第24話 ぼっちの理由

エクセラの店を出て、次はどうしようかと検索してみると近くにニールがいた。昨日の勇者の一発の見舞いを兼ねて様子を見に行くことにした。


「よう、カナタ。ちょうどいいところで会った。昨日言った店にこれから行かないか。」


なんだ、全然元気じゃないか。ステキな兎のお姉さんが出てくるとか言ってたあれか。うーん、その店に行くくらいならいろいろ挨拶して回りたいんだけどなあ。


「ミースを離れるのか。なら余計にお祝いしとかなくちゃ悔いが残るってもんよ。」


「お祝いっすよ。いい乳がいっぱいっす。」


「だから俺は尻がいっぱいの方がいいな。」


相変わらずの煩悩三兄弟だな。しょうがない、ちょっとだけ付き合うか。

案内された店は話してた場所から5分もかからず着いた。


「この店はかわいい子がいっぱいいるらしいっす。楽しみっす。」


「いい尻の女がいるといいなあ。」


店内に入ると細かく区切られた部屋に分かれていて一人ずつ案内された。部屋でしばらく待っていると兎のような長い耳を付けた綺麗なお姉さんが入ってきた。他に身に着けているものは胸から股間だけを隠すような体にぴったりした布だけで、背中側は紐だけといったかなりの露出状況だ。


「やだ、最年少武豪のカナタ君じゃない。わたし、昨日キスしかできなくて欲求不満だったのよね。うふ、ついてるわ。」


なんと、お姉さんは昨日並んでいた「捧げる者」だった。もう検索を常時発動させて警戒することもなかったので油断しきっていた。


「本当はいけないんだけど、最後までしちゃいましょうね。」


そう言うと唇を重ね激しく舌を絡めてくる。両手は僕の手を彼女の胸へと誘い触らせようとする。服の横から手を入れて少し触れると物凄く柔らかい。且つ弾力があって弾ける。なんだこれは。この胸もまた、実に触りたくなる胸である。


「どうかしら。お客さんが私の胸の触り心地が良いって褒めてくれるんだけど気に入ってもらえたかしら。」


そんなに大きいわけではないけど僕の手にちょうど収まらないくらいの絶妙のこぼれ具合が実にいい。


「わたしも気持ちいいわ。ぎゅってして…ああん…さきっちょつまんでぇ…はあん…。」


彼女の要望に応えて手を動かす度に切なげな声が洩れる。


「だめ、もう我慢できないわ。びしょびしょなの。」


彼女の手が僕のものを取り出して口で大きくさせようとする。それなりに硬くなったところで待ちきれないのか僕に背中を向けて自分にそれをあてがう。


「わたしが動くからじっとしてていいよ…。でも我慢できなくなったら好きにしていいからね。」


そうして彼女の奥深くに吞み込まれた。


◇◆◇


「乳が小さかったっす。残念っす。」


「俺好みの尻じゃなかった。」


「カナタはどうだった。女の声が随分と大きかったみたいだが…。」


気のせいじゃないかなあ。そ知らぬふりをしてごまかそうとしたのを察してくれたのかそれ以上は追及してこなかった。


「俺たちでできることがあったらいつでも声をかけてくれ。俺たちもここで頑張るからさ。」


そう言って三兄弟は暗くなりかけた街に消えていった。兄弟の手前、ニールには詳しい話をすることができなかったので、通知メッセージでそのうち教えてやることにしよう。


さて、次はどうしようかと再び検索を発動して街中にいる「捧げる者」を探す。明日に予定しているライラを除けば特に会わなければならない人はいないんだけどね。イルミが近くの店に居るみたいだ。駄洒落が言いたかったわけじゃないぞ。昨日も会ったけどキスするだけして帰ったから特に話もしてないし、番人の宝物のこともちゃんとお礼してないからちょっとだけ会いに行こうかな。


店に入ると相変わらず四人でいるようだ。イルミは目聡く僕を見つけると手招きする。


「イルミに会いに来てくれたのかな。嬉しいなあ。」


「イルミじゃなくて私に会いに来てくれたんだよね。」


「いや、私に押し倒されに来たとみたね。」


「私の躰が目当てなのね。きゃっ。」


相変わらずちゃんと挨拶できない人たちだな。放っておくといつまでもしゃべり続けるから適当なところで話を切らないとね。番人の宝物の情報が役に立ったことに礼を言っておく。


