第38話 弓聖セットフィーネ

据え膳もご飯も美味しくいただいて食堂でフィオレンティーナさんと一服していると十英傑が徐々に集まってきた。

話題はもちろん今日から始まった決定戦だが、お互いに手の内を晒すようなことはせずに他の人を探るような感じなので不穏な空気が満ちている。フィオレンティーナさんが何事か分からず不思議そうな顔をしているので簡単に説明すると得心がいったようだ。


「なるほど。つまり8Pは成功裏に終わったということなのですね。」


飲んでいたお茶を吹き出しそうになり、堪えようとして咳き込んでしまう。

8Pのことなんてひと言も言ってませんよ。どういう解釈するとさっきの言葉が出てくるんですか。


「余程の夢見心地にして差し上げたのでしょう。もう一度を願うからこそ特に女性陣が張り切っているのは言わずもがなです。」


あれを夢心地と表現するのは不適切な気もするが、フィオレンティーナさんの言葉を聞いた十英傑女性陣は何やら思い返して赤面したり、うっとりしたり、にやにやしたりいろいろだ。


「ツヴァイクの要望を加味して少し規定を変えたのー。明日は9時開始で17時終了なのー。8時50分にここに集まるのー。開始前に余分なMPはカナタに渡すか使ってしまうのー。17時までにここに帰ってくるのー。もちろん一秒でも遅れたら失格なのー。」


僕は開始時と終了時にだけ付き合えばいいんだね。なら明日はスキルをじっくり調べていようかな。


「ダンジョンはどこに行ってもいいのー。だけどカナタに転移で送り迎えしてもらったら失格なのー。」


フォルティスには5つのダンジョンがあるので、どこに行くのかも作戦のうちということだろう。今日検証していた時に気づいたが、魔物を倒して得られるMPは魔物のレベルとランクが高いほど多くなるようだった。なので、MPを貯めるには高レベルで高ランクを狙うのがいいのだろうが、倒すのに時間がかかるようでは効率としては悪くなる。さらにスキルを使用するようではその成長にMPが回されてしまうこともあり余計に効率が悪くなる。自分が余裕の一撃で仕留められる魔物を次々と倒すのがいいのだと思う。僕のように「岩山落とし」で倒すのが最良なんだと思うが、果たして真似する人はいるんだろうか。後は、如何に素早く魔物を見つけられるかも鍵になるだろう。これは探知や探索、或いはそれに準ずるようなスキルを持っているかで大きく変わりそうだ。


「あと、しっぽり権は120分一本勝負なのー。延長したら次の日は無条件で失格なのー。」


なにそれ。試合か何かですか。


「ということじゃ。では、妾の部屋でしっぽりするのじゃ。」


連れて行かれた。

部屋に着くまでの間にどういうのがいいか聞かれたが、そんなのは特にないと答えると困った顔をされてしまった。

困った顔をされても僕も困るんですけどね。

セットフィーネの透き通るような白い肌はとても美しくシミ一つない。ちょっと見惚れるようにしていると何か思いついたのか浮かれた感じになっている。


部屋に入ると早速全てを脱ぎ去ってしまい、何やらいくつか取り出すけどよく分からない。


「これは苺の果実を煮詰めたものなのじゃ。こっちは檸檬。これは葡萄なのじゃ。」


苺は赤く、檸檬は黄色、葡萄は紫でとても綺麗だ。他には緑や橙、青に白もある。見せてもらった技も矢の軌跡が七色に輝くものだったし色に拘りがあるのだろう。

で、これをどうするんですか。


「妾がこれらを自分のカラダに塗るので、カナタはそれを綺麗に舐めとるのじゃ。昨日は一方的じゃったからな、今日は妾が望むところを心を込めて舐めてもらうのじゃ。妾の白い肌に色が映えてカナタも視覚的にも楽しめるじゃろう。味も楽しめるように甘いものだけでなく他にも用意してやるのじゃ。」


そう言ってさらに色とりどりのものを取り出す。

仕方ないですね。力をいただいたことは事実ですので賞品としての役目を果たすとしますか。どうせ口にするなら美味しいといいな。


「さあ、丁寧に舐めるのじゃ。」


セットフィーネがまず選んだのは赤だった。指で掬って自分の左胸に乗せるように塗る。

視線で早く早くと促すので、顔を近づけて舌で掬うように舐め上げる。

おおっ、さすが十英傑が選ぶものだけあって甘過ぎず、しつこ過ぎず、しっかりと果実味があってとても美味しい。

思わず、二度三度と拭き取るように舐めてしまった。僕の舌が触れるたびにセットフィーネのカラダが小さく跳ねる。


「そんなに妾のカラダは美味なのか。であれば妾も嬉しいのじゃ。」


普段から妖艶な雰囲気を滲ませているのが更に輪をかけて艶やかさを増していく。


「ほれ、時間はそれほどないのじゃ。次々に行くのじゃ。」


そう言うと口に黄色いものを入れて唇を重ねてくる。

砂糖の甘味と檸檬の酸味が口いっぱいに拡がる。しっとりとそれでいて爽やかな味わいだ。これも絶妙に美味い。露ほども残さぬ勢いで吸い上げるとカラダを震わせながら抱き着いてくる。

