第43話 恨み

 土曜日の夜、自宅で夕飯を作っていると、僕・優の携帯に、知らない番号から電話がかかってきた。はじめは無視していたけれど、何度も何度もかかってきて、あんまりしつこいから、警戒しながら電話に出た。

「はい」

『朱雀様!』

 知っている声――響だ。電話越しにしては小さい声が震えている。早口で、かなり焦っているみたいだ。

 わざわざ「朱雀様」と呼ぶってことは、組織にいるのかな。

『知らない番号なのはごめんだけど、せめてもう少し早く出てくれよ!』

「ちょっと落ち着け。どうした?」

 きくと、響は一度息を吐いた。それから、さらに小さな声で言う。声が小さくなると、震えがもっとハッキリわかるようになった。

『裏切り者が、人を殺してまわってる』

「は……?」

 全身が、ドス黒い、重いものに包まれたようだ。

 裏切り者が、組織に出たってこと?

 それって、響と夏絵手は、ボスは大丈夫なの?

 そう聞こうとして、次の瞬間、息を止めた。

 電話越しに、カツン、カツン、とゆったりした足音が聞こえる。裏切り者が出たという状況なのに、ここまでゆったり歩くなんて……まさか、裏切った本人の足音……?

 響が、ハッと息をのんだ。

『ごめん、切る』

 プツッ。ツー、ツー。

 一方的に、電話が切られた。

「……」

 響たちを助けなきゃいけない。刀を持って、裏切り者を仕留めないと。

 でも、人を殺すことにためらいがある。裏切り者が、僕と同等かそれ以上の実力だとしたら、一瞬でも隙を見せればやられてしまう。

 お腹の底が冷たくなる。嫌な想像が、全身を包み込む。

「……行こう」

 こんなことを考えている場合じゃない。

 行かなきゃ。響が危ない。もしかしたら、夏絵手もいるかもしれない。

 ボスも、いなくなってしまうかも。絶対に嫌だ。これ以上、大切な人を失うのは。


 ☆


 走って、走って、走って、ようやく殺し屋組織に到着した。

 荒い呼吸を整える暇はない。建物の中に入って、駆け回る。

 電気が、ところどころ、チカチカ点滅している。ひどく不気味だ。

 どこへ行っても、血が飛び散っている。床や壁、天井にまで。途中、何度も死体を見た。みんな、死んでいる。どこからか、誰かの悲鳴が聞こえた。

 ひどい不安に襲われて、心臓が激しく鼓動する。


 ボスは、響は、夏絵手はどこ――?


 死んでないよな? きっと、どこかに隠れてる。助けに行くから。絶対に助けに行くから、怪我していませんように。


 ヒュン


 ゾッと寒気がしたとほぼ同時に、風を切る音がした。直感でその場にしゃがみこむと、頭上を何かがかすめた。

 振り返ると、背後に鬼の面を被った人がいた。体格からして、男だろう。

「誰」

「……」

 無言で、鈍器を振り下ろしてくる。暗くてよく見えないけど、うっすら見えるシルエットは、なんとなくハンマーな気がする。

(殺る気満々ってところか)

