第37話 収集計画
「自分たちが細かい規定を決めている時に勇者機構から
そういえば来てたね。僕としてはお任せしてるので細かい内容まで確認しなかったけど、順調に進んでいるようだったのでそれ以上は読み込んでいない。
「最低でも二週間はかかるという見込みだったので、今日から取り敢えず七日間を第一回期間にしたのだ。もちろん毎日の勝者には褒美が与えられるぞ。加えて総合での順位も決めて三位までには豪華な褒美が与えられることが決定しているのだ。自分が目指すのはもちろん総合での一位なのだ。くふふ。」
あのー、プリメーラさん。ちょっと目がいっちゃってるんですけど大丈夫ですか。
総合一位の豪華なご褒美ってなんだろう。気になるけど知るのが怖い。
それにしても第一回って言ってるのがディスマルクだけでなくなったってことは当然第二回もあるんだろうな。
「拙者たちも惰性になりつつあった毎日が明確な目的を持って取り組めるようになり、カナタにも力を渡せるし、いいことずくめでござる。これでやる気がでないはずがないのでござる。」
はぁ、やる気が出るというならしょうがないか。十英傑が総出でMPを集めてくれるなら何日かはゆっくりスキルを研究することもできるだろう。ちなみに僕はこの二時間で転移と検索の恩恵により一万近くのMPを貯めることができている。今日の最高はどれ位になることやら。
そうこうしている内にキャトレーブとディスマルク以外が戻ってきたのでMPを確認する。
戻ってきた順にセットフィーネ5699、ドライガン5447、ゼクスベルク5301、ツヴァイク4086、ヌフクール4855だった。
ツヴァイクが暫定の最下位であることを知ると苦悩していたのは言うまでもない。僕にはその理由も分かったので教えようとしたが、公平を期するために情報は個別に教えないようにと止められてしまった。
さて制限時間は残り一分だ。二人が走ってくるのが見えたがどうやらギリギリだな。と思ったら案の定ディスマルクがこけた。
「なんとか間に合ったにゃ。」
キャトレーブが走り込んで一息つく。MPは5587だった。
「散々なのー。」
立ち上がりながらディスマルクが喚いている。とぼとぼと歩いてくるので一応確認するとMPは4052だった。
今日の結果を見るとやはり戦闘職有利の傾向がはっきりと出ているようだ。中でも遠くからでも仕留められるし手数も多そうなセットフィーネとユイトセインは会敵効率が上がればさらに有利なのかもしれないが明日以降はそれぞれ作戦も考えてくるはずだ。ちなみにツヴァイクが最下位だったのは昼過ぎに見た時にはなかった新しいスキルが生えていたからだろう。
「やったのじゃ。本日の勝者は妾なのじゃ。しっぽり権を行使するのじゃ。カナタ、楽しみにしているのじゃ。」
「最下位には規定の変更権がひとつ与えられるのー。私は失格だから最下位はツヴァイクなのー。悔しいのー。」
ツヴァイクは時間の延長を申し出た。体力勝負に持ち込もうということだろうか。
この後セットフィーネ以外からは力を貰い受けて揃ってフォルティスに転移しようとしたが、全員が明日の準備があるからと言うので一人で転移した。お笑い劇団のくせにみんな真剣過ぎないか。
ひとりきりで夕食を摂る気にもなれず、しばらく部屋で考えていた。
何故一万人を超える「捧げる者」がいるのか、と。「始めの十人」には使命を与えて送り込んだのに他は特別何をさせるでもなくそれぞれやりたいようにやっているのはなぜだろう。だったら「始めの十人」だけで良かったんじゃないか、と思わなくもない。スキル収集に時間を要するのは明らかなので、それこそ頃合いを見計らって「統べる者」を送り込めば良かったんじゃないのか。そうしなかったとするなら「捧げる者」の数にも意味があるんだろうか。
十英傑は「大いなる存在」が「
そうすると一人一人に託せる力にも限界があって「始めの十人」だけでは世界を望む形にするには不足するとでも考えて毎日こつこつと「捧げる者」を送り込み続けたって考えるべきなのだろうか。ちなみに毎日送り込み続けてっていうのは十英傑の誕生日を確認したからだ。一番最初がプリメーラで次の日がツヴァイクとドライガン、さらに次の日がキャトレーブとサンクレイド、同様にゼクスベルクとセットフィーネ、ユイトセインとヌフクール、最後にディスマルクという具合になっていたからだ。
割とどうでもいい話だけどこの時ばかりは意味を持ってくる数字がある。この世界は1年が366日だ。ひと月が30日の「小の月」からはじまり、ひと月が31日の「大の月」と交互に訪れる。
なので一日に二人ずつ十五年間「捧げる者」が生まれると10980となって僕のステータスに表示されるあの数字とぴったり一致するのである。ということで僕とプリメーラは同じ誕生日である。
「大いなる存在」がこつこつと送り出し続けた10980人の「捧げる者」の数にも意味があるとするなら、やっぱり全員に「紫」になってもらう必要があるんだろうな。「270/10980」となった表示を眺めながらまだまだ先は長いなと思ってしまった。
その時、部屋の扉が小さく叩かれた。誰だろう。
「えへへ。来ちゃいました。」
扉を開けると照れ笑いするフィオレンティーナさんがいた。やだ、可愛い。無意識に一枚保存しちゃいました。
まだミースで別れてから丸一日ぐらいしか経ってないんだよね。そう考えると濃密な一日だったな。
「捧げる者」の「紫」化計画で名案を思い付いたので詳細を詰めに来たのだという。
「もちろん、カナタさんに会いたかったのが一番ですよ。」
相変わらずの大人の余裕というか色気を振り撒くのでドキがムネムネします。
◇◆◇
「こんな感じですがいかがでしょう。」
フィオレンティーナさんの計画とはこうだ。
全世界の人たちを総動員して
とてもいい考えだと思う。フィオレンティーナさんの当初の考えでは
後は確実に選抜した「青」に集まってもらうためにできることを考えたのだが、ミース中央広場の悪夢を思い出してぞっとした。結局、「青」のいない都市はないだろうということで、「青」だけに
手際よく準備していた各都市のダンジョンを含む全ての
後は各都市の勇者機構とギルドにお願いして、
取り敢えず計画は立案できたし、いい時間にもなったのでご飯食べに行きませんかとフィオレンティーナさんを誘う。
「それならご飯を食べる前に私を食べませんか。」
部屋を出ようとする僕の袖を引っ張って潤んだ瞳で僕を見つめるフィオレンティーナさん。
なにかしら、胸がどきどきする。
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