第39話 潜入作戦 三

 ―――かれこれ俺は城の地下に、


「ガハッ!」


 俺は、銀髪女に首を掴まれて連れてこられて地下牢に投げ込まれた。少しは抵抗しようとしたが、何故か力が出ず、ブラーんとした状態で地面を引きずられて、城の近くにある暗くて先の見えない階段を下り、牢屋が続く道を通り、その中のとある小さい牢屋にぶち込まれた。


「いってぇなぁ!」


「静かにしろ」


 しかもこの地下牢は俺以外にも多くの人や他種族がいるらしく、俺を見てニヤニヤしている。


「お前はもう人として扱われない。毎日奴隷として、労働にはげめ」


「は?!」


 彼女はそう俺に告げて、さっそうと立ち去った。


「おい! 待て!」


 俺はここにきてようやく抵抗した。しかし、こんなに抵抗してもどうしようもないことは分かっていたが、このまま大人しくするのは少しだけ癪なので、叫び声を上げてみた。

 そんな惨めな奴隷君に、とある男が声をかけてきた。


「ガタガタ喚いてんじゃねぇよ。とりあえず座れ」


「なんだよ。俺は……」


「まぁ、いいだろ。ここで何か言ってもどうしようもないぞ」


「……まぁ、そうか」


 俺は声をかけて来た髭だらけのおっさんの横に座る。


「お前、なにしてここにぶち込まれんたんだ? 普通の兄ちゃんって感じだけど」


「ただこの国に入っただけだ。お前こそなんでここに入れられたんだ?」


「俺はこの国で物を盗みまくってたからなぁ、だっはっはっはっ!!」


 なんでそんなに楽しそうなんだ? と思ったが、今はこいつに構ってなんていられない。

 少しでも早くここを出るんだ。エルグランドに俺の命を任せてもいいが、もしかしたら俺が処刑される方が早いかもしれないからな。


「……ここは、どういう場所なんだ?」


 でも、今の俺ができることなんて特にないので、俺は一旦自分が置かれている状況を確認することから始めた。


「見て分かんねぇのか? ここは囚人の墓場だ」


「墓場?」


「あぁ、ここは入ったら最後。もう二度と空を見ることはできねぇ。実質死刑みたいなもんだな」


 あー……。結構まずいな。

 俺は正直、この後何か尋問の時間があると思っていたので、そこで俺の巧みな会話術で切り抜けようとしたんだが、こいつの言うようには俺はもうこの牢屋からでられそうにないな。


「じゃあ、どうすればここから出られるんだ?」


「だから出られねぇって。もう一生をここで迎えるしかないんだ」


「……」


 そんなことは絶対いやだ。こんな屈強な男しかいないウホくるしいむさい場所で最後を迎えるなんて絶対に嫌だ。


「ま、楽しんでいこうぜ。俺はガルフィー。よろしくな! 兄ちゃん!」


 男はのんきに握手を求めて来た。

 髭ダルマは、見た目と違ってどうやらフレンドリーらしい。周りの牢屋には目が血に飢えている奴ばっかりなので、こいつと二人牢屋は不幸中の幸いだな。


「……あぁ、よろしく。俺はアランだ」


 俺は、差し出してきた手を握り、兄弟の誓いをした。


「でもまぁ、兄ちゃん。その目を見る限り、何か特殊な訳アリって感じだな」


「え?」


「お前さんは犯罪者って匂いがしねぇ。それに、何やら急ぎって感じだなぁ」


「……」

 

 こいつ、頭悪そうな見た目のくせして結構鋭いな。もしかしてそれなりの奴か?

 続けてガルフィーは、小声で俺にこう告げてきた。


「実は俺も脱出の計画を立てようとしてたんだ。だから、俺と手を組まねえか?」


 手を組むか……。


「……いいだろう」


「はっはっは! 何で上からなんだよ」


 正直こいつの事は信用できないが、今は何も縋る藁が無いのでこいつの脱出計画に頼るしかない。


「けどその話は明日からだ。もう俺は眠てぇから寝るよ」


「そうだな。今日はもう寝るか」

 

 俺とガルフィーは、互いに逆の方を向いて、この蛆虫が沸いている汚い床で寝ることにした。



 ■しばらく後■



 ―――そして目覚めた。最悪の床で。


「うわぁ~」


 起こした体を見ると、所々に蛆虫が引っ付いている。

 気持ちわりぃ……。


 俺はその虫を払う。しかし払っても払っても虫はひっついたままだ。それに俺の牢屋の前に置かれた食べ物は、あの悪魔界でも出されないようなグロイものだった。

 恐らく腐りかけの野菜を濁った水のようなものにとりあえず詰め込んだようなスープだった。




 ―――早くここから出よう……


 




 

 



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