第3話 ルール

アリスは自身の部屋の前に立っていた。

さっさと部屋に向かっていた他の生徒も同じ状況である。


なぜなら、部屋のドアにこう書いてあったから。


 ※部屋での安全は保証しません

  あと、ドアの絶対防護魔法を自分の力で解除すること


どうでもいいけど、注意事項に、あと、とか使う人いる?


ドアには、注意書きの通り、絶対防護魔法が掛けられている。

絶対というだけあって、解除できるものではない。普通は。

それを楽々クリアしてこそのリーデル生とでも言いたいのか。


「部屋の中、可愛いといいの」

だが、アリスは、あっさりとドアの魔法を解除してしまった。

しかし、他の生徒はまだどうにも出来ていない。

そんな同級生たちを余所に、アリスはほいほいと部屋の中に入っていった。



「まじか」

「会長、素が出てますよ」

「マジですか」

「レーナ先輩までやめてください。そのなぜかボケに乗っかるクセ、何とかなりません?」

「あっさりと絶対防護を通過か。さすがに、前試験満点を認めざるを得ないな」

(あの娘、何者だ?)

会長こと、スバイル・エイデンは冷や汗を流していた。




「おー結構可愛いの」

アリスは、生徒会の連中がどこかからのぞき見してるとは知らず、部屋を探索していた。

説明に聞いていたとおり、設備はどれも申し分ないものだった。

入学試験の成績で、部屋の場所は決まるらしく、アリスは最上階をゲットしたらしい。見晴らしが良すぎる。




ふと、机の上に、なにかを見つけた。

「ぶあっつ」

庶務の女性の発言と照らし合わせるに、これが熟読するべき資料だろう。

赤色の表紙には、こう書かれている。


※この学校では実力が全て。殺し合いをみんなで乗り越えよう!おー!


さっきから注意書き書いてる人は幼稚園児なのだろうか。

さっきから※と無駄にユルい口調が続いているが。



リーデル魔法学校については、学校生活についてが、公に公開されていない。

入ってからのお楽しみになっているため、入学生らも、詳しいことは知らないので、読むに超したことはないだろう。


全記憶オールメモリー

アリスは、分厚い資料の表紙に手を置き、呪文を唱えた。

神話の時代に存在した、指定した全てを記憶する魔法だ。


記憶した全情報を、脳内で整理にかける。

当たり前の、いらない情報は捨てる。

本命は、フリーデが熟読しろと念入りに言った理由を探すためだ。

「!!」

見つけた。

リーデル魔法学校全資料集第490pからの内容。


   半年に一度、生徒会主催で「総決算」が開かれる。

   ※全校生徒出席必須。

   そこでは、戦歴ポイント上位100人と“家畜化”生徒の発表が行われる。


その次のページには、“社畜化”の意味が記載されている。


     「家畜化」

   総決算日までに、戦歴ポイントがゼロ、またはマイナスだった生徒は、卒業    

   まで学校に奉仕することになる。

   ※卒業は出来る


これが、卒業は出来る、の意味だろう。

「卒業条件は、卒業まで生きていること」

なんて狂った制度だ。


その他の用語・ルールについても説明されている。


この学校は、ユルユルがモットー。

だが、学内では、生徒同士で殺し合いが行われる。

勝てば戦歴ポイントを獲得でき、負ければ失う。

殺し合い故に、死亡者が出ることはザラ。

ある程度死なないために入学試験が難しくなっていると考えるべきだろう。


殺し合いにルールは一切無いし。

不意打ち、毒、リンチ、迷宮に閉じ込める、なんでもアリ。

それを勝ち抜いた者には、必ず卒業の資格と進路が与えられる。



部屋のドアに書かれていた注意書きを覚えているかな?

つまり、部屋でもこのルールは適用される。

この殺し合いに、安全地帯など無い。



リーデルは四年制の魔法学校である。

入学に年齢制限はない。

王立のため、運営は国が担っている。

学長は、やけに若々しい女性。

殺し合いという概念は、その学長の決定。

単位や出席という概念、何ならテストすらない。


生きていれば、非常にユルユルな学校である。



学校の施設について。

無駄に広いリーデルには、校舎、生徒約2400人分の寮。使ってない校舎も多数。レジャー施設、未到覇の迷宮ダンジョンまであるのだ。

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