第10話 ウ○娘出馬

軽快な音をさせて二輪車を走らせると風を切る感じが気持ちいい。自動二輪車が珍しいのか振り返る人もそれなりにいて優越感もある。あまり調子に乗ると操作を誤りそうなので要注意だ。操作にちょっと余裕が出てきたので「青」探知ウィンドウを作動させてみると驚愕の事実が発覚した。後方から近づいてくる「青」の反応があったのだ。後方を振り返ると長い黒髪を振り乱しながら物凄い勢いで迫ってくる全身黒い服の女の姿があった。なにこれ怖いんですけど。速度を上げて振り切ろうとする中、何故かポマードポマードポマードと連呼してしまったが一向に引き離せない。他の馬車とかいろんなものを避けながらなので最高速度を維持できないからだ。やばいよやばいよ。悪いことは重なるもので、今追い抜いた別の「青」と目が合いました。あはは、追跡者に栗毛ボブの長身細身お姉さんが増えました。ミリンダの店で想像して笑ったことが現実になるなんてあんまりだ。このまま増え続けたら怖すぎるので取り敢えずは街の外を目指して二輪車を走らせる。


そして気付くと追跡者は白銀髪に白い肌の小柄なお姉さんが増えて三人になっていた。別の意味で注目を集めてミリンダに対して申し訳なさを感じるがそこは勘弁してほしい。お願いだからこれ以上は増えないでと思った時、漸く街の外に出られそうで安堵する。しかし、郊外に出て都合がいいのは追跡者にとっても同じだったようだ。更なるスキルを繰り出したのか栗毛ボブのお姉さんが僕の後ろに跨ってしがみついてきた。


「きゃっ、捕まえた。」


こうなっては観念するしかない。二輪車を壊してはミリンダに申し訳なさすぎるので、大人しく減速して止まると他の二人も傍まで来て肩で息をする。

一応、しがみついている女性に何で捕まえられなければいけなかったのか抗議してみるが返ってきた答えは次の通りだった。


「そこに君がいたからだよ。」


はい、簡潔明瞭な回答ですね。何も言い返せないよ。


「先越された、次回してね。」


「右に同じ。」


しょうがないので順に相対することにする。先ずは二輪を降りてしがみついていた女性からだ。


「私、スカーレット。一位のご褒美は何?」


う、そう来ますか。返答に詰まるとすかさず横から声がかかる。


「三位の私としては最低限キスのご褒美が欲しいわ。シラユキよ。」


「デリングよ。じゃあ二位の私はそれ以上ね。それを踏まえて一位は何かしら。楽しみね。」


ぐう、追い詰められた。

ちなみに着順はスカーレット、十バ身でデリング、五バ身でシラユキとなっています。おい、ウ○娘かよ。

賞金を出しますとやんわり申し出るが、たちどころに却下された挙句に僕を除いた三人で相談が始まってしまった。三人寄れば文殊の知恵と言うが女三人寄れば姦しいとも言う。是非、穏便な決着を迎えてほしいものだ。


「決まったわよ。これから私の部屋で4Pよ。もちろん最初は私だからね。順番は守るんだぞ。」


清々しい笑顔でスカーレットが宣言する。


「たっぷりと可愛がってあげるわ。楽しみね。」


デリングが舌なめずりし妖しく微笑む。


「若いから三回ぐらい余裕だよね。頑張るんだぞ。」


シラユキがやる気満々で僕の背中を叩いてくる。

あぁ、僕の意向なんて入る余地はないんですね。完全に戦利品扱いだね。ここから一番近いらしいスカーレットの部屋までドナドナされる。道中、三人娘はどんな手法を取るか等を赤裸々に話していたが僕がそこに加わることはなかった。この人達って知らない同士だよねぇ。なんでこんなに早く打ち解けられるのか謎だわ。目的を同じにした一体感が既に醸成されているようだ。いっそのこと三身合体してくれたら一回で済むのにと不届きなことを考えたのは内緒だ。神獣とか誕生したらそれこそ笑い話じゃ済まなくなる。


