第118話

「「……」」


 私とアーちゃんは言葉を失っていた。


 言葉が出ない。


 薄暗い森を抜けたら、急に明るくなった。


 空がいっぱいで、太陽がいっぱいで、風がとっても暖かい。


 花が咲いているのかな? なんだかいい匂いがする。


 これが「平原」。


 とっても綺麗な景色だ。


 目が奪われる。とは、きっとこう言う事なんだね。


 ずっと見ていたい。


 ……でも。


 でもなんだろう、少し怖い気がする。


 この綺麗な景色がどこまでも広がっている。終わりなんてない。そんな風に考えたら少し怖い気がした。


 自分がどこにいるかわからなくなる。


 自分の立っている場所が曖昧になる。


 ……怖い。


 そんな考えが頭をよぎろうとした時、不意に手に温もりが伝わってきた。


 アーちゃんが手を握ってくれた。


 そうだよね、私の隣にはアーちゃんがいるんだよね。


 私と一緒にいてくれる。



「ルナはここにいる、大丈夫」そんな風に言ってくれた気がした。


 私はアーちゃんの手をそっと握り返した。

 

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