第52話 賢者ユイトセイン

悲喜こもごもとなった咖喱のお店を後にし、ユイトセインの部屋まで転移して今は二人で長椅子に並んでお茶を飲んでいるところだ。

だが、相変わらず会話というものは存在しない。僕が問いかけては「ん」か身振り手振りが返ってくるだけだ。

そう言えば、前回まとめてイッていただいた時にも声を押し殺していたような。こうなると意地でも声が聞きたくなってきた。

通知メッセージで僕の音声で質問すれば音声で返してくれるんじゃないかと期待して送ってみたが文字でしか返してくれなかった。うーん、手強い。

ちなみに通知メッセージで音声を送るのはその場で発声しなくても考えるだけで可能だ。エクセラが最初に音声を送ってきた時もいきなりだったから驚いたもんね。音声はちゃんとその当人の声質そのままに送られてくる。いったい神意排他能力増幅機関システムは何をどうしているんだろう。とても不思議だ。

その後もできるだけ身振り手振りでは伝えにくそうなことを質問してみるが、そういう時には通知メッセージを使ってくるようになってしまった。攻める順番を間違えてしまったようだ。


喋ってもらおうと何度目かの短い思案をしていると、お喋りの時間は終わりとばかりにユイトセインが唇を重ねてくる。喋らせようとするのは諦めて頭を切り替えようとしたところでいけない思考に辿り着いた。喋ってくれないならせめて喘ぎ声だけでも聞かせてもらおうと。そうと決めればとことん気持ちよくなってもらって可愛い声で鳴いていただきますよ。お覚悟はよろしいですかな。そう独り言ち、鳴かぬなら鳴かせて見せようユイトセイン大作戦を決行するのであった。

とは言ってもやることは行き当たりばったりだ。臨機応変な当意即妙の柔軟で瞬発力のある対応をするだけだ。いっそのこと正確無比を発動させようかとも思ったが、後のことを考えると使用するのを思いとどまった。


などと考えている間にも積極的に舌が絡まってくる。体が小さいせいか首に回された手でぶら下がられてる感じがある。ユイトセインとしては上を向いている感じなので辛いだろうと思い、抱き寄せるようにして僕が仰向けに横たわる。上になったユイトセインはなぜか嬉しそうだ。

ちなみに十英傑を身長の高い順に並べるとユイトセインはディスマルクに次ぐ小ささだ。身長は10cmぐらい違うが、胸の膨らみはユイトセインが圧倒的に控えめだ。いやいや、僕は別に胸の大きさで女性の価値が決まるなんて思ってませんよ。男だって身長とかアレの大きさで決まるなんて思っていませんからね。ただ、僕はゼクスベルクよりちょっと小さいぐらいだが、もう少し大きくなると信じて疑っていない。最終手段としてはスキルをつくってでも大きくしてやるつもりだ。もちろんそれをやるとしても魔王を何とかしてからのことだ。あ、もちろん大きくするのはアレではなくて、身長の方ですからね。


などと考えている内にユイトセインはいそいそと僕の服を開けさせている。僕もされてるばかりでは喘がせられないので攻勢に転じるとしよう。ユイトセインが僕の肌に触れてくるので僕も両手で彼女の可愛いお尻を弄っていく。僕に触られるのが気持ちいいのか徐々に吐息が甘く荒くなってくる。だが、やはり声は押し殺しているようではっきりとした音にはならない。ならばと、ユイトセインが僕の腰辺りに跨るような体勢にさせて、彼女のお尻を掴んで僕の上で前後させる。すると僕のちょっと硬いのが彼女の敏感なところに当たるようで、次第に僕の硬いものにも彼女の熱が伝わってきてさらに息が荒くなってくるものの頑なに声を洩らそうとはしない。

ちょっと手を止めると切なそうに僕を見てくるので、ここぞとばかりに言ってみる。ちゃんとどうしてほしいのか口で言わないとしてあげませんよ、と。すると「さっきまでと同じように続けて」と通知メッセージが届くが意地悪して口で言わないとダメですと告げる。すると自分で体を動かして擦りつけようとするので、その体を抑えて動けないようにする。「して」って一言でいいから言わないとおしまいにしちゃいますよと告げると、しばらく身動ぎしていたがとうとう意を決したようだ。


