第119話


「……アーちゃん。凄いね」


「……うん、凄いな。ルナ」


 それ以上の言葉が出なかった。

 

 目の前に広がる平原。


 今まで見た事の無い世界が、確かにそこにはあった。


 新しい世界を目の前にして、俺とルナは手を繋いだままかたまっている。


 でもそこには怖いとか不安とか、そんな感情は全く無かった。


 二人ならこの先どんな事があっても大丈夫。


 そんな確信が俺たち二人の間にはある。


 ただ、ただほんの少しだけ一歩踏み出す勇気が必要だった。


 ……


 ……どのくらいそうしていたのだろうか。


 一瞬だった様な気がするし、長い時間だった様な気もする。


 そんな時、森の方から急に強い風が吹いた。


 まるで「さあ、行きなさい」と森が言ってくれているみたいだ。


 ルナを見ると、同じ想いなのか小さく頷いた。


 最後にもう一度だけ、二人で森を見る。


 生まれてから今まで、ほんのちょっと前まで森の中にいた。


 森の恵みを受けて、森に住む動物たちを食べて、森でたくさん遊んだ。


 森がここまで育ててくれた様なもんだ。


 そんな森から俺たちは巣立っていこうとしている。

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