第13話 亜人

 ―――――人間を辞めた。


 俺は黒い光に包まれてうなされているて、しばらくすると黒い粒のの集合体は俺から離れていき、宙に消え去ってしまった。

 そして俺は目を覚ますと―――、


 俺の体は亜人になっていた。


 なぜ亜人か分かったというと、急に体が軽くなり、頭がいつもより早く回転していることが分かった。そしてなにより―――、


 心臓が三つある。


 俺の胸元から三つの鼓動を感じる。一つは元々あった場所。二つ目は右胸。三つめは腹部より少し上の所。この三つから不規則に体に鼓動が伝わる。


 昔。俺は母から亜人について聞いていた。なぜなら俺の父はだったからだ。

 亜人は人間と同じ見た目をしているが、心臓が三つあり、身体能力と知能が普通の人間より圧倒的に高い。そして何よりもすごいことは自然治癒の力が高いことだ。亜人は例え腕や足などが欠損しても再生する。それに心臓が一つか二つ消されても一つでも心臓が残っている限り、またすぐ心臓でさえ再生する。


「……亜人。なんて力なんだ」


 俺は体からあふれる力が抑えられない。もし、今この場で腕を全力で振ろうものならこの部屋ごと風で吹き飛んでしまうだろう。俺はこの力を試したくなった。

 ―――――が、


「……ま、体も治ったしとりあえず寝るか」





 ――――その後。俺は亜人の力をなんとか制御しながら睡眠に入り、突如として目覚める。


「ふわぁ~」


 人間らしいあくび声で目覚める。亜人になろうと人間としての本能は変わらないそうだ。なので睡眠欲もあるし、食欲も、性欲も満載だ。

 だが不思議と俺の体は回復しすぎてむしろだるい。


「……寝すぎたかもしれない」


 俺はベッドから足を出し、床に足を着ける。そして静かな足音を立てながら、カーテンを開ける。すると――――、


「………夜だ」


 そう。夜だった。

 俺は何度見ても星空があり、外は暗い。それに静かだ。


「もしかして、俺全然寝てないのか?」


 俺は疑問に思い、部屋を出て例の部屋の扉を壊す勢いで開ける。するとそこには薄い服を着て、もう寝る直前という状態の団長がいた。


「え? なに?」


 彼女の目はオロオロしていて、何が起こったか分からないという顔だった。だがその姿も大変綺麗で平常時の俺なら襲い掛かりそうだった。

 しかし、今の俺はそんなことはどうでもいい。俺は彼女に質問をする。


「なぁ!団長!今ってまだ夜のどのくらいだ?!」


「え? それはまだ夜が更けたばかりでいつもの寝る時間だけど……」


 彼女は何をしにきたかと思えば当然のことを聞かれたような顔をしていた。


「ほんとか? じゃあ、今はまだ十時か。……俺が団長の虐待を終えたのは八時、そこから一時間程かけて部屋に戻ったので俺の睡眠時間は大体一時間ってとこか」


「……? 何を言っているの?」


「いや、なんでもない。遅くにすまないな!また明日!おやすみ!」


 俺は呆然とする団長を置いて、走って図書館に行った。


「え……? 本当に何だったの?」




 ―――――俺は図書館である本を手に取る。その本は―――、


「亜人が作った禁忌魔法」


 いかにもやばそうな本だ。

 この本は以前、亜人がこの地に降り立った時に使っていた魔法が載ってある。

 俺はこの本をペラペラとめくり、目を光らせながら見たいものを探す。


「ていうか、亜人ってすげえな。本だって一瞬で読めちゃうぜ」


 本に載ってある膨大な文字数を亜人の俺は一瞬で読めてしまう。

 そして本の終盤あたりにお目当ての知識があった。


「あった、あった」


 俺が探していた魔法は「ナチュナリィ系魔法について」

 このテーマは、昼に俺が見ていた魔法の本の端っこのほうで書かれていて、詳しくは「亜人が作った禁忌魔法へと続く」と書いてあった。その時はあまり興味が無かったので飛ばしていたが、今は飛ばす理由は無い。

 俺はその本を部屋にこっそりと持ち帰り、部屋でゆっくりと読むこととした。




 ――――数時間後。

 俺はこの本をゆっくりと読んでしっかりと頭に知識を叩きこんだ。そして―――、


「これは……凄いことになったぞ…………」


 

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