閑話2 勇者
ワタシはハルカ。世界にただ一人の勇者なんだって。
自分で言うのもなんだけどいい具合に出るところは出て、引っ込むところは引っ込んでいるいいカラダのとっても可愛い美少女なの。
それなのに魔王を倒さないとワタシはニ十歳以降を生きることは許されないらしいの。なにその理不尽。
こんなに性格も良くて容姿端麗でおっぱいも柔らかくて触り心地も抜群なワタシが美少女止まりで美女にも美熟女にもなれないかもしれないなんて世界にとって大損失だわ。
ワタシはまだまだ青い果実だけど、もう数年、いえ後一年もすればもっとおっぱいも大きくなって同年代の女の子ですら羨むいやらしい体つきになって、出会う男たち全てを狂わせ惑わせる美少女として世界にその名を残すの。
その後も年を経るごとに順調にその美貌を伸ばしてワタシに結婚を申し込みに来る男が後を絶たないの。
でも、ワタシは全ての男に愛されたいわけじゃないの。ただ一人の運命の人に会ってその人と静かに暮らしたいだけなの。
それこそ、おじいちゃんおばあちゃんになっても夜一緒に愛し合うような…ぽっ。
でも、そんな未来を諦めたわけじゃないわ。
要は魔王を倒せばいいんでしょ。魔王を倒しさえすればいい男を見つけてあんなことやこんなことしたりされたり、ぐふふ。
明るい未来はこの手で掴むのよ。いい男のアレもね。
とは言っても、同年代の男の子じゃあまりに頼りなくて特に魅力を感じないのよね。
絶対にワタシを押し倒すことなんてできないだろうし。
かと言って、ワタシにステータスで上回ることのできる人なんているはずもないし、ないものねだりしてもしょうがないのかなあ。
いやいや、せめてワタシが油断している時には不意打ちでキスぐらいしてくれないと物足りなさすぎるわ。勇者求む。って勇者はワタシか。
そろそろ同行者を選定しようってことで連れて来てくれた人たちもなんかイマイチだったしなあ。
気合が入ってるのはいいんだけど、足手まといっていうかワタシに付き合って無駄に死にに行くことないじゃんって思っちゃったんだよねえ。
ワタシだってむざむざ死ぬつもりなんてないけど、最初から玉砕しますみたいな感じで来られると…ねぇ。
少しぐらい希望とか可能性とかを感じさせてくれないと、背中を任せられないというか何と言うか。
そう言えば十英傑って呼ばれてる人たちってどうなんだろう。
それなりに強いんだろうけど、まだ会ったことないんだよねぇ。
勇者機構に子供のころから所属していた異例の人たちみたいだから特別な力を持っていそうなんだけど。
そうなら、誰か一人ぐらい力を貸してくれるといいんだけど。
一度会いに行ってみようかしら。
◇◆◇
何よ、あの剣聖。
けしからん美人だわ。
ワタシもあの歳になればきっとあんな風になってみせるわ。
あのむしゃぶりつきたくなるようなおっぱい、形が変わるくらい揉みしだきたくなるようなお尻、見事だわ。
あんなの見ちゃったら、気になって夜しか眠れないじゃない。
違う違う。そうじゃそうじゃない。
すべる者を待つ身の自分では協力することはできないってどういう意味よ。さっぱりしたご飯が食べたくなるくらいさっぱり分からないわ。
他の十英傑にも会いに行ったけど、揃いも揃ってすべるものがすべるものがってそんなに聞かされるとワタシのお肌がすべすべしちゃうわよ、まったく。
でも、十英傑と呼ばれるだけのことはあったわね。確かに何か可能性を感じさせてくれる力は持っていた気がするわ。
槍聖だけはワタシのおっぱいに気を取られて協力してくれそうだったんだけど、最初からおっぱいしか見てなかったみたいだから逆にこっちから願い下げよね。
遠距離攻撃のある弓聖か
弓聖のお姉さまも色気たっぷりでいい乳してたなあ。あんなのと乳合わせしたらワタシのおっぱいもレベルが上がりそうよね。そっちの協力は別にお願いしに行こうかしら。
じゃなくて、どうして十英傑が誰一人として協力してくれないのよ。こんなに可愛い勇者ちゃんが必死にお願いしたって言うのによ。あァァァんまりだァァアァわ。
ワタシって実は人望がないのかしら。なんか悲しくなってきたわ。くすん、涙が出ちゃう、女の子だもん。
でも、こんなところで挫けてなんていられないわ。
明日もダンジョンに行くぞー。主にいい出会いを求めて、ついでにレベル上げね。
◇◆◇
相変わらず同行者も決まらないし、こうなったら私一人で魔王に挑むしかないのかしら。
レベル上げも完全に作業になっちゃったし、とても退屈な日々だわ。
刺激がないわ。
「試練の魔物」もやたら硬いだけのを除けばどうってことないのよね。硬いと言えば、アレは硬い方がいいって言うけど本当かしら。カッチカチだと痛そうなんだけどそんなことはないのかしら。
「試練の魔物」と言えば、わざわざ行って、いなかった時のことを思い出すだけで腹が減るわ。違うわ、腹が鳴るわ。これも違うわ。お腹が減ってるのね、何か食べましょう。
何の話だったかしら。そうそう退屈な日々の話よね。何より、潤いがないわ。
潤いって大事よねぇ。心にもカラダにももっと潤いが欲しいわ。
せっかくのぴちぴちなのに宝の持ち腐れだわ。
やっぱり恋よね。恋は大事だわ。
どこかに若くて活きのいい探索者はいないものかしら。
世の中にこれだけたくさんの男がいて、どうしてワタシには素敵な出会いがないの。
どんな小さな好機も逃さないようにこんなに気を配っているというのによ。
ひどいじゃない。世の中間違っているわ。
勇者は必ず魔王に挑むように、運命の人にも出会うようになっているべきだわ。
ワタシの運命の人、待っててね。必ず草の根を分けても見つけ出してみせるから。
あら、ミースで最年少武豪誕生ですって。16歳になりたてのほやほやなんだ。
すごいじゃない。このクラスアップの速さって十英傑に匹敵するんじゃないの。
もしかしてもしかするんじゃないの。ちょっと会いに行ってみようかしら。びびびって来ちゃったらどうしよう。
もしかしてもしかしなくてもこれって運命の出会いになっちゃったりしなくもなかったりしなくない。
期待に胸膨らませて、おっぱい大きくなっちゃったらどうしましょう。
男たちのいやらしい目に晒されちゃうことになるわね。とっても嬉しいわ。
男たちに妄想の世界であんなことやこんなことされちゃうのね。
少なくとも現実の世界で処女を失う前に命を失ってたまるものですか。
いざ、行かん、ミースの地へ。
捧げる者 深香月玲 @crescent_
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