こうして彼女がしてほしいところにいろいろ塗りたくっては僕が舐めとることを繰り返すと彼女の白い肌は紅潮し、喘ぎ声も荒くなっていく。

ほぼ塗っていない所がなくなった頃には息も絶え絶えだ。


「はぁ…はぁ…さあ、ここにはたっぷり塗るのじゃ。一滴も残してはならぬのじゃ。」


そう言うと僕にも同じものを塗ると口に含んで大きくさせようとする。

お互いを舐め合うような形になって塗られたものが判った。極上の蜂蜜が彼女の蜜と混ざって煌めいている。僕が舌を動かすと彼女の舌も僕に絡みついてくる。むしゃぶりつくようにすると彼女の動きも激しくなる。すべて舐めとろうとするが後から後から蜜が溢れてきて滴り落ちるので、とても全てを舐めとるのは無理そうだ。


「…もう…我慢できないのじゃ。」


そう言って僕に跨ると彼女は長く波立つ金髪を振り乱した。


◇◆◇


しっぽり権を行使して満足したセットフィーネの部屋を後にしようとすると部屋の前で勇者機構の生真面目そうな女性職員が待ち構えていた。

どうやら二時間を超えないか監視するように言われていたらしい。なんて気の毒な。それなりに中からの音が洩れ聞こえていたようで彼女の顔は真っ赤だ。そして、誰の差し金かは想像ついているが職員は「青」だった。青い果実が真っ赤に熟してます。あんまりうまく言えてねえな。


「あ、あの…あの…私も…抱いてください。」


そう言うとしとどに濡れた内股を隠すように僕に抱き着いてくる。黒幕としても抱かれるように仕向けたんだろうから思惑に乗っかってあげるとしますか。

そう決めると彼女を優しく抱きしめて僕の部屋へ転移する。そう言えば僕が転移で部屋に戻っていたらどうするつもりだったんだろう。


「っ!?…?…失礼しますっ!」


転移の浮遊感に驚いていた彼女だったが、室内でベッドがあることを認識すると僕を押し倒しに来た。あらあら切り替えがとても早いのね。その判断力の速さに脱毛です。そうそう、最近ムダ毛の処理が大変なの。いや違う、脱帽です。

仕方ないので押し倒されてあげると歯がぶつかりそうな勢いで唇を重ねてくる。優しく受け止めると意図が伝わったのか一旦唇を離して僕の目を見つめるとそっと目を閉じてもういちどゆっくりと唇を重ねてくる。


「なんか…とても甘いです。」


ですよねー。交わってからも追加で蜂蜜塗りたくりながらの舐めまくり祭り状態だったので仕方ないです。体も十分に拭ききれてないので甘ったるいと思います。

それに気づいた彼女は僕の服を開けさせて晒されたところを舐め始める。


「…美味しい…」


舐める側から舐められる側に攻守交代です。僕を味わい尽くすかのように彼女の舌が全身を這い回る。

最後に残していただろう棒を思う存分舐めとると満足そうに一言。


「別の口も満足させてくださいね。」


別の口にも咥え込まれた。


◇◆◇


無事に「紫」になり落ち着いたナターシャから話を聞くと、思った通りに黒幕はフィオレンティーナさんだった。

セットフィーネが僕を連れ去ると、ディスマルクがセットフィーネさんに二時間以上かけてしているようなら踏み込んで邪魔するのーと言い渡したらしい。フィオレンティーナさんは諾々と従うと見せかけて、僕が渡した「青」の一覧から目聡く同期のフォルティス職員を見つけて良かれと思って仕事を押し付けたようだ。呼び出された彼女は訳も分からず十英傑の指示だからよろしくね、ミースから別件で来てるから忙しいのよ、絶対いいことあるから等と言い包められて僕たちの後を追い部屋の前で待っていると艶めかしい声が聞こえてきて今に至るという訳だ。

フィオレンティーナさんとしては浮いた話が聞こえてこない同期のナターシャの名前を「青」の一覧に見つけたので自分のことと照らし合わせて事情を悟り、このままだと地図マップ情報を渡すだけで終わってしまうかもしれないので余計なお世話をさせてもらったのだという。

ナターシャは最初こそ何の嫌がらせよと同僚にどんな仕返しをしようかと思っていたが、結果だけ見ればどんなお礼をしようかと考えている次第だ。


「もう一回、いいですか。」


再度、咥え込まれた。

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