 殺意に支配された人に、言葉は届かない。

 男がハンマーを振り回す。僕は後ろに下がりながら攻撃を避ける。

「ゔあぁっ!」

 なかなか当たらないことにイラついたのか、男が奇声を発する。

 てぶらのもう片方に、同じ武器を持った。

 二刀流になってしまった。困った。

 両腕を振り回して、僕に向かってくる。

 腕をどう振ったらどう当たるのか――まったく考えていないようだ。とにかく、当たらなければ問題ない。

 僕は鈍器を避けながら、刀を抜いた。

 相手は裏切り者だろうか。もしかすると、裏切り者が出たことで錯乱しているだけの殺し屋かもしれない。確認したいけど、話が通じない。どうしよう。

 そうこうしているうちに、壁に追い詰められた。

 男がハンマーを振り上げる。

 地面を強く蹴り、身体を左にスライドさせて、男から距離を取った。タイミングが少しでもずれたら、当たっているところだった……危ない。

「お前だろ、裏切り者は!」

 とつぜん、不思議なことを言われた。わけがわからない。僕が、裏切り者? そんなわけないだろ。

「武器が同じだ! 背も同じくらいだ!」

 武器も背も同じって、どういうことだよ。僕は、さっきまで家にいた。響の電話を受けて、ここに来た。何も嘘はついていない。記憶違いでもない。

「何か言え! お前が仲間を殺したんだろ!」

 男がわめく。

 とりあえず話の内容から考えて、男は裏切り者じゃない。目の前で、誰か殺されたのだろうか。僕を疑っているみたいだけど、ここはかなり暗いから、相手の特徴をつかめなくてもしょうがないのかも……?

「僕は、味方だ」

 刀をしまい両手を上げて、敵意がないことを示す。

「……」

 男が、その場に立ちつくす。武器を振るう様子はない。

 殺されそうな状況で武器をしまうなんて、普通ありえないから、呆気にとられているらしい。でも、これで攻撃される心配はなさそう。

 僕はホッと息をつくと、先へ向けて走った。

 1階には、誰もいなかった。殺し屋の死体が転がっているだけで、響も夏絵手も、ボスもいない。

 胸の焦りと不安が大きくなる。

 2階へ行くのに、エレベーターが使えない。階段を駆け上がる。

 1階と同じく、2階にも死体がゴロゴロしていた。生存者はいないのではないか……と思えるほどに。

 また、走り回る。大きな音を出すと裏切り者に見つかってしまうかもしれない、そんな恐怖を感じる。

 ある部屋に入った。ここでも数人死んでいる。白いソファーが、赤黒く染まっていた。

 ここにも、誰もいないか……。

 部屋を立ち去ろうとする。

「――朱雀様?」

 どこからか、か細い声が聞こえた。

 ヒュッと息をのんで、部屋の中から聞こえた声の方を見る。そこにいた人影に、僕は目を大きく見開いて、名前を呼んだ。

「っ、か、夏絵手……!」

 突然のことに、思わず本名の方を呼んでしまう。

 夏絵手は、僕を見てホッと安心した表情をした。

「朱雀様でよかったです……。足音がするから、あの人がもどってきたのかと……」

 白衣が血だらけで、顔は真っ青だ。

 ふらつきながら、ソファーの影から出てきて、僕に歩いてくる。

 僕は夏絵手に走り寄って、思い切り抱きしめた。すごく震えている。こんなところにいて、怖かっただろう。他の殺し屋が惨殺される様子を見ていたか、それとも聞いていたか……。

「え、あの、痛いです」

 夏絵手は、さっきよりしっかりした声で言う。

「怪我した!?」

 身体を離して、夏絵手にきく。

 赤い白衣に、刃物で切られた様子はない。それでも、心配してしまう。

 夏絵手は、白衣を脱ぎながら首を横に振った。

「してません。この血は、やられてしまった人のものです」

 そう言われて、ソファーの上に倒れていた死体を見る。一撃でやられたんだろう。傷は1つしかないけれど、かなり大きい。見ているだけで痛くなってくる。

「……とにかく、無事でよかった」

 あとは、響とボスだ。ふたりとも、どこにいるのかわからない。それに、裏切り者がいったいどこをうろついているのか、見当もつかないよ。

 ただ、ここまでの道にいないことはわかっている。この部屋は階段から来たら一直線上にあるから、僕が通ってきた道に隠れていたとは思えない。これだけの殺し屋を殺しておいて、僕が来たら出てこないなんておかしい。

