第11話 対話
テスト明けの週末、僕は組織にやってきていた。
今日は、ボスに呼ばれたから。
それがめんどうな方法で、なんとわざわざ手紙をよこしてきた。
文末には、ご丁寧に『シュレッダーにかけること』と記して。
当たり前だろ馬鹿野郎、と思いつつ、それは言わない。
いつ、どこで、どんな方法で盗聴されているか、わからないからだ。
聞かれていたら、たまったもんじゃない。
ボスの部屋の前に来ると、ノックした。
「失礼します」
扉を開ける。
部屋の奥の机に、ボスが待ちかまえていた。
僕は片膝をつき、頭を垂れる。
ボスはさっそく、話を始めた。
「ある小さな反社会的勢力の組織が、私の会社の裏情報――すなわち、ここが殺し屋組織であることを知った」
「それは、どうやって」
「簡単だ。2つの組織の架け橋となる裏切り者がいた」
裏切り者……か。
よくそんなことができるな。
たとえ隠れて動いていても、それがボスの耳に入れば、こうして「裏切り者」呼ばわりされる。
「それを殺せと」
「ああ。そのとおりだ」
裏切り者と言われ、最後には口封じのために殺される。
そして、裏切り者から情報を提供された反社たちも、同様の結末を迎える。
「今回は、もう1人にも任務を与えている。お前と協力してもらう」
「協力……?」
協力なんて、今まで一度もしたことはない。
全部、僕1人でやってきた。
死体処理は除くけど。
「入っておいで、キョウ」
ボスは、僕の後ろに目を向けた。
ガチャ、と音がして、
「失礼します」
と声が聞こえる。
ずっと頭を垂れているから、誰が入ってきたのかは、わからないはずだった。
でも――わかってしまった。
タン、タン……と、足音が近づいてくる。
そして、僕の真横で音は止まった。
「……こんばんは」
聞き覚えがありすぎる声。
僕は顔を上げた。
「初めまして。朱雀様」
そこにいたのは、僕の親友であり幼なじみである不知火響だった。
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