第12話 人間終了

 ――――翌日。訓練の休憩中に俺はある本をもとめて、本拠地内の図書館に立ち寄った。


「ふむふむ。体内には魔力というのものがあるのか」


 どうやらどんな生物の体内には、魔力があるらしい。そして、その魔力を大きくしたり、操作とやらをして魔法として射出するとのこと。そして、体内の魔力が尽きると、急激に強い疲労感に襲われて倒れてしまうらしい。


「だから俺は昨日倒れてしまったのか」


 俺は昨日、部屋で魔法を試しに使ってみると、成功はしたがそもそもの自身の魔力が少すぎて一瞬で枯渇してしまったらしい。今の俺ではどうやら一日に二回しか魔法を使えないのか。


 さらに興味深い事があった。

 なんと昔の魔法は足元に魔法陣を展開させていたらしい。だが、年が経つにつれその方式は撤廃され、今では唱えるだけの魔法や無詠唱の魔法もあるらしい。


「はえぇ〜」


 まじでびっくりだった。魔法という概念自体は知っていたが、見てみると結構奥深いものなんだな。


 俺は立ったまま休憩中まるまるその本に釘付けになり、気づけばもう訓練の時間を少し過ぎていた。


「うわやっば」


 俺は本を元にあった場所に戻し、遅れて教官の所に走った。


 だが、もう既に遅かった。

 教官は鬼の形相でガチモンの剣を地面に刺し、俺を待っていた。


「………今何時だ?」


「…………すいませんでした」


 その日は後にも先にも人生で一番辛い一日だった。



 

 ――――時は進み、夜になる。

 

「………」


 俺は体がキツすぎて、口を動かす体力すら残っていなかった。

 教官は鬼のしごきがすんで、満足そうな顔で、倒れ込む俺を置いていった。 


 体が動かない。


 だが何とか休憩を挟みながら自分の部屋に戻り、床を這いつくばってベッドに向かうが、途中で俺は絶えてしまった。

 しかし!いつもならここで途絶えてしまうが今日の俺は違う。

 俺は夜にぼろぼろになる事を想定して、あの図書館で回復魔法の知識を得ていたのだ。知識だけでぶっつけ本番だが、たぶんいけると思う。なんせ俺はあの団長に「才能あるね」的なことを言われたのだ。


 俺は手を自分の心臓に当てて、あの本に書いてあった通りに唱える。



「――――ナチュラリィ・ヒーリング」



 ――――あれ? 何も起きないぞ?


 唱えた言葉は何にも反応しない。ただ男がひとりごとを言っただけだった。


 俺は魔法が思い通りにいかなかったことに驚きを感じていた。本に書いてあった通りなら今頃体が温かい光に包まれて、傷と疲労が一気に回復するはずだ。


「あれ? なんでなにも起きないんだ?」


 どれだけ戸惑えど現実は変わらない。

 それは分かっていたが、思い通りにいかないことを焦る、――――というよりも、 

 何でだ? という疑問が頭の中でいっぱいだった。


 しかし、俺の頭が疑問を抱えていると、突如として俺の体から冷たい淡い黒色のポワポワが出てきた。


「は? なんだこれは?」


 その光は俺の体中に纏ってきて、俺が見えなくなるくらい全身が黒いポワポワに包まれた。


「やばい。何かやばい。何かは分からないがとりあえずやばそうだ」


 しばらくすると、焦った俺の体内から血が込み上げてきた。

 口や耳、けつの穴などのあらゆる穴から血が噴き出て止まらなくなった。

 そのせいで俺はただ吐き気を催して、何もしゃべることができず、助けも呼べなくなった。そしてそのまま俺は―――――、




―――――人を超えてしまった。


 

 

 

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