第56話 僕たちの戦いはこれからだ

改めまして、最終日の結果はこちら。

プリメーラ10309、ツヴァイク7506、ドライガン8654、キャトレーブ8032、サンクレイド8106、ゼクスベルク8791、セットフィーネ9022、ユイトセイン8376、ヌフクール9853、ディスマルク8527で本日の勝者はプリメーラだ。

そして総合一位もプリメーラだ。二位はユイトセイン、三位はセットフィーネ、以下サンクレイド、ドライガン、キャトレーブ、ゼクスベルク、ヌフクール、ツヴァイク、ディスマルクという結果に終わった。


「やったのだ。勝ったのだ。これでカナタとの明るい家族計画が一歩前進なのだ。」


あのぉ、プリメーラさん。何を仰っているのかよく分かりませんがお顔が大変だらしないものになってますよ。


「総合三位を死守なのじゃ。まあ良しとするのじゃ。」


「挽回できなかったでござるよ。悔しいでござる。これというのもツヴァイクのせいでござる。」


「ツヴァイクのせいにゃ。呪ってやるにゃ。」


「勘弁してくれ。俺様だってわざとやったわけじゃない。」


「あれだけやりたい放題やってもだめだったのー。悔しいのー。」


「ディスのせいで今日の勝利も総合一位もなくなったの。この恨みいつか晴らさでおくものかなの。」


「第二回では協力するから許してほしいのー。この通りなのー。」


「あー、もっと早く気付いてればいけたかもー。回復とか補助でもMP稼げたんだよねー。」


そうか、ヌフクールは気付いたんだね。さすがというか伊達で聖者(セイント)をやってるわけではないか。


「なんですってなのー。ぐぬぬなのー。」


ディスマルクは全く気付いていなかったのか。ご愁傷様。

ちなみに今日の狩場はこんな感じだったらしい。

プリメーラ、竪穴二十層

ツヴァイク、竪穴十九層

ドライガン、竪穴十八層

キャトレーブ、竪穴十九層

サンクレイド、竪穴十九層

ゼクスベルク、竪穴十八層

セットフィーネ、湿原南側深部

ユイトセイン、山岳東側深部

ヌフクール、山岳北側深部

ディスマルク、山岳東側深部


こうして見ると「岩山落とし」組は天井の高さを気にしなくていいオープン型、七武聖は自分にあった効率のいい場所を選んだみたいだね。


「カナタ、早速だけど総合一位の一泊二日独占権を明日から行使するのだ。行きたいところがあるならどこでも付き合うのだ。例えば、カナタのご両親に会いに行くとか、自分の両親に会いに行くとか、新居を探しに行くとかでもいいのだ。子供服を選びに行くのもいいのだ。」


プリメーラさんや、取り敢えず落ち着こうか。鼻息が荒いし、目が血走ってますよ。


「明日から一泊二日ならわたしの一日独占権は三日後なの。今から楽しみなの。一日中頑張ってもらうの。ふふふなの。」


「そうすると妾は四日後なのじゃ。どこか特別な場所でするのも乙なのじゃ。」


盛り上がってるところ申し訳ないですけど、地図(マップ)情報のこともありますからそろそろ連絡来るんじゃないですかね。多分、隙間なく計画が立てられていると思うので連絡が来たらそっちを優先しますからね。


「心配しなくてもよいのだ。既にフィオレンティーナの了承済みなのだ。」


あら随分と手回しのいいことでいらっしゃる。

ということは逆に三人に独占権を行使された後は、世界各地に地図(マップ)情報の収集と「捧げる者」に会いに行く旅が始まることになるのかな。旅と言っても移動自体は転移で一瞬のことだけどね。とにかく忙しくなることは間違いなさそうだ。


「カナタと世界各地を巡るのもいいでござるな。新婚旅行としてはうってつけでござる。」


「妾は南西大陸の夜の砂漠を一緒に歩きたいのじゃ。それで押し倒されて砂が入るからダメなのじゃとか言いながらするのがいいのじゃ。」


「はいはーい。うちはお魚の美味しいところに行ってみたいにゃ。」


「暑いところは苦手なの。寒いのはもっと苦手なの。穏やかなところがいいの。」


「あーしは酒の保管庫をカナタっちと一緒に空にして回りたい系。新酒巡りもいいかもー。」


いろいろ勝手な妄想しているようで連れて行くのは全然構わないけど、そんなのんびりした気分にはなれないと思うよ。

少なくとも僕は直接「青」から地図(マップ)情報もらって「紫」になってもらわないといけないから、ゆっくり相手なんてしてられないと思うし。


そして地図(マップ)情報が集まれば魔王の居所が判るはずだし、「捧げる者」を全て「紫」にすることができた時に「統べる者」として僕に何か変化が起きたりするのだろうか。

今日からひと月もしない内に世界を揺るがすほどのことが起きるかもしれない。多分起きるだろう。いや、起こさなくてはならない。

魔王をなんとかして明るい未来を確かなものにするんだ。あの下ネタ満載馬鹿だけど今も頑張ってるだろう勇者にも希望があっていいはずだ。勇者(ばか)にとって都合のいい未来に一方的に付き合ってやるつもりはないけどね。その内、あらゆる分野で太刀打ちできないと判らせてやる。今に見てろ。いつか不意打ちのキスなんて絶対躱してやるんだからな。

遠くで勇者(ばか)がくしゃみしていて、「カナタがワタシのこと気にしてるわ」なんて喜んでいるのが見えた気がして寒気がした。


そう考えれば明日からの四日間は束の間の休息なのかな。僕にとってはなんか違う気がするけど、まあいいや。精々楽しく過ごせるようにしよう。


「カナタ、それじゃあ今日の分のしっぽりからするのだ。」


弾けそうな笑顔でそんなこと言わないでほしいかも。でも一枚いただきました。ごちそうさまです。


「あの不可侵剣聖がえらい変わりようだね。十日前の俺様に言っても絶対信じないだろうぜ。」


「ユイが話さなくなってたのは十年前の其方の所為もあるというのは自覚があるのじゃろうか。十年前の其方にも何か言っておくといいのじゃ。」


「そうでござる。ユイの十年分の声を返してほしいのでござる。利子をつけて返すでござる。」


「とんだとばっちりだぜ。」


「そんなことないにゃ。ちゃんと反省するにゃ。」


「ドライもゼクスも何とか言ってくれよ。」


「吾輩には何もできぬよ。すまんな。」


「オイラに言われても無理。」


「ぽんこつのはずの誰かさんが現れてから雰囲気が変わったのー。なんか納得いかないのー。」


「カナタっちのおかげで全てがうまくいきそうでぱおんだな。」


「これからずっといっしょなの。」


二十日ほど前の僕もこんな状況は全く想像もしていなかった。

まさか、武豪にクラスアップし、勇者と共に行くことを決意し、十英傑とこんな風になるなんてね。

おまけに世界の行く末を任されるなんて、ぶっちゃけあり得ないでしょ。


「カナタ、行くぞ。」


楽しそうなプリメーラの手を取って転移した。

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