第117話

「「……」」


 俺とルナは言葉を失っていた。 


 きっとこれが「感動」と言う感情なんだろう。


 瞬きをする事を忘れ、息をする事を忘れ、口を開けたまま、ただ目の前の景色に圧倒される。


 一面が緑で、花が咲いてて、少し凸凹してて、遠くに山が見えて、川に光が反射していて眩しくて、空には鳥が群れを成して飛んでる。


 これが「平原」。


 先生たちから聞いた話しよりも、父ちゃんや母ちゃん、おばさんたちから聞いてた話しよりも、ずっとずっと凄い。


 どこまでも続く緑。


 さえぎる物が何も無い青空。


 森と違って距離感がわからない。目印が無いせいだろうか?


 綺麗だ。でも……


 ……なんだか吸い込まれそうな気がする。


 なんだか足が引っ張られてる感じがする。


 一度そう思ってしまうと、なんだか怖い気がした。


 …… 


 気が付くとルナの手をそっと握っていた。


 そうだよな。俺の隣にはルナがいる。ルナがいてくれる。



「アーちゃんはここにいるんだよ、大丈夫」そんな風に言ってくれた気がした。


 ルナはそのまま手を優しく握っていてくれた。

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