第54話 総長
「カナタさん、これは一体どういうことですか。」
なんで僕は責められているんだろう。
どういうことかと言われても昨日今日で「試練の魔物」を倒して得られたお宝で使えそうな魔鉱石やインゴットを
「そこのあなた。至急、総長に連絡して来ていただいて。それと全ての武器防具開発部の部長も直ちに招集してください。他の方たちは分類作業と一覧作成を手伝ってください。」
さすが生真面目を絵に描いたようなナターシャさん。お仕事をてきぱきとこなしている姿がかっこいいです。
指示された人たちもてきぱきと作業を進めている。みんな優秀なんだなあと感心していると改めてナターシャさんに声をかけられる。
「改めて伺いますけど、なんなんですか、この量は。しかも数時間前に確認されたダマスカス鋼とアダマンタイト鋼を含む希少品の数々は。なんでミスリル銀がこんなにあるんですか。魔鉱石の量なんて中堅の専門業者の在庫の比じゃないですよ。極めつけはオリハルコンです。私も実物を見るのは初めてだったのでまさかと思いましたがあまりの衝撃にイッちゃ…違います、失神するところでした。なんてことしてくれるんですか。後で責任取ってくださいね。」
最後だけ小声で耳打ちされた。どう責任を取れというんだろう。
で、オリハルコンってそんなに珍しいものなのか。それ、知らんかったんとってんちんとんしゃん。いつ入手してたんだろう。全然覚えていないや。
そんでもって、アダマンタイト鋼とか持って帰ったら職員総出でちやほやしてくれるんじゃなかったの。なんか話が違うんじゃないの。
「えぇ、ちやほやどころの騒ぎじゃなくなるわよ。これだけ公になれば誰もあなたを放っておかないでしょうね。特に未婚の女性からは積極的に迫られることになるでしょうからお気をつけなさい。」
他人の年齢はよく分からないが、多分プリメーラ達よりは少し上だろうと思われる落ち着いた雰囲気の美しい女性から声を掛けられる。
「総長、お早いお越しに感謝いたします。」
「大体、状況は把握しているわ。これだけの素材があれば開発部も活況に沸くだろうけど、今後のことについてはいろいろと取り決めておかないとね。」
総長ってことは勇者機構の一番上の人なのかな。大物来たー。若く見えるけどすごいできる人なんだね。
「私は勇者機構総長のエカテリーナ。よろしくね。あなたは最年少武豪にして、勇者を手懐けて、十英傑をも束ねるカナタくんでいいのよね。」
最年少武豪についてはそうなんだろうけど、後に続いたのは何かの間違いだと思います。
「違わないわよ。あの勇者があなたの噂を聞きつけるやミースに向かったかと思えば形振り構わず、それこそ尻尾を振ってお尻を突き出して協力を取り付けたと聞いているわよ。それこそワタシのカナタに手を出したらそれ以上のことカナタにしてもらうんだからとか訳の分からないことを自ら言いふらすほどにね。」
そんなことになってるのか。あの
「十英傑も何を考えているのかよく分からなかったけど、あなたが来てから全員がフォルティスを離れようとしないばかりか、これまで断固として拒否してきた勇者への同行を突然受け入れたというから驚きよね。まとめて手籠めにした後はここ一週間ぐらい順番に調教しているとも聞くわよ。やるじゃない。」
あはは、そうなんですね。十英傑は親戚みたいなものでして。弟みたいな僕を可愛がってくれてるんですよね。
「ナターシャ、あなたもそうなのかしら。すっかり女の顔になっちゃってそんなにこの子は良かったのかしら。」
「えっ、いや、あのっ、そのっ、はいっ、お代わりしました。」
顔を真っ赤にしてしどろもどろのナターシャさん。何言っちゃってるんですか。大丈夫ですか。
「まあ、あなたが誰を抱こうがそこまで詮索したり、問題にするつもりはないから安心してちょうだい。ただ、空白地帯の
どういうことでしょうか。
「捧げる者」とかのこと聞かれちゃうのかなあ。説明しちゃっていいんだろうか。
どこからを知らない振りしようかなぁ。
「今回、持ち込んでいただいた素材については適正価格で引き取らせてほしいわ。それと、今後も可能な限り納品をお願いしたいの。特に希少品についてはね。」
そんなことですか。適正価格じゃなくて安く買い叩いてくれてもいいですよ。
僕にはMP集めの副産物だし、蓄えておいても
あー、でも魔石は運否天賦に使うから大きいのは取っておきたいし、ライラにはいろいろ融通してあげたいかも。
「そうはいかないのよ。ありがたい申し出ではあるけれどあなたからこれだけの物を安く引き取ることが定着してしまうといろんなところで影響が出てしまうわ。例えば他の探索者からの買取価格が下落してしまうとかね。そうなると生活が苦しくなる探索者も増えるかもしれない。それはあなたも望むところではないでしょう。」
そうですね。
僕は勇者に同行を約束することで既に生活の保障をしていただいてますが、僕の所為で生活苦になる人ができてしまっては申し訳ないです。
「それとあなたの専属の防具職人については既に開発部の一員として名前を連ねてもらっているから優先的に素材を回すように約束するわ。その上で、改めてお願いするわ。あなたについて余計な詮索はしないし好きなように活動してくれて構わない。協力できることは勇者機構の全力で全面的に協力するから、その代わりにと言ってはなんだけど素材の提供を継続的にしてほしいの。どうかしら。」
うん、僕にとって不利益なことは何もないんじゃないかな。逆にちょっと前までみたいに片っ端から魔物を狩りまくるとそこを狩場にしている探索者とかに迷惑をかけることになりかねないから、これからは不人気な「試練の魔物」や要請のあった素材を狙いにいけば他の探索者と棲み分けができて余計にいいかもしれない。
買い取ってもらった資金は父さん母さんに渡せば親孝行にもなるだろう。
「足りないようなら職員一同にお手付御免を言い渡しておくわ。気に入った者がいれば手当たり次第連れ込んでやっちゃっても構わないわよ。もちろん私も一肌でも二肌でも脱いじゃうわよ。」
「総長!何を仰っているんですかっ!ちょっとはお歳をお考え下さいっ!自分の子供よりずっと若い子となんて…。」
「ダメなの?割と本気だったんだけど。若い女では到底味わえない経験を積んだ女ならではの高みを味合わせてあげるわよ。」
え、総長さんは三十前半ぐらいかと思ってたけど僕よりずっと年上のお子さんがいるってことは…あはは、うそでしょ。
総長さんの年齢については取り敢えず置いておいて、素材提供の申し出については了承しておく。
「ありがとう。お手付御免については半分くらい冗談ではあるけど、最初にも言った通りで言い寄ってくる女性は多いだろうから気を付けることね。恋愛は自由だから私には止められないからね。私も機会があれば夜這いに行くわ。」
「総長っ!」
「ナターシャが怖いから退散するわ。後、よろしくね。」
周りで作業をしていた女性職員たちが良いことを聞いたとばかりに妖しく微笑んでいる。
こうして総長のお墨付きを得たとばかりに、事あるごとに女性職員に声をかけられたり、食事のお誘いを受けたり、しな垂れかかられたり、抱きつかれたり、夜這いをかけられたりするようになる。
夜這いに関しては
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