「お礼はカナタのカラダで払ってくれてもいいんだよ。ボクがカナタの処女を奪ってあげようか。」


お願いだから後ろから抱きしめてお尻をつんつんしないでくれ。


「それいいかも。特等席で観覧希望する。」


「じゃあ私は突かれてるカナタ君に突かれるの希望~。」


「結局のところは仲良く朝まで5Pということで手を打ちましょう。」


君たちは自由だな。番人の宝物から希望のものを聞いて一品ずつ渡しておく。

数杯酌み交わして店を後にした。イルミにも詳しい話はできなかったから通知メッセージで教えることにするか。


森にいたマイがイルミたちと話してる間に戻ってきたようだ。マイからの探知をきっかけに僕の急成長が始まったようなもんだから会いに行っておこうか。彼女たちの舌は確かだし、一緒に晩飯にするのも悪くない。ということでマイのいる所へ向かうことにした。


「カナタ!肉体関係を深めに来たのか。」


相変わらずのマイの頭をエミが強めに叩いてつっこむ。


「声が大きいっての。でもするなら私も交ぜてね。」


ちょっとミースを離れることになりそうだと簡単に説明する。


「え~、それなら離れても寂しくないようにカナタとの思い出を体に刻み込んでよ。」


「マイったらカナタからもらった地図マップの情報眺めては何かを妄想して一人で励んでいるのよね。夜うるさくて困ることがあるのよね。」


「だってぇ。カナタと出会った場所で押し倒されたり、カナタの使ってる宿に夜這いかけたりとか考えるとカラダが疼くんだもん。しょうがないじゃない。」


地図マップの情報ってそんな風に使うんだ。へぇーへぇーへぇー。3へぇです。


「カナタが呆れてるわよ。とりあえず座って一緒に食べましょ。」


ありがたく同席させてもらい、いろいろと言葉を交わした。


「昨日は気が付いたらすっごい並んでるから諦めちゃった。全員最後まで相手にしたの?」


ええ、文字通り体を張って頑張りましたよ。大変でしたよ。


「ちょっと前まで普通の男の子だと思ってたのに、あっという間に勇者と並び立つんだもん。びっくりしちゃったよ。」


「そうね。勇者のお供としちゃったって言ったら箔が付きそうね。触れて回ろうかしら。」


お願いだからやめてくださいね。


「ぶっちゃけ、勇者とはしたの?」


してませんから。


「勇者結構可愛かったよねー。で、いつするの。」


しませんから。


「またまたー。カナタが押し倒すの、それともやっぱり勇者の方が強いのかなあ。」


そんな話しかしないなら帰りますよ。


「そんなこと言っていいのかなぁ。周りにいる皆さんに二人まとめて抱いたくせに一回きりで捨てようとしてるって叫んじゃおうかなあ。どうするぅ。」


ぐぬぬ。嘘がないだけに何も言い返せないです。わかりました。帰らないで付き合いますよ。


「やったぁ。エミ、うまいことベッドまで引き摺り込むわよ。」


「でかした、マイ。褒めて遣わす。」


「ありがたき幸せ。」


何事もなく帰れるといいな。


◇◆◇


結局、二人まとめて美味しくいただかれた。


「「戻ってきたらまた三人でしようねー。」」


二人と別れる頃には真夜中近くになっていた。一体今日は何回したことやら。意外とできるものなんだね。

マイにもエミの手前「捧げる者」に関する詳しい話をすることはできなかったので、後で通知メッセージするか。こうして改めて振り返ると結構固定の人と組んでいる人が多くて不思議な気分になってくる。僕の場合、同期の間では突出していたこともあって仲間に入れてもらえないというか気を使われていた節があって一人で行動するのが当たり前に感じていたんだよね。

言っていなかった気がするので説明しておくと、この世界では5歳になる年に学園に入学し、5年間進路を決めるために勉学や訓練などに励む。基本的には探索者として自分をどの方向にクラスアップさせるかを決める期間だと思えばいい。大体この期間で自分に必要な基本スキルを身に着けて、10歳でギルドに見習い探索者として所属するのが一般的な流れだ。見習い探索者の内は戦闘指導やダンジョンでの実地訓練なども行ってくれる。

そう言えば、昨日並んでいた「捧げる者」の中に見習い探索者を大勢引き連れていた指導員の女性がいたな。子供たちの前でご乱心されて僕に抱き着いて猛烈にキスして白い目で見られてたっけ。

見習い探索者は15歳で独り立ちして本格的に探索者として活動を始める。大体10歳から本格的に戦闘経験を積んで5~6年でクラスアップを果たすのが普通なのでちょうどいい時期なんだと思う。その時に仲間を集って共に行動するのが一般的な流れだ。で、僕はと言えば前にも言った通りで14歳になる前にクラスアップしちゃったので同期から浮いた存在になって、かと言って上の人たちにも馴染みにくくて早々に独り立ちを決めて武者修行中の今ってわけです。


ぼっちじゃないんだからねっ。寂しくなんかないんだからねっ。

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