「…して、なの。」


おお、自己紹介以来の「ん」以外を聞けた。やはり、可愛らしい声だ。こうなるともっと声が聞きたい欲が出てくる。

気持ちいいかどうかも言ってくれないとすぐ止めちゃいますよと念押して動きを再開させる。すぐにまた吐息は荒くなってくるが声らしい声は洩れてこない。いいのか聞いてちょっと待って返事がないので動きを止めると小さな抗議の声が上がる。


「…やめちゃ…いやなの。」


とっても可愛い声でそんなことを言われると破壊力抜群ですね。もっと可愛い声を聞かせてくださいとお願いして動きを再開すると、何かの箍が外れたのか次第に声が随所で洩れてくる。


「…あっ…っん…あぅっ…んんっ!」


そんな可愛い声を出されると僕も興奮してきます。もっともっと声にしてください。


「ああぁっ…いい…のぉ…っ…カ…ナタ…すっ…きぃ…もっとぉ…」


さらに硬くなったものに擦りつけるようにしがみついてくる。


「…ひっ…あ゛ッ…な、んんっ…なんか…く…る゛…ッ…くる…きちゃ…っっ…あああ゛あ゛っっ!!」


感じたままを言葉にして小さな絶頂を迎えたようだが、さらに感情を爆発させてもらおう。

手を差し入れて敏感なところを直接攻める。控えめな胸も同時に攻める。


「…やぁ、らめぇ…なのぉ…っん…っ!ひっ…!!あっ…また…くる…きちゃ…う゛っ…くる゛…ッ…あぁんっ…くる…くる…ああああッッん!!!!!」


息も絶え絶えの様子になってしまったが、本番はまだまだこれかららしい。

僕の服を脱がせて硬くなっているものを取り出すと自ら熱くなっているところに突き立てた。


◇◆◇


「人前で普通に話すのは十年振りくらいなの。」


実は二十歳ぐらいの時に子供みたいな声だと笑われて以来ほとんど人と話さなくなったという。

詠唱も聞かれるのが嫌で、無詠唱に磨きがかかったんだとか。

誰だ、そんな馬鹿なことをするやつは。こんな可愛い声を笑う奴は人類の敵だ。聞いてるだけで聴力が良くなりそうじゃないか。世界無形文化財に認定すべきだ。


「そこまで言われると逆に恥ずかしいの。」


何を言う、早見優。ん?

僕が直々に世界中の人々にユイトセインの声の可愛らしさを説いて回りたいくらいだ。


「カナタが可愛い声って言ってくれるだけでいいの。他の人はどうでもいいの。」


まあ、ユイトセインがそういうなら僕の中でだけ崇め奉ろう。

それで十英傑同士でも今まで通りに喋らないつもりだろうか。


「プリム達とは話せると思うの。でも、ツヴァイクにも声を笑われたことがあるから彼がいるところでは話さないつもりなの。」


この可愛い声を聞けないとは哀れなツヴァイク。

除け者にされて悔しがる彼の姿が目に浮かぶようだ。この声を笑った報いを受ける時が来たと思えば仕方あるまい。

そう言えば、今日のことはどうやって探索者に頼んだのだろう。まさか一人ずつ身振り手振りで説明したわけでもあるまい。


「お願いしたいことを紙に書いておいて、それを出会う探検者に配ってたの。全部配ってしまったからさっきは説明するのが大変だったの。」


そういうことか。明日も紙配るつもりなのかな。


「総合一位は譲れないの。明日も頑張るつもりなの。」


あー、そう言えば初日にプリメーラも言ってたな。総合三位までは豪華な褒美が貰えるとか。それって何か聞いてもいいかな。


「総合一位はカナタの一泊二日独占権なの。何をしても許されるの。夢は膨らむの。とっても楽しみなの。」


まじですか。何をしても許されるってどういうことだろう。ちょっと怖いんですけど。ちなみに二位と三位はどんな感じですか。


「二位は一日独占権、三位は半日独占権なの。最悪でも三位までには入らないとこれからの人生生きていけない気がするの。」


大袈裟な。大丈夫ですよ。一日一緒にいるぐらいこれからいくらでも機会がありますよ、きっと。そう、魔王を何とかしてのんびり出来る日がきっと長く続くはずですから。っていうか絶対そうしましょう。


「先のことは判らないけど、目の前の機会を逃すつもりはないの。何としても総合一位になって夜通しずっこんばっこん大騒ぎで愛してもらうつもりなの。」


可愛い声でそんなこと言うなんて別の意味で破壊力が半端ないです。絶命するかと思った。

とりあえず女性陣がやる気になっている理由だけははっきりした。

明日が第一回の最終日。果たしてどんな結果になることやら。

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