第49話 試練の魔物
次の日の午前中、僕はドライガンのために作った「質実剛健」を自分でも取得するためにダンジョンへと出かけた。「質実剛健」と同じものであれば十分MPは足りていたが、どうせならもう少し効率のいいものにしたいと思ったからだ。ただ、全ての「青」を避けながらというのは効率が悪いので、「青」がいないはずのミースのダンジョンへ遠出することにしようと思ったのだが、ふと気づいて思い直した。
三十分ぐらいで十匹目の魔物を倒したところだが、既にMPは二万近く稼いでいる。
さて、決定戦二日目に十英傑が八時間かけて二万前後のMPを溜めてきたのに、この短時間で僕が同じぐらい稼げたのはなぜでしょう。
答えは、「試練の魔物」だけを倒しているからです。
後出しみたいですいませんね。「試練の魔物」っていうのは前に倒したゴーレムみたいな番人をさらに強化した特殊な魔物のことだ。ダンジョンの特定の場所だけに出現し、ダンジョン内を徘徊することもない。クローズ型のダンジョンでは区切られた部屋の中にいることがよくある。「試練の魔物」っていうだけあって、かなり手強い魔物揃いで、ひとつのダンジョンに1匹以上の「試練の魔物」がいるのが普通だ。
手強いってことは魔物のレベルやランクが高いってことで、ってことはMPも豊富に持っているというわけです。実際に見てみると一匹で1500ぐらいなんてのは体操をしたくなるぐらい当り前で、多いものでは3000を超すものもいましたよ。ついでに番人と同じで倒した後にはご褒美が入手できるのでさらに美味しい思いをすることができます。
で、僕は全ダンジョンの
加えて、「試練の魔物」も番人と同様にいつでもいるわけではないので、折角そこまで行ったのにいないなんてこともあるようだが、僕には検索があるので空振りすることもない。控えめに言って…最高かな。
こんな調子で昼までに十五万ぐらいのMPを溜めることができた。今は、適当な場所で休憩しながらざっとお宝を確認して「質実剛健」の改造方法を検討中だ。
お宝の中には智恵の実や敏捷の種系統の他のステータスを上げるものもあった。そこでふと思いついた。「質実剛健」みたいにスキルで直接ステータスを上げるのと、智恵の実や敏捷の種を作り出すスキルを作るのではどちらがいいのだろうと。前にディスマルクに聞いてみたのだが、智恵の実や敏捷の種を調合するような処方は聞いたことがないという話だった。でも、活力や気力を回復させられる薬を調合する処方はあるわけだし、実際に智恵の実や敏捷の種は存在するのだからどうにかすれば調合できるんじゃないだろうか。
「質実剛健」方式にすればスキルを取得した本人しかステータスを上げることはできないが、智恵の実調合方式にすればスキル取得者以外のステータスを上げられるし便利そうに思える。心配なのは調合方式にした時に、必要な素材が希少品になりすぎて実際には調合できないなんてことになっては何の意味もない。だが、お手軽な素材で調合できるようにするためには恐らく膨大なMPが必要になるんじゃないだろうか。数百万MPぐらいなら頑張る気にもなるが、数千万となったら諦めるかな。それと使用可能間隔にも注意したい。一年に一回しか調合できないなんてことになってはほとんど役立たずだ。期間を短縮するためにもまたMPが必要になりそうだね。
さて、折り合いをどこでつけようか。
それともう一つ。調合方式のスキルを採用するなら僕よりディスマルクに取得させた方が有用もしくはMPの効率がいいんじゃないかという仮説。うーん、いろいろ悩ましいなあ。
仮に「質実剛健」方式でSTR、INT、AGI、VIT、DEX、LUCのそれぞれに作った場合、一人六万ぐらい貯めれば全部作ってあげられそうだ。一万ぐらいMPがあれば僕がステータスを操作してあげれば10近く上げてあげられるが、地力が強くなるだけでは心許ない気がする。一旦スキルとして取得させれば五ヶ月で全部10上げられるので、MPは他のことに使えるしその方が良い気がする。
この結果と見合うように調合方式を成立させるのはどんな感じだろうか。六十万MPで調合スキルを生成して五か月に10上昇×6種×10人で600回発動できればとんとんってことだね。一日四回か。そんなに無茶苦茶な数字ではないよね。そうだ、狙ったものでなくてもいいから一回に複数個作れないかなあ。一日一回でいいから六種類の内から無作為に6つ作るとかね。そうすれば五か月で900個分になる。素材は少しぐらい希少な物でもいいんじゃないかな。それこそ魔石とかね。魔石の大きさによって生成できる個数が増えるようにすればさらに個数稼げそうだね。さらにさらにスキル使用者の調合系の熟練度によっても効率が良くなるといいなあ。
んー、いいんじゃないかなあ。作っちゃおうかなー。んー、こんなん出ましたけど~。
出来たスキルは「
とりあえず試してみようか。
早速、ひとつ取り出して口に放り込む。氷砂糖みたいな見た目通りで舌に少し甘さが伝わる。結果は、AGIの値が1上がった。うん、特定のものだけを上げることはできないけどめっちゃ偏ることもないだろうからいいんじゃないかな。うーん、ちょっと邪なことを考えてしまった。もしかして僕ならどれが上がるか制御できないかな、ってね。
次の一個を摂取する時にSTR上がれ上がれと強く念じてみたところ…おおっ、STR上がったよ。
偶々かもしれないし、そうでないかもしれないので残りの一個でも試してみる。続けてSTR上がれしてみたが、INTが上がった。
うーん、二回の試行では確証が得られないな。まあ明日以降も試してみよう。
取り敢えず一番小さい魔石で僕の今の調合系熟練度で三個なら十分役に立ちそうだ。さっきまでの「試練の魔物」の討伐で結構な数と大きさの魔石を入手出来ているので素材には事欠かないし、熟練度を上げていけば更なる生成できる個数を増やすこともできそうだ。十個ぐらい生成できると十英傑に毎日ひとつずつ配れるんじゃないかな。
ついでにディスマルクにも「運否天賦」を取得させてもいいかもしれないね。MP三十万ぐらいならすぐに溜められるだろうしね。
ん?十英傑は三時間でMP8000程しか溜められていないのに三十万がすぐ溜められるのはおかしいって?ゆったり一日かけて溜めて倍の16000ぐらい溜められたとしても毎日続けられはしないし、仮に二日に一回で続けたとしても一ヶ月以上かかるのを「すぐ」とは言わないと。
何をおっしゃる、ウサギさん。昨日も言った通り、ディスマルクやヌフクールにとっては一万程度は朝飯前なのですよ。
戦闘職でもない二人には無理だって?
いやいや。だから、逆に戦闘職じゃない二人だからこそできるんでしょ。
ヌフクールとディスマルクは如何にしてMPを稼げるというのか。
次回、『MP稼ぎの果てに』
この次もサービス、サービスぅ!
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