「キョウとボスを見つけに行くけど、楓はどうする? ここは危ないから、なるべく早く家に帰ったほうがいいと思う」

 決定権は夏絵手にあるけれど、僕的には家に帰ってほしい。夏絵手のお母さんが心配しているだろうし、今は無傷だけど、もし怪我をしたら……。

「……。一緒に行きます」

 夏絵手は悩む素振りを見せたあと、そう言った。

 手も足も、震えている。

「……わかった」

 どうやら、帰るつもりはないらしい。

 僕は、夏絵手の手をとって歩き出す。不意打ちされても守れるように、近くにいてもらわないと。

「急がないのですか?」

「大丈夫」

 本当は走って2人を探したい。でも、そのせいで不安が夏絵手に伝わってしまうかも。

 1つ1つ、部屋を見ていく。どこを見ても、必ず人が死んでいる。

「どうして、こんなことに……」

「朱雀様を探していました。あの人、1人1人に朱雀様の居場所をきいています。『知らない』と答えた人は、次々に殺されました」

 夏絵手が話してくれる。

 僕のせいで、みんな殺されたってこと? ……なんだか気分が悪い。

「朱雀様のせいじゃないです。裏切り者が悪いのですよ」

 夏絵手が僕をしっかり見て言った。ちょっと心強い。

 2階を歩き回るけれど、響は見つからない。まさか、3階にいる?

「あれ……?」

 僕は、足を止める。目に入ったのは、掃除用具入れだ。一歩ずつ近づく。ここから、人の気配を感じる。夏絵手とうなずきあうと、扉を思い切り開いた。

「ヒッ!?」

 中にいた人が、小さな悲鳴を上げる。掃除用具入れが、ガタッと小さく揺らいだ。夏絵手が目を丸くする。

「キョウ、あなた、こんなところに……!」

「わ、わあぁ……」

 響は僕らを見ると、目の端に大粒の涙を浮かべてロッカーから出てきて、僕にひしっと抱きついた。

 僕は「わっ……と」と、よろけて転びそうになるのをこらえる。

「怖かった、開けられそうになった、殺されるかと思った」

 響は泣きながら、ガタガタ震える。

「どうして開られずにすんだのです?」

 夏絵手がきくと、響は少し考える素振りを見せる。

「なんか、通信? が、入ったみたいで……。扉開ける寸前に、別のところに行った」

 泣きながら、なんとか説明する。

 通信……じゃあ、裏切り者は最低でも2人いるってこと、だよな。1人じゃないなら、どうして今まで遭遇しなかったんだろう。通信するなら、バラバラに動いてるよな? どこにいたって、おかしくないのに……。

