第12話 隠しステータス
ライラに遅れること数秒、その光景に絶句した。
「ね、なんじゃあこりゃあって感じじゃない。」
確かにちょっと信じられないくらいのいろんなお宝が散らばっていた。ぱっと目につくだけでも二百はあるだろうか。鉱石系のインゴットや、何らかのポーション瓶、希少そうな魔石なんかもあるみたいだ。あ、秘伝書っぽいのもある。それにしてもイルミたちの話だとせいぜい十個ぐらいのお宝が手に入るってことだったはずだが、これはどう見ても桁が違い過ぎる。どうやら大当たりを引き当てたか。こういう番人の討伐によるご褒美は、まことしやかに今回のような桁外れの数が落ちていることがあると囁かれている。恐らく秘匿することの方が多く、自慢気に話す人は眉唾物として軽くあしらわれるからだろう。目の前の光景を見る限り、大当たりは確かに存在するようだ。
「おー、魔鉱石もあるじゃないか。預けてくれれば装飾品に加工してやるぞ。」
何言ってんだ。山分けするから欲しいの選べばいいじゃん。ちなみに魔鉱石はその性質によって、様々な能力向上の付与が行える。例えば、火の魔鉱石は攻撃力向上や火魔法の威力向上といった具合だ。
「だって、何もしてないし分け前なんて貰う理由がないぞ。」
だったら防具作製の依頼料とか報酬ってことでいいから。これを独り占めするほど僕は業突く張りじゃないぞ。
「それだったら、寧ろ欲しいもの貰う分をカラダで払うってことで宜しく。」
躰で払うってとこは無視して、とっとと欲しいものを選べと促す。
「おー、探知の秘伝書があるじゃないか。これがあればもしかしてカナタを…うぷぷっ。」
うーむ、既に僕は持ってるから無用の長物ではあるが、ライラに使わせるのはちょっと躊躇われるんだけど。
「じゃ、こんなもんでどうかな。」
当然のように探知の秘伝書入ってるし。他は加工系の素材で納得感はあるし、僕にとっては今は必要に迫られる物はないので快く譲る。
「よし、じゃあ早速。わたしは人間をやめるぞ!カナター!!」
なんのことだ?なにを言っているッ!それにスキルぐらいもう持ってるだろうが。
「おー、こんな風なのかー。この藍色がカナタか?」
早速、探知スキルを使ったらしい。そして、やっぱり僕は藍色に見えるらしい。他の人間は緑色に見えるはずだから知らない振りをしておこう。本人は本気でそうは思っていないだろうが、実質の僕探知機を手に入れてしまったライラ、やはりまずかっただろうか。
取り敢えず、残りを
智恵の実:摂取することでINTの値を1上げる。
敏捷の種:摂取することでAGIの値を1上げる。
運気の雫:摂取することでLUCの値を1上げる。
んー、INT、AGI、LUCって何だろう?ステータスで見える数字にそんなのないんだけど??
