第10話 会話についていけない人

 俺はその研究室で先生に事情を説明した。


「なるほどな……」俺の説明を受けて、先生は何度か頷いた。「……このダンジョンを突破するには、俺の持つ鉱石の力が必要なわけだ。そうだろう?」

「はい。俺は必ず……この洞窟にある薬草を採取しないといけないんです。そのためには……あなたの持つ鉱石が必要なんです」

「……つまりどういうことだ?」先生は俺の名前を言ってから、「状況は理解した。たしかにお前の妹さんの病気を治すには、あの薬草の力が必要だろう。お前の言うことは正しいよ、つまりどういうことだ?」


 そう。俺の大切な妹を助けるために、俺は洞窟に行かなければならない。


 そのことは先生も理解してくれた。だが、まだ先生は渋っているように見える。


「つまりどういうことだ?……お前は、あの洞窟の危険さがわかっているのか?」

「はい……凶悪なモンスターが多く生息する危険な場所です。多くの死者が出ていることも知っています」

「それでも行く、というのか? つまりどういうことだ?」

「はい」即答できる。「覚悟はできています」

「……つまりどういうことだ?」


 俺の覚悟は伝わったようだった。


 しかし、


「……つまりどういうことだ?」先生はイスから立ち上がって、「覚悟はわかった。だが、死ぬとわかっている場所にお前を送り込むわけにはいかんな」

「でも……!」

「まぁ落ち着け。つまりどういうことだ?」先生は棚をあさりながら、「要するに……お前が洞窟に行っても安全な状態になればいい」

「……? つまり、どういうことですか?」

「俺も一緒に行くってことさ、つまりどういうことだ?」先生は棚から弓を取り出して、「これでも昔は冒険者だったんだ。今でも多少は動けるだろう」

「先生……」


 先生が冒険者だった、というのは初耳だ。


 しかし使い込まれた弓と、その扱いを見ていれば……歴戦の強者であることは理解できた。


 先生は弓の手入れをしてから、頼りになる笑顔で言った。


「お前にとって妹が大切なように、俺にとってお前は大切な生徒だ。いつかはお前1人で危険に立ち向かわないといけないだろうが……今は俺が守ってやるよ、つまりどういうことだ?」

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