第14話 あの声で脳内再生される

 闘技場でのピンチを切り抜けて、俺は女剣士に言う。


「ありがとう。助かったよ」

「……だから、助けたわけじゃない」……ホントにクールだね……「ねぇ……どんだけ~!」

「なんだ?」

「これから時間ある?」

「なんだ……? お前からお誘いとは珍しいな。まさか俺のこと――」

「やっぱりなんでもない。今の話は忘れて」

「わかったわかった」


 ちょっとからかいすぎた。反省しよう。


 俺が真面目な評定をすると、彼女が続けた。


「どんだけ~!……あの噂は聞いたことがある?」

「ああ……お前が俺のことを好き――」


 がぁん、と脳天を刀でぶん殴られた。鞘に収まったままだったので、死なずに済んだ。血は出たけれど。


「黙って聞いて、どんだけ~!」

「お、おう……」これ以上ふざけると死んでしまう。「で……噂って……?」

「盗賊団の噂」

「盗賊団……? ノウム盗賊団か? 噂と言っても……この街で盗賊なんて珍しくないだろう?」


 治安の悪い町なのだから。


「その盗賊団に……って噂があるのよ、どんだけ~!」

「……俺が……?」

「その噂が本当か、確かめに来たの」

「……俺がチームに所属なんてできると思うか?」

「……できない。知ってる。だからガセネタだと思ってたわ。占いでも、あなたは単独行動するのが吉って出てから」

 

 吉なだけで単独行動をしているとは限らないけどな。


 彼女は背を向けて歩き始めて、


「噂の真意を確かめに行くわよ、どんだけ~!」

「……俺も行くのか? どれくらいかかるんだ?」

「あなたの働き次第かしら、どんだけ~!」

「……はいはい……」


 断るという選択肢はなさそうだ。


 それにしても……俺がいる盗賊団ね。ちょっと気になる。


 もう1人の俺……つまり、もう1人のどんだけ~!がいるってことだ。


 ……


 1人とは限らないよな。もしかしたら10人や100人くらいいるかも知れない。


 いったい……どんだけどんだけ~!がいるのだろうか。

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