第11話 ツンデレ……?

 闘技場の試合中のことだった。


 剣を弾き飛ばされ、あと一歩で場外に落とされる。そんな絶体絶命の状況。


 このままでは負ける。そう確信した瞬間。

 

「……え……?」


 突然、俺の目の前に女剣士が立ちふさがった。


 その剣士は俺に襲いかかる敵を一掃して、一瞬だけ俺の目を見た。


 相変わらずクールな目だった。冷たくて鋭くて強い。俺の憧れた強さの象徴が目の前にいた。


「お、お前……」俺は剣士に向かって、「た、助けてくれたのか……?」

「……違う……」クールな声だった。「あなたはここで死ぬ運命じゃない。ただそれだけよ。か、勘違いしないでよね……!」

「う、運命……?」

「占いで……てんびん座の人が1位だったの。あなたてんびん座でしょ? か、勘違いしないでよね……!」

「う、占いって……」何も変わってないな、こいつ……「まだ占いとか信じてるのか……?」


 睨みつけられたので、これ以上は追求しないことにする。


 こいつとは長い付き合いだが……病的なまでの占い信仰がちょっと怖かったりもする。

 

 まぁ……今回はそれに助けられたがな。


 剣士は俺に背を向けて、


「か、勘違いしないでよね……!」

「なんだ?」

「まだ敵が残ってるから……半分任せるよ。か、勘違いしないでよね……!」

「お、おう……」ちょっと厳しいが……強がっておこう。「3分の2くらい引き受けようか?」

「……調子に乗らないで……今のあなたより私のほうが強いわ。か、勘違いしないでよね……!」

「ま、そうだけどな……俺だって弱いつもりはないんだが……」

「弱いなんて言ってない。あなたの強さは私が――」


 そこまで言ってから、剣士は押し黙ってしまった。


「俺の強さは、なんだよ?」

「……うるさい」


 すねているのがかわいいので、からかってみる。


「うんうん。俺の強さは、お前が一番わかってるよな。これまで何度も――」

「なにを言ってるのかわからない。勘違いしないでよね」

「お……珍しいツンデレ発言」

「……か、勘違いしないでよね……!……!」

「わかったわかった」

  

 これ以上挑発したら、俺のほうが切られそうだ。


 ともあれ、味方としてこんなに頼もしい存在はいない。


 俺は意気揚々と戦闘を再開する。そして大勢の敵との戦いに身を投じているとき、小さく彼女の声が聞こえた。


「……あなたが強いのなんて知ってるわよ。か、勘違いしないでよね……!」

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