第20話 誰でも使えます


「……失望したな……その程度か? キサマ相手になど……我が奥義を見せるまでもない……超必殺奥義流星円舞火炎拳!」


 見下されているのが非常に不愉快だ。だが、目の前の男との実力差は歴然。


 俺のほうが弱い。あいつのほうが強い。その事実をしっかりと見せつけられている。


「しっかりしなさい」仲間の女剣士が言う。「まだ動けるでしょ? 超必殺奥義流星円舞火炎拳!」

「占いでそう言ってたのか?」

「違う。これは経験。あなたは……何度私にやられても立ち上がってきたでしょ、超必殺奥義流星円舞火炎拳!」

「……そもそも負けてねぇよ……」

「それだけ強がれたら上出来」


 実際、強がりだ。目の前の男は……俺たち2人よりもさらに強い。


 このまま戦えば敗北する。俺が殺されるだけなら良いが、彼女を死なせる訳にはいかない。


「仕方がない……」俺は立ち上がって、「アレを使うか……」

「……なにか隠し玉でもあるの?」

「ああ。お前と戦うときのためのだったんだがな……」ここまで追い詰められたのなら仕方がない。「師匠に教えてもらった奥義だよ。この世で使えるのは……俺と師匠の2人だけだ」

「……期待してるよ、超必殺奥義流星円舞火炎拳!」


 まだこの世に名前も知られていない奥義だ。いくら今の相手でも、初見の技には対応できまい。


「行くぜ」俺は肩をグルグルと回してから、「……超必殺奥義流星円舞火炎拳……!」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る