第2話 奉納の義務

 翌朝。


 ――――寝てしまった。俺はあんなにもガキみたいな態度を取って、何も取り返すようなアクションもせず寝てしまった。


「はぁ〜。どうしよう。昨日はさすがに大人気なかった。………というより情けなかったな」


 そう。俺は年下の幼い女の子にガチギレをかましてしまった。しかも理由が――――。


 図星をつかれたから。


 なんと情けない。もう死んでしまおうかな?

 ――と、言いつつも俺は結局いつも通り身支度を済ませて、畑に向かった。


「はぁ〜、今日も農業。昨日も農業。明日も農業。死ぬまで農業」


 俺は韻を踏んで悲しい歌を歌いながら、歩いていた。それを見たすれ違いの子供達はみな俺を馬鹿にするというよりもヤバイ奴認定してきた。


「でもさぁ、同情してくれよ。戦士になりたくてもなれない人間だっているんだよ。しかもなれなかったら多くの友人から馬鹿にされる。まぁ俺友人なんていないんだけどさ」


 俺は寂しいので透明人間に話しかける。だが当然答えは帰ってこないので、自分で答えを用意するしか無かった。


「なるほどなぁ。それはつらいもんだねぇ〜。でも君はよく頑張っているよ。うんうん。凄い凄い」



 ――――あぁ。虚しい。



 

 そんなこんなで畑に着いた俺はいつもと同じ手順で、畑に水をやり、虫に喰われていないか点検をして、新しい畑を開拓する。

 この行動はもうかれこれ一年以上経つもんだから、さすがに慣れてきて、最初よりも数倍速くなった。どうやら農業の才能だけはあったらしい。


 しばらくして、俺はとある用事を済ませるために今日は早めに切り上げた。

 一度家に帰り、昨日取った野菜達を持ってある施設に行った。その施設は――。


 サーベラス連合軍。


 ――――の受付門だ。流石に俺みたいな下っ端の下っ端を入れてはくれない。

 ではなぜ俺がここに来たのか? それは、昨日取った野菜を奉納するためだ。

 この村では全ての村民に三日に一回の奉納の義務がある。その奉納とはさまざまで、雑用の俺の場合は野菜や肉等の食料品の他に衣服や、雑用のプロまで行くと、銅や鉄等を納めることになっている。

 俺は雑用の中でも更に下で、ろくに採掘も家畜を育てる能力も無いため、おばあちゃん達直伝の昔ながら農業をするしか無かった。


「それにしても何度見ても凄いなぁ〜」


 俺は門を見上げる。この門は鉄でできており、ちょっとやそっとの圧力じゃ凹みもしない。


「でもまぁ、このくらい頑丈じゃないと村は守れないもんなぁ~」


 そう。この門は村唯一の入り口だ。

 この村に入るには二つの門を潜る必要がある。まず最初にこの門よりも更にごつい門を通り、すると中にはサーベラスの本拠地が存在している。そして、その本拠地を横断し、今俺の目の前にある門を通る。これでやっと入村だ。手間がかかるなぁ。

 とはいえ俺はこの村を出入りすることなんて今後一切無いから関係ないか。

 さらに、村の周りには高い高い壁が立っており、とても人がよじ登れるような高さでもないし、恐竜共の進軍でもビクともしない。


「ここの村は安心安全だなぁ」


 俺は皮肉を込めて、受付門の柱の側で呟く。すると、後ろから声が聞こえてきた。


「……本当にそう思うのか?」


 振り返るとそこには昔は見慣れていた顔があった。




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