。
ようやく解散ということだろう。
現在の時刻は午前10時。普通に考えるなら、これから授業だ。
しかし、校内を回り終えた新入生たちは、ゾロゾロと自室へと足を進めた。
――――最も多くの死者と行方不明者を出す魔法学校こと、リーデル魔法学校へようこそ生徒諸君。
この学校はユルユルがモットー。
勉強、ゴロゴロ、ご自由にどうぞ。
ただ、お足下と頭上にはご注意を。
あ、ほらほら、そこ、落とし穴ですよ。
ふふ、卒業式で、無事にまたお会い出来ると良いですね。
では、せいぜいお気をつけて。
入学式で学長が放った言葉だ。
難解な入学試験とは裏腹に、学校生活は自由らしい。
聞けば、授業への出席も自由、何なら最後まで何もしなくても卒業出来るらしい。
生徒たちは学長の言葉に従っただけのようだ。
そんな生徒の中に、男女比8:2ほどのリーデルでは、見かけることすら珍しい女子生徒が一人。
金髪のストレートヘアを肩上で切りそろえたボブヘアに、やけに自信に身を包まれた可憐な少女だ。
美少女だが、身長は150cmもなさそうなほどの小さな体型、細い四肢に血色の悪そうな青白い肌を持ち合わせている。
周りの生徒と比べてみるなら、試験を突破出来たことに明らかな疑問が生まれるような、そんな美少女だ。
「どうだった?」
「特に。何もなかったですね」
「え~おもしろくないっ」
「周りの生徒たちからの反応は?首席入学は周知の事実だろう?」
「見た目があれなので、なにかの間違いだと思われてました」
「あぁ・・・」
見た目って大事。
「と、ところで、副会長は・・・?」
「ちっこく~」
「悪かったな遅刻で」
奥の部屋から、一人の男子生徒が出てきた。
「ふ、普通は、副会長って、しっかり者が担当のポジションじゃ、ないんですか・・・?」
「レーナちゃん、そのオドオド正論、今の俺には一番刺さる」
・・・が多出するオドオド女子、レーナ・スクローグ。
生徒会総監査という重職を担う3年女子。
◇総監査とは、戦歴を中心に、学校の数字関係を管理する仕事。
戦歴ポイントの推移は全て彼女によって決められるため、超多忙。
一見、眼鏡をかけた影の薄い印象を受けるが、得意魔法は分身魔法や幻影魔法。
多すぎる仕事は、彼女が分身を作って賄っているのだ。
「へー面白そうじゃん」
副会長らしい遅刻男子、キール・ヘンドリックは資料に目を通していた。
見ている資料は、例の首席入学の新入生のもの。
「何か仕掛けたの?」
キールは資料から、不審そうに自身を見つめるフリーデに目線を移した。
「いえ、様子見と会長が」
「俺が仕掛けてきても?」
「え」
「殺すかは気分次第だが、優秀さんの出鼻を挫くってのも、たまには面白いだろ?」
「・・・好きにしろ。どうなっても知らないからな」
会長が淡泊に言い放つ。
「どうもなりはしないよー」
キールは、ヒラヒラと手を振って部屋を出て行った。
「はぁ、副会長が噛ませ犬って・・・」
「会長、大変ですね」
生徒会長が苦労人枠という謎の異端生徒会。それがリーデル魔法学校生徒会である。
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