第一話 迷子を見つける薬 part2
そこから魔法草や既存の魔法薬を掛け合わせたり一般の化学品を使ったりで三十分ぐらい調合室に立て篭もり、ようやく完成した物をお客様の元に持っていく。そうすると母が占い師が使うような水晶を浮かせながら雑談をしていた。
「うちの子もよくどっかに消えて心配しました~」
「は、はぁ」
自分の子が今も行方不明なのだ母の会話なんて耳に入らないだろう。
「お待たせ致しました、こちら探し物を見つける薬になっております」
「こ、これを使えばうちの子は見つかるんですね?」
「いえ、これだけでは完全とは言えないんです、母さん大まかな場所わかった?」
「もちろん、私を誰だと思ってんのよ」
僕は魔法薬といっしょに持ってきた白紙の紙をテーブルに広げ「お願い」と、母に場所を譲る。母が浮かせているであろう水晶玉が紙の真ん中部分まで移動してきて静止する。そして腰に掛けているポーチから真っ黒なインク瓶を取り出し、数滴をひろげた白紙の真ん中に垂らした。普通なら滲んで終わりのはずのインクがひとりでに広がっていき見る間にここ一帯の地図を完成させた。
「すごい、、、」
「ここからですよ本番は」
母さんは、地図ができたことを確認すると今度は赤いインクを取り出し、これまた数滴たらした。しかし、たらされた赤いインクは、広がっていく訳ではなく垂らした雫が形を崩さず描かれた道を進んでいく。そして止まる。
「母さん、、、ここどこ」
止まった場所を見る限り、何かの建物っぽいけど
「さぁ、、、ていうかここからはあんたの仕事でしょ」
母さんはテーブルの上を片付け、そそくさとレジ奥に戻って行ってしまった。
「あ、あの~」
「あっすいません、うちの母気分屋なもので、でも任せてくださいここまで絞れれば僕の作った薬で見つけられるはずですから」
僕は手に持った瓶をお客様に渡して、
「これをお子様の持ち物などに数滴垂らしますとモヤみたいなものが出てきますのでそれがその子のところまで導いてくれます、しかし適応範囲が1キロほどなので母が導き出してくれた場所付近まで行ってから使われるのを推奨致します」
「あ、ありがとうございますあのお代とかは」
「まずお子さんを見つけてあげてくださいそれからでいいですから」
お客様は深くお辞儀をされ、我が子の元に向かった。
後日談となるのだが、結局あのお客様は店を出た後しばらくしたらすぐ子供を見つけたらしい。なので結局魔法瓶も使っていないようだ。
「見つかったなら、、、まぁいっか」
「魔法なんて使わなくていいなら使わない方がいいのさ」
「そのお子さんいわく、なんか浮いてる水晶玉についていったらお母さんがいたらしいんだよね」
「ふ、ふーんそうなんだ」
「よかったね、見つかって」
「...」
母の心を表すようにグルグル母の腹回りを回っている水晶を見ながら僕は笑みを浮かべ、今日もいつも通り店番をする。
魔法がすこしある世界 りゅうのしっぽ @4268
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