第116話

「なぁ、ルナ」


「ん? どうしたの? 」


「お昼ご飯なんだけどさ、せっかくだから森を抜けてから食べないか? 」


「んー、そうだね、私はそれでいいよ。楽しみだね、おばさまのサンドイッチ」


「そうだな、きっと凄く美味しいぞ。……でもさ、実際どんな感じなんだろうな、平原ってさ」


「一面原っぱ、って言うけど、私たち原っぱ自体よくわかんないよね」


 エミールおじさんが言うには、走っても走っても大丈夫……らしい。


 子供の頃、走り回るのはいつも村の中だった。


 森の中で冒険はしたが、流石に走り回る事は難しかった。


 今なら変換器も付けてるし、思いっきり走ったら気持ちいいだろうな。 


 平原に心を踊らさながら歩いて行く。


 日が高くなる頃には森に変化が出てきた。

  

 少しずつ木が少なくなってきた。


 森が薄くなってきたからなのか、周りが徐々に明るくなってきた。


 どうやら出口に近づいてきたみたいだ。



「なんだか木が少なくなってきたみたいだね。周りも明るくなってきたし」


「そうだな。もうすぐ出口なのかもな。……しかし明るいんだな、木が少なくなるだけで」


 周りを木に囲まれた森は薄暗い。

 

 日の光が指すのは、枝や葉っぱが無い、空が開けている場所に限られていた。


 開拓された村の空は開けていたが、木に囲まれていたのは同じだ。


 だから、日中もうっそうとして少し暗かった。



「アーちゃん! あれ! 」


 ルナが声を上げ、指を差す。


 道の先からひときわ明るい光が見える。


 木が無くなり森が開けてる様に見える。


 きっとあれが、この森の出口なんだろう。



「行こう! ルナ! 」


「うん! 」


 自然と歩く速度が早くなる。


 胸がドキドキする。


 俺とルナは光に向かって歩く。

 

 そして、ついに……。


 俺たちは森を抜けた。

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