「それは、たぶん朱雀様が来る前に、集団行動に切り替えたからじゃないかな……」

 僕のつぶやきが聞こえていたらしく、響が涙を拭いながら言った。

「裏切り者の通信が聞こえたんだ。内容は『最上階に集まれ』って。最上階はボスの部屋しかないし、集まるにはちょうどいい場所なのかも」

 体温が、一気に下がった気がした。

 まさか、ボスを殺そうとしている……とか、そんなわけないよな? 夏絵手は「朱雀を探していた」って言ったし。けど……。

「……行くぞ、最上階」

 僕は、不安に押しつぶされそうになりながら、2人に言った。

「「はい」」

 僕の不安に気がついたのか、気がついていないのか、2人は心配そうな顔をしながら、小さな声でうなずいた。


 ☆


 階段を駆け上がる。

 死体があるのは、階段も同じだ。けど、最上階に近づけば近づくほど、死体は出てこなくなった。

「気持ち悪いな、死体ばっかり」

「この中の一部にならなくて、本当に良かったです」

 響は少し呼吸を荒らげながら、夏絵手はゼーゼーと息切れしながら言う。2人とも、喋る余裕があるなら、もっと急いで。

「朱雀様の鬼畜野郎!」

「朱雀様の体力お化け!」

 騒がしい。置いてくよ。

 結局2人を置いていくことはなく、ワーワー言う2人と一緒に最上階に到着した。勢いそのままに、ボスの部屋へ走る。扉を思い切り開いて、中へ飛び込んだ。

 部屋にいたのは、ボスの他に3人。1人は、僕と同じく刀を持った若い女の人で、あとの2人は刃物がついた円盤を手に構えた大学生くらいの男女。

 ボスは裏切り者の後ろで、縄で縛られていて、身動きが取れない状態だ。

「誰だ、あんたら」

 いつでも攻撃や防御ができるように、刀を構える。

 円盤の男女が言った。

「ユダの弟妹と彼女だ」

「お前が殺したユダの」

 ユダ――先月殺した、裏切り者だ。

「僕は裏切り者を始末しただけ」

 声が震えそうになるのを、必死にこらえる。

 あのときは、考えられなかった。

 誰にでも家族がいて、大切な人がいて――人を殺すとは、人の幸せを壊しているということだと。

「兄さんは良い人だった!」

「すっごく優しかった!」

 男女はそう言うと、円盤を投げてきた。

 高速回転する円盤を、刀ではじく。

「キョウ、楓、外に出ろ! ――つっ!」

 再び飛んできた円盤をはじくと同時に、背後から斬りつけられる。なんとか避けたけれど、刃が左腕をかすめた。

「朱雀様っ」

「馬鹿、危ない! 早く出るぞ」

 夏絵手が、よろけた僕に駆け寄ろうとするけれど、響に止められた。

「で、でも、3対1なんて卑怯です! それに、怪我して……!」

「守るものがあったら、動きが制限されるだろ。朱雀様のために、ここを離れるんだよ。大丈夫、あの人は負けない。凄腕殺し屋はだてじゃないから」

「っ……わかりました」

 2人が部屋から逃げ出す。裏切り者は追いかけなかった。2人はどうでもいいってこと……? 僕だけに恨みがあるのかな。ユダを殺したことが理由なら、響も狙われそうなものだけど。

