第13話 そこで笑うのは良くないですよ
10年ぶりに再開した母さんは、僕の顔を見て涙を流した。
そして僕に駆け寄って、
「ああ……こんなに大きくなったのね(笑)」愛おしそうに僕の顔を撫でた。「本当に……本当に生きててよかったわ(笑)」
「母さん……」泣きそうになるのをこらえて、「心配かけてごめん……でも、僕はこの通り無事だよ」
「……そうね……それに、たくましくなったかしら。身体だけじゃない……心も大きくなってるみたいね(笑)」
こうやって母に名前を呼ばれるのは何年ぶりだろう。家族の暖かさというものが心を包み込んでくれる。
「お父さんも心配してたわよ(笑)」あの寡黙な父が……? 「あなたがいなくなってから、ずっとあなたのことを気にしていたの(笑)」
「……父さんが……」喧嘩別れしたとはいえ、父親は父親だ。「今、父さんはどこにいるの?」
「……ついてきなさい」
母さんは僕をつれて、道を歩く。家の中に父さんはいないようだった。どこかに出かけているのだろうか。
そうしてたどり着いたのは、お墓だった。
「2年前にね……」母さんは父さんの墓前で立ち止まって、「もとから病気持ちだったから、覚悟はしてたんだけれど……ちょっと早いわよね(笑)」
「そんな……父さん……」
僕が些細なことで家を飛び出したばかりに……父さんの死に目に会えないなんて……
「ずっと、あなたに会いたがっていたわよ(笑)」母さんは涙を拭って、「今からでも、遅くないわ。ちゃんと……ただいまって言ってあげなさい(笑)」
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