第14話 亜人とは?
―――亜人。
これについて、この本ではこのように書いてあった。
「亜人は、人とは似て非なる生物であるが、ある一点を除けば完全な上位互換である。亜人は人よりも知能も身体能力も魔法適性も高く、神や悪魔とも対等に戦える」
―――と、最初の方に書いてあり、読み勧めていくと中盤頃には次の事が書いてあった。
「しかしそんな亜人にも弱点がある。それは、回復魔法。回復魔法は傷を癒やすことができるが、亜人には逆効果である。もし回復魔法を使おうものなら、体は綻びやがて死に至る可能性が出てくる。だがそもそも亜人に回復魔法は必要ない。なぜなら彼らは元々の自然治癒の力で傷や疲労感を癒す。それに癒やすだけでは無く、回復した傷の分だけ力は増大し、スタミナも上昇する。
だが、亜人は魔力に関しては人間と同じだ。確かに亜人は魔法の適性が広く、人間よりも多くの魔法が使えるが、魔力に関しては人間と同じであるし、魔法を使えるようになるには人間と同じ努力をしなければならない。そこで、亜人が覚えるとしたらオススメの魔法をここに記す。是非読んで、強くなりたまへ」
その後には、いくつかの魔法が書いてあった。中には炎系や水系等の基本的な魔法もあったが、中でも俺の目を引いたのは「時間系の魔法」だった。この魔法は未来が見えたり、高度なものでは過去に行けたりするらしい。これは是非覚えておきたい。
だが、ここで一つの疑問が生まれた。それはなぜあの時俺は自身に回復系の魔法を使ったのに、死んでいないんだろうということと、その後俺が亜人になったということだ。
俺の父は亜人だったが、今更になってその影響が体に出てくるなんておかしい。
「う〜ん。………まぁいっか。とりあえず生きてるし」
俺は考えても仕方ないと思ったので、考えるのを止めた。
―――――だが、この時の俺は事の重大さに気づいていなかった。この出来事が後に自ら身を滅ぼし、そして関わる全ての人を絶望に叩きのめすなんてことはまだ知りもしなかった。
―――――翌朝。俺は何とか眠り、回復しすぎた体で目が覚める。
「あぁ…、眠り過ぎて頭が痛い」
過度に休み過ぎたため、体と頭が凝ってしまったようだ。亜人も結構不便なんだな。
「いくら体が亜人になっても、染み付いた人間の習慣は離れないもんだな」
俺は鉛のように固くなった体を起こし、サビを取るように軽く体を動かした。勿論力を制御しないと、何かにぶつかった拍子に壊れてしまうので本当に軽めに力を抜いたわ
そして身支度をして、いつもの訓練場に向かう。そこにはいつもの教官が居た。
「……きたか」
「そりゃあ、来ますよ。だって弟子ですもの」
「昨日は遅刻したくせにか?」
「………」
どうやら、スッキリしていたと思えば意外と根に持つタイプらしい。
俺は少し気まずい空気を和ませるために、教官に前向きな提案をする。
「そういえば、ここに来てしばらく経つんでそろそろ教官と戦わせてくれないですか?」
「………ほう。私も随分と舐められたようだな」
逆効果でした。教官の温度感は更に上がり、目から明るさが無くなっていた。
そんな教官に対し、俺はひるまず続ける。
「まぁ、勝っても負けてもいいからここいらで自分の力を見ておきたいっていうかさ」
俺は自分の力を試したくなった。
昨日までの俺では恐らく教官に手も足も出ないだろう。だが、亜人になった今の俺なら少しはやれるんじゃないだろうか? この前少しだけパイパイに魔法を教えてもらったし。
「いいだろう。その面をグチャグチャにして、今日の昼飯にしてやろう」
どこの悪魔だよ。とても正義を語るサーベラスの人間とは思うねぇな。
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