名前:カナタ
生年月日:AS968.9.3(16)
生地:アムラダ
レベル:27
ジョブ:戦士
活力:130/130
気力:112/118
攻撃力:68
防御力:99
魔効力:54
抵抗力:33
機動力:63
スキル:斬撃LV6、打撃LV5、刺突LV5、強撃LV4、連撃LV4、渾身LV3、遠当LV3、守護LV2、魔法LV2、火属性LV2、風属性LV2、探知LV7、真呼吸
ちなみに以前に見せたステータスより防御力と抵抗力が上がっているのは装備品による上昇分です。
よく判んないけどステータスとしては上がる分には不利になることはないし、試しに使ってみても問題ないだろう。ということで、まずは智恵の実を飲み込む。
活力:130/131
気力:112/119
攻撃力:68
防御力:99
魔効力:55
抵抗力:33
機動力:63
おおっ、活力と気力の最大値と魔効力が1ずつ上がった。いいねぇ。調子に乗って敏捷の種を飲み込む。
活力:130/131
気力:112/119
攻撃力:68
防御力:99
魔効力:55
抵抗力:34
機動力:64
今度は抵抗力と機動力が1ずつ上がった。一粒で二度三度おいしい優れものだな。すごいすごい。期待を込めて運気の雫を飲み込む。
活力:130/131
気力:112/119
攻撃力:68
防御力:99
魔効力:55
抵抗力:34
機動力:64
何度見直してもどこも上がっていない。不良品か?そんなことでは安心してポーションなんて購入できないぞーとか、いろいろ文句を心の中で並べる。そもそもLUCって何だよ、胡散臭いなと思った時にそれは起こった。
STR 53
INT 50
AGI 59
VIT 51
DEX 56
LUC 88
ステータスに上の項目が追加で表示されたのだ。
もしかして、もしかしなくても、またやらかしてしまったかなぁとちょっと憂鬱な気持ちになる。これも他人には言えない内容だよね。また一つ、秘密が増えてしまったよ。やらかしちゃった子はしまっちゃおうねぇ、されちゃうよぉ、こわいよぉ。
智恵の実のINT、敏捷の種のAGIも新しく表示されるようになった中にある。普通の人には見えない隠しステータスなのかなと推測する。そうすると普段見えてるステータスは隠しステータスに基づいて計算されているんだろうか。さっきの上がり方からはそう考えるのが妥当な気がする。とは言え、今はこれ以上考えるのはやめておこうと思う。万が一、これ以上見えてしまうようになったら本当に怖すぎる。見えすぎちゃって困るの~を地で行っては目も当てられないのである。
「どうした?考え込んで心配ごとでもあるのか?」
さすが、ベッドの上でも的確に攻めてくるライラは洞察力も鋭いようだ。適当に誤魔化して二層に行こうと促すと、何かを察したのかあっさりと引き下がって先導してくれた。
「二層は魔法を使ってくる魔物が増えてくるけど、一層と同じで行くのか?」
基本的には魔法を飛ばしてくる魔物しかいないので、普段の戦法からしても避けることは問題ないはずだ。なので、「岩山落とし」を続ける旨を伝える。
「それは良いけど、フローズンゴートだけは素材のことがあるから潰すなよー。」
潰しちゃうと使いづらい素材なのかな。承知したと伝えて二層へと共に降りる。一層もそうだったが、地下迷宮の浅い層はあまり人がいないようで、ライラの探知スキルのことからも好都合だ。さっきの門番的な魔物は必ず居るわけではないので、繰り返し狩ることはできないために人気の狩場にはなっていない。深層に向かう探索者がちょっと寄ってみて居ればラッキー程度の認識というイルミたちの話だった。僕の方が広い範囲を探知できているので、さりげなくたまにいる他の探索者を避けて、その先にいる魔物へと誘導する。何度か遭遇した魔物はお目当てのフローズンゴートではなかったので「岩山落とし」で瞬殺し、僕の探知はいよいよLV9に達した。
「なかなかフローズンゴートがいないな。」
僕の隠しステータスのLUCの数値は他に比べて高く88だよな。本当に運気にかかわる数値ならちゃんと仕事しろよ。若しくはフローズンゴートを探し当てられればいいのになんて思いながら魔物を倒したときにそれは起きた。またやらかしたようです。
何が起こったかというと、「真呼吸」と同じような表示で「検索」ってのが増えてました。つまり、また新しいスキルを作っちゃったみたいなんです。説明しよう!「検索」とは目的とする対象を所有する
「どうした?また何か考え込んでるのか?」
ほんとよく見てるな。適当に言い包めてフローズンゴートのいる方へと向かった。
「言いたいこともあっちも溜め過ぎないでちゃんとお姉さんに言うんだぞ。しっかり抜いてやるからな。だから興奮するからそんな目で見るな。」
ほんとライラだな。
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