「さあ、入って。私はさっと汗を流してしまうからデリングとシラユキも気になるなら順番に使うといいわ。」


結構、走ったもんね。スキルを使用していたとはいえ、相当体に負担はあっただろう。デリングなんて30分以上走ってたんじゃないのか。


「ありがとう。使わせてもらうわ。」


「私もー。二人より短いとは言えね、やっぱり気になるし。」


僕も変な汗かいたし使おうかなー、なんて言おうと思ったら途中で止められた。ニオイ消してどうすんのよって怒られた。汗を流す権利も与えられないなんて哀れ過ぎないか。なんて思ってるうちにスカーレットがタオル一枚巻いて現れる。


「さぁ、準備しましょうか。」


「しょうがないわねぇ。スカーレットはいいけど、シラユキはまだダメだからね。」


スカーレットに入れ替わり、デリングが浴室に消える。


「おあずけはつらいにゃ。」


スカーレットの顔が近づいてきて唇が重なると液体が流し込まれる。何かの果汁が入った炭酸水だろうか。その液体を飲み込む間もなく舌が絡みついてくるので口の端から少し溢れてしまう。


「溢しちゃダメじゃない。」


溢れた跡を舐めとられる。


「いいなぁ。早く私もナメナメしたいなぁ。」


独り占めできる優越感に浸り、スカーレットの舌が妖しく蠢く。服を脱がされ、僕の上半身が露わになると、さらにスカーレットの舌の活動範囲が拡がる。そこに、デリングの舌が後ろから加わる。


「速攻で行ってくるから私の舐めるところも残しておいてねっ。」


慌ただしく浴室に消えるシラユキを余所に、スカーレットに前面、デリングに背面を攻められる。スカーレットにゆっくりと座らされると再び濃厚なキスが始まり、巻いていたタオルを取り僕の手を自分の胸へと誘う。小振りな胸は程よく柔らかくて僕の手によって容易に形を変える。背中にはデリングの双丘が押し当てられているは、あちらこちらに柔らかい感触が次々と押し寄せてくる。


「シラユキ、参戦しまーす。」


シラユキも入ってくると、事前に話していた通りなのか僕の正面にスカーレット、右側にデリング、左側にシラユキが陣取りそれぞれが好きなようにしてくる。二人ですら柔らかい感触だらけだったのに三人になるとこれは最早ふわふわのパラダイスだね。僕の体で舐められていないところがなくなった頃にはスカーレットの中間色とデリングの褐色、シラユキの白い肌がくんずほぐれつ絡み合う体勢の中、僕はスカーレットの中に迎えられる。


「さあ、夜はこれからよ。長く楽しみましょ。」


三人の美女とのめくるめく夜がまだまだ続きそうだ。


◇◆◇


結局、二周して精魂尽き果てた僕はそのままスカーレットの部屋で朝を迎えることになった。

さすがに「色魔」とか「絶倫」みたいなスキルは生えなかった。いや、ほんとにそんな奇妙なスキルに力が使われなくてよかった。めでたく探知のレベルが二つも上げられて、これで自動二輪車で移動しても昨日のようなことにはならないで済むだろう。さすがに探知範囲が半径250mもあれば正面から出会い頭に相対する前に止まるなり方向を変えるなり対策が打てるはずだ。まあ、昨日は探知ウィンドウを起動した時にはすでに遅く、その後の対処法も誤ったということだ。次に活かせばいいさ。結果的には三人まとめて確保できて良かったとも言えるし、悪いことばかりでもないさ。自分に言い聞かせてるとスカーレットが目を覚ましたようだ。


「おはよー、珈琲淹れるけどカナタも飲む?」


僕も飲むと伝えるとスカーレットが気怠そうに作業を始める。朝がそんなに強くなさそうだ。昨日のこの部屋に来る道中で知ったが、スカーレットは鳶職、デリングはギルド職員、シラユキは雑貨店員らしい。自動二輪の速度に追いつけたのは、みんな「閃光」スキル持ちでスカーレットに至っては「空歩」スキル持ちだったからだ。「空歩」はレベルに応じて空中を何歩か足場に出来るスキルだ。閃光と組み合わせればそれこそ飛ぶように移動できるだろう。

珈琲茶碗を渡されて飲み始めると、香りに惹かれたのかデリングとシラユキももぞもぞと動き出した。揃って珈琲を飲んでそれぞれ仕事に出かけて行って流れ解散となった。

ああ、太陽が黄色く見える。

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