第41話 観測
「正確無比」の解除はできなかった。そりゃそうだよね。一度発動したスキルは取り消すことなんてできないのが常識だ。だからこそ状況を見極めて発動するように指導されるんだしね。
次の日、午前中はもう一つぐらいスキルを作ってみようと検討を重ねたが実際に作るまでには至らなかった。候補としては鳥のように飛べることが出来ればとも考えたのだが、羽ばたく程度で人間って飛べたりしないよなとか、空中で姿勢を制御したり踏ん張ったりする方法が理解不能というか想い描けずに取り敢えず見送った。プリメーラに見せてもらった
昼食を摂って13時半ぐらいに集合場所に向かうと既に十英傑全員が待機していた。
昨日と同様に順番に僕の所に来るんだけど結構なMPを持っている。昨日もあれから魔物を狩っていたのだろうか。これも昨日同様に希望を聞いて貯まっているMPでスキルレベルが上げられるなら上げて残りは規定に従ってありがたく受け取った。
力を受け取った時にみんな一旦はMPが0になるが直ぐに1になるのも同じだ。これ本当になんでだなんでだろう。
14時になってそれぞれ目的のダンジョンを目指して出て行くところまでは昨日と同じ流れだが、今日はこの後十英傑の戦闘っぷりをこっそり見せてもらうつもりだ。
あ、しまった。皆ほぼほぼ探知系取って上げているんだった。転移で近づいたりすると驚かせるかもしれないことに思い至った。こっそりっていうのは無理かな。それならスキルで探知に引っかからないようにすることってできないかなぁ。そう言えば探知に引っかからない魔物っていたような…。そうだ、ツリービルっていう樹木そのものみたいな魔物がいたな。探索者が自分の射程に入るまでは身動ぎもしないから面倒臭い魔物として知られていたっけ。ただ、それほど素早く動けるわけでもないのでツリービルが出現する場所での対策を怠らなければ然程危険な魔物ではない。一旦動き出せば探知にも引っかかるようになるので出現地域では常時探知を使っているのが最も単純で安全な対策だ。確か耐火性に優れた木材になるので割と人気も高かったはずだ。
ツリービルには動物系の魔物ではまず見られない特性がある。容易に逃げられるのだ。以前はそれがどういうことか深く考えもしなかったが、今なら容易に想像がつく。僕の考えではこうだ。ツリービルは目を持たない。虚が目だと言う人もいるが多分違うだろう。目を持たないならばどうやって探索者を襲うのだろう。その答えは「探知」だ。恐らくツリービルは常時「探知」だけしていて他は何もしていないんだろう。探索者が探知の範囲に入ると他の魔物と同じように敵意を露わにして襲ってくるし、探知の範囲外に逃げられると探しようがないのでまた探知するだけの存在に戻るというわけだ。
以前に探知は敵意とか好意を感知してるんじゃないかと推測したっけ。それにも矛盾しないし完璧なんじゃない。それに今の僕なら魔物のスキルも見られるからツリービルが探知を持っていることが確認できれば証明できるだろう。ただ、知られているツリービルが動き出すのは10mぐらいに近づいた時なんだよね。探知は僕が最初にそうであったようにLV1で半径50mだからそこだけが合わないんだよね。探知そのものじゃなくてツリービル専用の探知みたいなスキルなのかも。
話が逸れてしまった。
こっそり見学させてもらう方法を考えていたんだよね。僕自身が転移すると探知持ちには確実にばれるから、逆に映像とか音声だけ送ってもらうようにはできないだろうか。それこそ
てってれー、「
MPを20万ぐらい消費したみたいだね。説明には「
いいんじゃない。早速試してみよう。検索で勇者を見つけてそこに
おおっ、脳裏にどこかの室内にいる勇者の姿が現れる。すごいすごい。意識を向けた所を拡大することもできるみたいだ。すごいすごいすごい。
『ん?なんかカナタに見られてる気がするわ。どこにいるの。出てきなさい。』
勇者が辺りを見回す様子がよく分かる。この勇者まじでやばくないか。一体何を感じ取ったんだろう。
『出てこないならこうよ。』
突然服を脱ぎ始める勇者。わああ、何考えてんだこいつ。慌ててスキルの使用を終了した。
勇者の奇行には驚かされてばかりだが
これで魔王の居場所が分かってもいきなり転移で会いに行かずに
あ、そうだ。何も勇者で試すことなかったじゃないか。もう一度、
おー、何とも言えない不思議感覚。見ているのはここだ。僕を見ている僕がいる。ゆーたいりだつーって感じかもしれない。鏡で見ている顔と違うので違和感ありまくりだ。これが皆から見えてる僕なんだね。ふーん、やっぱり出会った「捧げる者」達に比べると造作が悪いのは一目瞭然だ。「大いなる存在」は記憶の植え付けでなく、容姿にも手を抜いたに違いない。会うことがあったら絶対に嫌味の一つは言ってやる。
そんなことはどうでもよかったんだ。映像が送られているであろう辺りに目を凝らしてみる。しかしそこには勇者が気付けたであろうと思えるものは何も無かった。小さな虫一匹、埃一つですらない。とても不思議だ。こうなると逆に勇者の僕に対する感知能力に恐怖すら覚える。気を付けよう。
もう一つ確認してみたのは映像の中の僕のステータスを見ようとしたのだがそれはできなかった。あくまで映像としての情報であって人として認識できているわけではないのだろう。
それでは当初の目的を果たすとしようか。
さて、誰から拝見しようかな。キミにきめた!
『うりゃーなのー。』
「岩山落とし」をやっているディスマルクが映し出された。なにか勝算があってこんなことを言い出したのかと思ったがそうではなかったようだ。もしかして初日には試してみたが、うまくいかなくて切り替えたってこともあるのかな。
ただ、「岩山落とし」の先達としてはまだまだ甘いなと言わざるを得ない。
普通の人の
次いってみよう。
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