「あの2人は助からないわよ」

 刀の女が言う。

「もう1人、外に待機している仲間がいるから」

 嫌な笑みを見せる。

「相当焦っていたのね。はじめから、ちゃんといたのに」

 信じられず、走ってきたときのことを思い返す。

 やっぱり、人がいた記憶はない。

 また円盤が飛んできた。キンッと音を立ててはじく。

「あんたは知らないでしょ! 兄を殺されて、毎日が壊れることの、苦しみを!」

 妹が声を荒らげて、力任せに円盤を投げる。

 僕は、それを叩き落とした。

「知らない」

 ううん。本当は知っている。

「裏切ったあいつが悪い」

 たとえユダが最低最悪な裏切り者でも、殺した僕が悪い。

「僕は任務を遂行しただけ」

 ふざけんな、と小さな声が聞こえた。

 ユダの妹が、僕をにらむ。

「ふざけんな! 今ここで死んで!! 死んでよっ……!」

 円盤は僕のそばに落ちている。

 武器がない妹は、攻撃のしようがないのか、その場に泣きながら座り込んだ。

「兄さんを、返してよ……」

 彼女を見て、胸が苦しくなる。

 僕もよく考えた。神様にお願いした。


〝お母さんとお兄ちゃんを家に帰してください〟


 でも、どれだけ待っても帰ってこなかった。

 当たり前だ。2人とも、とっくに死んでいて、この世界のどこにも存在しないのだから。お兄ちゃんの時なんて、死ぬ瞬間を僕は見ていた。

 僕より長く生きているこの人が、理解できないはずがない。

「あんたの命と引き換えに、兄さんを――」

「僕を殺して、現実が変わるとでも思ってる?」

 僕は、円盤を拾った。妹に向けて足を進める。

 手が届く範囲まできて、円盤を差し出した。

 妹は目を丸くしている。

「無駄だよ。神様なんて、いないんだから。願いを叶えてくれる神様なんてもの、現実から目を背けたい人がつくった架空の存在」

 みんなはそう思わないかもしれない。何言ってんだって、変な顔をするかもしれない。だとしても、僕はそう考える。

「それでも、お兄さんが戻ってくると思うなら、やってみてもいいんじゃない? 意味ないだろうけど」

 妹は、円盤を受け取った。それから、僕を見上げる。

「変な子ね。さっさと殺せばいいのに」

 ポツリとつぶやいた。

 立ち上がると、円盤を構える。

「いいの? あんた死ぬけど」

「いい」

 そもそも、お前らが僕を殺しに来たんだろ。なんでそこで確認するんだよ。

「3人一気に戦闘不能にする」

 ボスに、「裏切り者を殺せ」と命令されていない。

 だから、3人とも殺さない。けれど、何もしないでいると命を取られてしまう。間を取ろう。生かさず殺さず。

 僕は刀を持ち直す。

 妹から攻撃される前に、峰打ちした。

「お、おい、卑怯だ!」

 兄が言う。

 たしかに、卑怯かもしれない。でも、目の前に的があったらやるしかないじゃん。

「くそっ」

 兄が円盤を投げようとする。

 僕は床を蹴って、兄と距離を詰めた。

 反応できずに固まっているところで、妹同様に気絶させる。

 残りは1人――。

「止まりなさい! 殺すわよ」

 刀の女を振り返って、足を止めた。

 女は、ボスの首に刀の刃先を突きつけていた。脅しではないらしく、首から少し血がたれている。

 頭が真っ白になった。

「ボスから離れろ」

「あら。どうして?」

 女は、口角を上げる。目には冷たい光が宿っていて、ゾッとする。

「離れろ」

 また、目の前で大切な人が死んでしまう。

 お兄ちゃんのときみたいに。

「怖い顔しないで。大丈夫。たった1人、死ぬだけよ」

 プツン、と糸が切れた。

 目の前が真っ暗になって――気がついたら、女は倒れていた。血は流れていない。

「あ、れ……?」

 僕は、いったい何をしたんだろう。

 血は出てないから、殺してない、よね。

「朱雀」

 後ろから聞こえたボスの声に振り返ると、そこにはボスと、響と夏絵手がいた。

「朱雀様、大丈夫か……?」

「心配です……」

 2人とも、無事だったんだ。刀の女の人が、部屋の外にも仲間がいるって言ってたけど、僕を動揺させるための嘘だったのかも。

 ホッと息をついたあと、ボスにきく。

「怪我、痛くない?」

「ああ、平気だよ。ありがとう、朱雀」

 うなずいてくれて、安心するはずだけれど、胸がモヤモヤした。

 何が嫌なのだろうか。何が気に食わないのだろう。

 大切な人が生きていて、すごく良いことのはずなのに。

 考えて、考えて、ようやくモヤモヤの原因がわかった。

 朱雀として心配していないからだ。

「朱雀は、僕じゃないよ?」

 ここは殺し屋組織だから、コードネームで呼び合うのはわかっている。でも、今はそれが嫌だ。

「僕は、朱雀として心配しているんじゃないのに」

「どういうことだい?」

 優しいほほ笑みが、胸をえぐる。

 なんで、なんでこんなに苦しいのだろう。

 裏切り者と、家族の話をしたから?

 だとしたら、影響を受けすぎだよね。

 でも……実際、そうかも知れない。

「ボスじゃなくて、お父さんを、心配してるんだよ」

 ボスは、僕の父親だ。

 殺し屋の誰も知らないこと。唯一、響だけが知っている。

「お父さんが殺されたら、どうしようって、怖かった。お兄ちゃんみたいになったら――」

 言いかけて、口をつぐんだ。

 お父さんの顔が険しくて、ちょっと怖い。

「そんなことを言ってはいけないよ。言葉には、そのとおりになる力があるからな」

 お父さんは、首を横に振る。

 僕の肩に手をおいて、目を合わせた。

「わかったかい?」

「……うん」

 小さくうなずく。

 お父さんの言うことは、まるで「お父さん」のようだった。

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