第21.5話 魔王城の日常 一
―――時は同じくして魔王軍では、
「魔王様はどこに行ってしまわれたのだ! お前達! 一体どうなっている!」
「分かりません! 全軍総出で捜索していますが未だに見つけられておりません!」
「何か手がかりの一つでも見つかったのか?!」
「はい! どうやら魔王様は人間達の領域に足を踏み入れているようです! たまたま近くで散歩をしていた者が魔王様の魔力が残っている足跡を見つけたようです!」
「ならばすぐにその近くに全軍集めろ! なんとしても魔王様をここに連れてくるのだ!」
「「「「はい! かしこまりました!」」」」
色とりどりの姿をした悪魔達が一斉に叫び、がやがやと大急ぎで城から出ていく。
そして、悪魔達の大行進が始まり、先ほどまで大騒ぎだった城は一気にシーンとなっている。
そんな静寂に包まれた城の入り口の間に、大行進に付いていかなかったある一人の悪魔さんがいた。
「……まったく、魔王様は。いつまで子供のおつもりだろうか」
彼の名前はインパリス・ラージ。魔王の側近で、用心棒だ。
「……はぁ、魔王様は父上のあの姿を見ていたであろうに、なんでこうも自覚が足りないんだろうか」
どうやら彼は悩みがあるようだ。
「魔王様は、いつもいつも自由奔放でまったく仕事をしない。あれをしてくださいと言えば、『今からやろうと思ってたんだけど、そう言われるとやる気を無くすんだよ! だから僕に命令しないでよ!』と、駄々をこねている。あのままでは亡くなられた初代魔王様に顔向けができない」
なんとあの気高き魔王様は魔王様としてのやるべきことをしないらしい。その魔王に常に手を焼いているようだ。
「それに、この魔王城。このままではただの城になってしまう」
この魔王城は少し前に初代魔王がとある人間にやられて以降、活気を無くしている。そして二代目魔王は初代の息子であり、ポテンシャルは初代をも超えるとのことだが、肝心の本人が魔王の良い所だけを取り、嫌な仕事などは一切しないとのこと。
それゆえ、ボロボロの魔王城の復興命令もださず、悪魔達の訓練指示もせず、毎日毎日飯を食って、散歩して、寝る。これしかしていない。
「……どうすれば魔王様のやる気を引き出せるだろうか。……は?! そういえば……」
どうやら彼はいい案を思いついたようだ。
―――数分後。私は魔王城の地下にやってきた。
この地下には、初代魔王の隠しものが入っている。
昔、初代様は「なんかあったらここをのぞけばよいぞ」と残された私たちにあるものを残してくれた。なんでもそれは、二代目魔王様の原動力が入っているとのこと。きっと二代目様の隠されし魔力が封印されたものだったり、先代様の二代目様に向けた、激励のお手紙などが入っているだろう。
「いやー、魔王様もこれでしっかりとしてくれますね」
私は手の上に小さな火を宿し、明かりを灯しながら、暗い通りを歩く。
「それにしても、この不気味さ。先代様の魔力が感じられる。一体この奥には何が入っているのだろうか」
暗いながらもちょっと広めの道をゆっくりと歩き、遂に奥の部屋にたどり着く。そしてその扉を開けると、中には小さな禍々しい木箱があった。
「これが……、先代様が残してくれたもの。なんというオーラだ」
私はそのオーラに負けて、その部屋から押し出されるような圧力が感じられる。
だが、ここで怯む訳にはいかない。この木箱こそがこの魔王城の命運を握っている。何としてでもこれを持ち帰らねば。
私は押しつぶされるような魔力の残り香を潜り抜け、なんとかその木箱の元にたどりつく。そして、その木箱を取り、勢いよく部屋をでる。
「はぁ、はぁ。何とか持ち帰られた。しかしこれでこの魔王城もきっと安泰だな」
私は意を決して、その木箱をその場で開ける。すると中には―――、
―――魔王様の奥様のお写真。
……。まぁ、確かに奥様のお写真は感動的で原動力にはなるのだが、
「いや、お裸の写真は……」
なんと奥様のお裸のお写真だった。しかも前から撮っており、何一つ隠されていなかった。
私は込み上げるあっち系な気持ちと、もやもやした気持ちをぐっとこらえてそのお写真を木箱に戻し、元あった部屋に戻した。
「……もう、終わりです」
私はこの時、この魔王城の終了を覚悟した。というよりも魔王の血は強すぎて抗えないものだと思った。
その後、残念を超えた思いで、地下から地上に出た。そして魔王城の入り口から外に出て、
「なめんなぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
不満が爆発しましたとさ。
ちなみにその後魔王様は無事に見つかり、私は怒りに任せて魔王様を指示して、魔王城を再建させましたとさ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます