第7話 バンドのかたち
アンジェルと出会ってから3年。僕らは高校2年生になっていた。僕らは中学時代にひたすら自分たちの楽曲を作ることに専念した。バンド活動を始めるのは高校に上がってからと計画をしていたが、その青写真通りに物事が進んでいったのは、やはりアンジェルの影響だったと思う。コピーバンドではなく、あくまで全曲オリジナルでやりたい信念をアンジェルは最初に持っていたからだ。
僕はとにかく必死になってアンジェルの背中を追いかけて走っていたに過ぎない。音楽活動だけじゃなかった。勉強の苦手だった僕にアンジェルがこう条件を突き付けてきたんだ。
「同じ高校に入ろうね!私は△△高校って決めているの。あそこにある軽音楽部ってメチャクチャ機材とか揃っていて環境がバッチリなの。だからその高校に一緒に入ろう!」
彼女と知り合ったのがまだ中学2年生で良かった。頭の悪い僕が何とかそこから猛勉強をしてギリギリ間に合ったから良かったものの、もし中学3年生で出会っていたら到底間に合わなかったろう。しかしこの選択は本当に大正解だった。高校に入学すると、僕らは「Ange Cache」というバンドを組んだ。すでにサポートメンバーとも全員で何回か練習で手合わせをしていたので、活動としては高校入学前からで違いない。
彼女が紹介してくれたサポートメンバーは個性的だった。それに彼女の父親からの紹介だったので、みんな僕とアンジェルより全然年上の人たちだった。
ベースのカミュは26歳でカナダ出身の男性でスタジオミュージシャン。両腕には凄いタトゥーがびっしり入っていて、最初の見た目は怖かったが人柄はユニークだ。
ドラムのポールは30歳のアメリカ人男性。彼もスタジオミュージシャンだが副業で日本でたこ焼き屋さんを経営している。パワータイプのドラマーなので体格はがっしり。
キーボードは女性の荒瀬真希さん。マキさんは24歳で、バンド加入の少し前にある音大を卒業したばかり。元々はクラシックをやっていたらしいが突然ロックに目覚めたらしい。
このメンバーをどうやってアンジェルの父親は見つけてきたのかは不明だし、ギャラもアンジェルの父親持ち。そのおかげで明らかに同年代の他のバンドよりも高いレベルで演奏できた。これは本当に恵まれていたことで彼女と知り合えていなかったら不可能だったろう。よく僕らみたいな若造とバンドを組んでくれたと感謝だったが、あとで聞いたらみんな僕らのデモテープを聞いて決めてくれたらしい。これも大きな自信になったことに違いなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます